187: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 20:59:37.10 ID:xkf9nyGQ0
える「折木さんが!?」
今考えると、朝からどこか……具合の悪そうな顔をしていました。
思い出されるのは、今日の屋上で聞いた話。
える(……私のせいです)
私がもっとしっかりしていれば、折木さんに頼らずに済んでいたのに。
なのに折木さんに無理をしてもらって……
える(考えていても、仕方ありません)
える「折木さんはどこに?」
摩耶花「私もふくちゃんから聞いただけなんだけど……今は家に居るみたい」
える「では、行きましょう!」
そう言うと、私は制服のまま自転車を取り出します。
摩耶花さんも自転車で来ていた様です。
精一杯漕いで……15分ほどでしょうか。
それらを計算する時間も勿体無く、私は摩耶花さんと一緒に折木さんの家に向かいました。
『 奉太郎「古典部の日常」 目次 』引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346934630/
188: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:00:28.21 ID:xkf9nyGQ0
折木さんの家には何度かお邪魔した事があったので、道順は大丈夫です。
少しだけ見慣れた光景なのに……とても長く感じました。
える(早く……まだでしょうか)
たった15分の道のりが、30分にも1時間にも感じます。
摩耶花「ちーちゃん! 道はあってるの?」
える「はい! 何度か行った事があるので大丈夫です!」
自転車を漕ぎながらも、必死で会話をします。
摩耶花「え? ちーちゃん折木の家に行った事あるの!?」
ああ、失念していました。
別段、秘密にしようとは思っていなかったのですが……
なんとなく、隠していたんです。
でも、今は答えている余裕はありません。
える「もう少しで着きます!」
やっと……やっと見えてきました。
189: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:01:05.21 ID:xkf9nyGQ0
折木さんの家の前では……福部さんが待っていました。
える「福部さん! 折木さんは!?」
里志「ち、千反田さん。 落ち着いて」
里志「ホータローなら家に居るよ、お姉さんもね」
福部さんは、どうしてここまで落ち着いているのでしょう?
摩耶花「ふくちゃん! 早く折木の所へ行こう!」
そうです、折木さんは大丈夫なのでしょうか……
里志「うん、じゃあ行こうか」
福部さんの後ろについて行く形で、折木さんの家に入ります。
玄関を開けると、折木さんのお姉さんが居ました。
190: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:01:34.82 ID:xkf9nyGQ0
供恵「お、来たね」
供恵「にしてもあいつ、意外と友達に恵まれてるなー」
この方……もしかして。
摩耶花「こんにちは、伊原摩耶花といいます」
える「千反田えると申します」
摩耶花さんに続き、軽い挨拶をしました。
そこでふと、少し気になっていた疑問をぶつけてみます。
える「あの、すいません……以前お会いしましたよね?」
供恵「前に? うーん」
供恵「覚えてないなぁ……どこで会ったの?」
確かに、会った筈です。
える「神山高校の文化祭の時にお会いしたかと……」
191: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:02:02.89 ID:xkf9nyGQ0
供恵「え? なんか話したっけ、私と」
える「いえ、一目見ただけです。 その時はなんとなく、以前どこかでお会いした気がしていたんですが……」
える「折木さんのお姉さんだったんですね!」
供恵「すごい記憶力ねぇ」
供恵「ま、それにしても」
供恵「私とあいつが似てるー? 勘弁してよ!」
里志「あはは、ホータローもそれは違うって言ってたね」
供恵「あいつがねぇ……」
供恵「と言うか、千反田さん?だっけ」
える「は、はい」
供恵「なるほどねぇ、可能性の一つって所かしら」
192: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:02:32.56 ID:xkf9nyGQ0
える「え、えっと?」
供恵「ううん、なんでもない」
少し、気になりますが……
いけません!
今はもっと、しなければいけない事があるんでした!
える「それより!」
供恵「な、なに?」
里志「ち、千反田さん落ち着いて。 お姉さんびっくりしてるよ」
いけません、また近づきすぎてしまいました……
える「す、すいません。 で、でもですね」
193: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:03:00.05 ID:xkf9nyGQ0
える「折木さんはどこでしょうか!? 無事なのでしょうか!?」
供恵「あいつも大切にしてもらってるのねぇ、勿体無い!」
供恵「あ、奉太郎ね」
供恵「今は自分の部屋で寝ているよ、顔だけでも出してあげて」
える「ありがとうございます」
える「行きましょう。 福部さん、摩耶花さん」
摩耶花「うん、そうだね」
里志「りょーかい」
私たちは、3人で折木さんのお部屋に向かいました。
ドアはすんなりと開きます。
目に入ってきたのは、ベッドに横になっている折木さんでした。
える(私が、私のせいで……)
える「折木さん!」
194: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:03:29.27 ID:xkf9nyGQ0
折木さんの所へ行くと、手を握ります。
摩耶花「折木! 大丈夫?」
あれ? 福部さんも一緒に来たと思ったのですが……
お手洗いにでも行っているのでしょうか? 見当たりません。
で、でも今はそれよりも!
える「折木さん! 折木さん!」
何度か呼びかけると、折木さんは返事をしました。
奉太郎「……おい」
そう言うと、折木さんはゆっくりと体を起こします。
奉太郎「里志だな……こんな大事にしたのは」
大事……とはどういう意味でしょうか?
里志「い、いやあ……僕もここまで大事になるとは思わなかったんだよ」
える(福部さん、いつの間に戻ったのでしょうか……)
195: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:04:05.42 ID:xkf9nyGQ0
奉太郎「全く、いい迷惑だ」
える「え、ええっと?」
摩耶花「……ふくちゃん、説明してね」
つまりは、どういう事でしょう?
摩耶花さんは何か分かった様な顔をしていますが……
里志「えっとね、ホータローはただの風邪なんだ」
里志「最初に聞いたのは僕なんだけど……ホータローのお姉さんからね」
里志「それを拡大解釈して、摩耶花に連絡をしたんだよ」
里志「ホータローが倒れた! ってね」
里志「そうしたら摩耶花は千反田さんに連絡を入れて……今に至るって所かな」
そ、そうでしたか……
でも、危ない状態ではなくて良かったです。
いえ、一度倒れているんです……良かった事はないでしょう。
える「……そうですか、少しだけ安心しました」
そう言うと、私は床に座り込んでしまいます。
全身から、一気に力が抜けたのでしょうか。
196: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:04:41.08 ID:xkf9nyGQ0
摩耶花「……ふくちゃんのバカ」
摩耶花「あんな慌てて連絡してくるから、一大事だと思ったじゃない!」
里志「い、いやあ……まあ皆集まってホータローも嬉しいんじゃない?」
里志「結果オーライって奴かな?」
摩耶花「ふーくーちゃーんー?」
二人は、口喧嘩を始めてしまいます。
と言っても、摩耶花さんが一方的に責めているだけですが……
える(こ、ここで喧嘩はダメですよ! 二人とも!)
そんな動作を身振り手振りで伝えていたら、折木さんから声が掛かります。
奉太郎「いいんだ、千反田」
奉太郎「今となっちゃ、こっちの方がいつも通りだからな」
える「そう、ですか」
える「あの、折木さん」
197: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:05:11.10 ID:xkf9nyGQ0
奉太郎「ん?」
える「すいませんでした……折木さんがこんな状態なんて知らずに、私」
奉太郎「別に、俺が好きでやったことだ」
奉太郎「お前が気に病むことなんてないだろ、ただの風邪だしな」
える「そう言って頂けると、ありがたいです……」
本当に、折木さんは心優しい方です。
折木さんが好きでやったことでは無い事なんて……私でも分かります。
もう少し、もう少しだけ……私も強くならないと。
いつまでも頼ってばかりでは、ダメです。
える「折木さん、ありがとうございます」
そう笑顔を向けると、折木さんも少しだけ……笑った気がしました。
すると突然、ドアが開きます。
198: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:05:37.83 ID:xkf9nyGQ0
供恵「盛り上がってる所ごめんねー」
福部さんと摩耶花さんはそれを期に、口喧嘩を止めました。
供恵「ご飯作っちゃったけど、食べてく?」
里志「おお! ホータローのお姉さんの手作り! 是非!!」
摩耶花「私も、いただこうかな……」
摩耶花さんが、少しだけムッとした顔を福部さんに向けています。
える「では、私も……」
供恵「そっ、下に置いてあるから勝手に食べちゃってねー」
里志「あれ、お姉さんは一緒に食べないんですか?」
摩耶花さんが、さっきより更に鋭い視線を福部さんに向けています。
少し、怖いです。
供恵「あー、私はね」
供恵「今夜から旅行!」
確か前に、折木さんが「姉貴は世界が好きなんだ」って言っていましたが……
なるほど、と思いました。
199: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:06:10.16 ID:xkf9nyGQ0
里志「そうなんですか、気をつけて!」
供恵「うんうん、何かお土産皆に買ってくるね」
供恵「それじゃあまたねー」
そう言うと、さっそく折木さんのお姉さんは家を出て行きました。
行動が……早い人です。
里志「もう行っちゃったね」
里志「ご飯、食べようか」
福部さんの言葉を皮切りに、私たちはリビングへと向かいます。
それにしても何か忘れている様な……
そんな考えも、おいしいご飯を食べている時は忘れてしまいます。
30分ほど3人でご飯を食べ、また少しお話をします。
里志「あっははは、それはまた、ははは。 面白いね」
摩耶花「でしょ? 私はいい迷惑だったけどね!」
える「そうですね……あ、もうこんな時間ですか」
時計を見ると、時刻は20時となっています。
随分と、長居をしてしまいました……
200: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:06:36.34 ID:xkf9nyGQ0
長居?
里志「そうだね、そろそろ帰ろうか」
あ、思い出しました……!
摩耶花「うん、明日も学校だしね」
える「あ、あの」
える「少し、言い辛いんですが……」
摩耶花「どしたの? ちーちゃん」
える「折木さんは……?」
私がそう言うと、二人も思い出したのか焦りが顔に出ています。
里志「す、すっかり忘れてた」
摩耶花「物凄くリラックスしてたね、私たち……」
える「ちょ、ちょっと折木さんの部屋に行きましょう」
里志「そ、そうだね、そうしよう」
少々皆さんの顔が引き攣っていますが……戸惑ってはダメです!
201: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:07:04.39 ID:xkf9nyGQ0
ドアを開けると、折木さんがベッドの上に座り、手を組んでいました。
奉太郎「楽しかったか?」
里志「ま、まあ……」
奉太郎「……随分と、盛り上がっていたなぁ?」
摩耶花「う、うん……」
奉太郎「飯はうまかったか?」
える「折木さんごめんなさい!!」
急いで、頭を下げます。
折木さんは、一つ溜息をつくと、ゆっくりと口を開きました。
奉太郎「ま、いいさ」
奉太郎「それより悪いんだが、俺の飯を運んできてくれないか?」
える「は、はい!」
折木さんのご飯……ご飯。
202: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:07:31.28 ID:xkf9nyGQ0
あれ?
里志「ほ、ホータロー」
奉太郎「……ん」
里志「とても言い辛いんだけど、ホータローの分、皆で分けちゃったんだ」
奉太郎「……」
奉太郎「お前ら、一応ここ俺の家だからな?」
摩耶花「ご、ごめん折木……」
どうしましょう、どうしましょう……
すると突然、誰かの携帯が鳴りました。
摩耶花「私のだ、誰だろ」
摩耶花さんは廊下に出ると、電話でどなたかとお話をしています。
続いてまた、携帯が鳴ります。
今度は……福部さんでしょう。
部屋に二人っきりになりました。
203: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:09:24.80 ID:xkf9nyGQ0
える「あの、折木さん」
える「すいません、本当に……」
奉太郎「……はあ」
奉太郎「いいんだ、別に」
奉太郎「そこまで腹が減ってた訳じゃないしな、構わないさ」
える「い、いえ! でも……」
そうは言っても、折木さんのとても悲しそうな顔ときたら……
やはり、申し訳ないです。
するとどうやら、話し終わった福部さんと摩耶花さんが部屋に戻ってきます。
摩耶花「お母さんからだった、何してんのーって」
里志「はは、僕も一緒だ」
お二人はどうやら、そろそろ帰らないとまずいようです。
える「そうなんですか、折木さんのご飯……どうしましょう」
奉太郎「気にするな、明日も学校だろ。 お前ら」
ですが、ですが。
福部さんも、摩耶花さんも、やはり少し後ろめたさがあるようです。
204: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:10:07.78 ID:xkf9nyGQ0
私、決めました!
える「私が何か作ります!」
奉太郎「た、確かにそれは有難いが……時間、大丈夫なのか?」
える「はい、今日は大丈夫です」
える「両親は今日、挨拶でとなりの県まで行っているので」
える「戻ってくるのは明日のお昼の予定です、問題はありません」
里志「うーん、じゃあちょっと悪いんだけど……千反田さんに任せようかな」
摩耶花「そだね……ごめんね? ちーちゃん」
える「いえいえ、構いませんよ」
そう言い、二人は帰り仕度を始めます。
奉太郎「ありがとな、里志も伊原も……千反田も」
里志「気にしない気にしない、どうせ暇だったしね」
摩耶花「別にあんたの為に来た訳じゃないし……ふくちゃんが行くって言うから……」
摩耶花「でも、早く元気になってよ。 病気のあんたと話しててもつまらないし」
奉太郎「……ま、すぐに治るだろう」
そして、摩耶花さんと福部さんは自分の家へと帰って行きました。
205: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:10:37.98 ID:xkf9nyGQ0
さて、どうしましょう……
える「とりあえず、ご飯作りますね!」
奉太郎「ああ、悪いな千反田」
える「いえいえ、折木さんは寝ていてください」
そう言い残し、私は台所へと向かいました。
える(何を作りましょうか……)
える(お米は、御粥にしましょう)
える(生姜粥がいいですね)
える(後は……ネギを炒めましょう)
える(少ないですけど……風邪ですからね、仕方ないです)
私はお粥を作り、ネギを醤油で炒め、折木さんの部屋へと持って行きました。
える「折木さん、できましたよ」
える「ちょっと見た目も良いとは言えませんし、量も少ないですが……風邪に良いと思いまして」
206: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:11:16.57 ID:xkf9nyGQ0
奉太郎「おお、うまそうだ」
える「そう言って頂けると、うれしいです」
折木さんは食べ始めると、ひと言も喋らず食べ続けます。
そんな様子を見ていたら、なんだか顔が綻んでしまいます。
奉太郎「あ、あんまジロジロ見ないでくれ」
える「あ、す、すいません」
慌てて視線を泳がせますが……やはり気になってちらちらと見てしまいます。
える(どうでしょうか……)
奉太郎「……ふう」
折木さんは食べ終わると、箸を置き、息を吐きました。
奉太郎「……うまかった、ご馳走様」
ああ、良かったです。
える「そうですか、お粗末様です」
207: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:11:52.23 ID:xkf9nyGQ0
奉太郎「悪いな、色々と」
える「い、いえ……元を辿れば私のせいですので」
やはり、申し訳ない事をしてしまいました。
私がもっとちゃんとしていれば。
そこで気付くと、折木さんが私の顔の前に手を持ってきていて……
える「いっ…」
デコピン、してきました。
奉太郎「何回言ったら分かるんだ、お前のせいじゃない」
奉太郎「もう自分を責めるのはやめろ」
える「は、はい。 でも……」
奉太郎「ん?」
える「デコピンは、ちょっと酷いです……」
そう言い、私が俯き悲しそうな顔をしていると折木さんが口を開きます。
208: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:12:46.02 ID:xkf9nyGQ0
奉太郎「わ、悪い」
折木さんは、顔を私から逸らします。
今です!
奉太郎「悪かったよ、千反田……いてっ」
やり返しちゃいました。
える「ふふ、お返しです、折木さん」
奉太郎「……全く、俺はもう寝るぞ」
える「そうですか」
奉太郎「それより、お前は帰らなくてもいいのか」
……すっかり忘れていました。
える「あ、もう22時ですね」
える「……通りで眠いと思う訳です」
もう外は、真っ暗です。
でも余り折木さんの家に長く居ても迷惑ですし……そろそろ帰らなければ。
209: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:13:14.15 ID:xkf9nyGQ0
える「では、私はそろそろ……」
奉太郎「なあ……」
える「はい? なんでしょうか?」
奉太郎「今日、泊まっていかないか」
と、泊まり!?
お、折木さんの家に!?
そ、それはつまり……どういう事でしょう?
える「え、えっと、そ、そのですね」
奉太郎「べ、別に嫌ならいいんだ」
奉太郎「その、なんだ」
奉太郎「今から一人で帰すってのも、ちょっとあれだしな」
奉太郎「夜遅くに、女子を一人で帰すのは……ちょっと気が引けるってだけだ」
210: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:13:49.88 ID:xkf9nyGQ0
える「え、あ、ありがとうございます……」
奉太郎「……千反田が嫌ならいいんだがな、無理にとは言わん」
ど、どど、どうしましょう。
嫌って訳ではないんです、ないんですが……
なんで、私はここまで緊張しているのでしょうか……?
折木さんが言っているのは、帰っても帰らなくてもって事ですよね。
……どうしましょう?
える「お、折木さん、あの」
える「……泊まらせて、もらいます」
自然と、口から出てしまっていました。
折木「……そうか」
折木「……風呂も一応沸いてるから、使っていいぞ」
える「は、はい」
える「では、頂きますね」
そう言い、ちょっと恥ずかしいのもあり、私は一度リビングへと行きました。
211: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:14:16.28 ID:xkf9nyGQ0
リビングに着き、ソファーに座ります。
える(びっくりしました)
える(まさか、泊まる事になるなんて……)
ふと、思い出します。
える(着替え……どうしましょう)
そんな事を思いつつ、ソファーの隅に一枚の紙切れが落ちているのに気付きます。
その紙には【これ私の服ね、使っていいわよ、千反田さん。 折木 供恵】と書いてありました。
える(全部、全部予想されていたって事ですか……)
折木さんのお姉さんは、随分と勘が鋭い方だとは聞いていましたが……ここまでとは。
でも、助かりました。
そう思い、その紙と一緒に置いてあったパジャマを手に取り、私はお風呂場へと足を向けます。
第七話
おわり
212: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:14:51.97 ID:xkf9nyGQ0
以上で第七話、終わりです。
えるたそ視点は難しいですね、続いて7.5話、投下します。
213: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:21:48.96 ID:xkf9nyGQ0
僕は、皆より一足先にホータローの家に着いていた。
そこで、盛大な勘違いをしたことを知ったんだけど……
お姉さん曰く、ただの風邪らしい。
それでも無理に動いていたから、倒れたとの事だ。
まあ、普段から体を動かしてないからってのもあると思うけどね。
とにかく、摩耶花と千反田さんになんて言い訳しようかな。
里志(うーん、参ったなぁ)
里志(あれ? もう来てるし!)
予想以上に千反田さんと摩耶花が来るのは早かった。
二人に軽く挨拶をして、ホータローの家に入る。
ここまできたら、どうにでもなれ!
214: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:22:24.29 ID:xkf9nyGQ0
お姉さんと千反田さんの会話を少し聞いたけど、千反田さんの記憶力はやはりすごい。
里志(これほどまでとは、ね)
そんなこんなで、ホータローに会おうという流れになってしまう。
うう、参ったなぁ。
お姉さんの横を通り過ぎようとした所で、呼び止められた。
供恵「里志くん、ちょっといいかな」
なんだろうか? まあこのまま行っても気まずいし、少し道草をしよう。
里志「なんですか?」
供恵「奉太郎の事なんだけど、さ」
供恵「最近学校で何かあったの?」
里志「うーん、確かにあるっちゃありましたね」
215: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:23:11.91 ID:xkf9nyGQ0
供恵「内容までは言えないって事ね」
里志「ま、そんな所です」
里志「すいません、いくらお姉さんでも言う訳には行かないんです」
供恵「……それってあの千反田さんに関係してるのね」
里志「……違うといえば、嘘になります」
うひぃ、やっぱり鋭いなぁ。
ホータローが苦手になるのも、少し分かる気がする。
供恵「そう、それだけ分かれば充分だわ」
供恵「にしても、あのホータローがねぇ」
216: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:23:39.24 ID:xkf9nyGQ0
里志「ええっと、どういう意味ですか?」
供恵「その内分かるわよ」
なんだろうか……
やはりこの人は、何か知っているのか?
ううん、僕には思いつきそうにないや。
そして、そう言うとお姉さんはリビングへと戻っていった。
供恵「里志くん、ごめんね呼び止めちゃって」
供恵「奉太郎に会いにいってあげて」
そう言い残し、扉を閉めようとする。
そして、これは僕が聞いていなかった言葉、聞けなかった言葉。
供恵「あの奉太郎が飛び出して行ったと思ったら、なるほどね」
供恵「中々青春してるじゃない、あいつも」
第7.5話
おわり
217: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 21:24:40.32 ID:xkf9nyGQ0
以上で7.5話、終わりです。
乙ありがとうございます。
次回は奉太郎視点へと戻ります、投下は今週中の予定。
それでは、失礼します。
218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/09/10(月) 21:28:28.39 ID:tX+bwBIio
乙です
219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/10(月) 21:30:05.40 ID:8sRBtjano
おっつー
220: ◆Oe72InN3/k 2012/09/10(月) 22:19:18.72 ID:xkf9nyGQ0
あ、そういえばアニメ21話とても良かったですね。
今すぐにでもほうたるとえるたそが付き合いそうな雰囲気……
222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2012/09/11(火) 12:52:17.38 ID:x2LeOXiK0
おもしろい
乙乙、続き楽しみにしてるよ
米澤 穂信
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奉太郎「古典部の日常」 04
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- 2012/09/11(火) 21:47:00|
- 氷菓
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