488: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:17:18.08 ID:kxAEl/Vt0
こんばんは。
乙ありがとうございます。
感謝の第16話を投下致します。
投下をし終えた時、投下速度は
音を 置き去りにした。
489: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:18:19.22 ID:kxAEl/Vt0
時刻は恐らく23時くらいか。
日にちは7月30日、丁度夏休みに入ってちょっと経ったくらいだ。
そして俺は今、神山市の郊外にある神社に来ている。
月は頭上からは少し外れており、神社の奥からこちらを照らしている。
その神社というのもただの神社では無い、倒産してしまった神社である。
これは里志に聞いた話なのだが、最初は神社が倒産? そんな馬鹿な事がある物か。 と思っていた。
しかしどうやら、神社は倒産する物らしい。 現に俺が今いるこの神社は倒産しているのだから。
勿論入るのには許可が必要だと思う。 だが里志に言わせれば「問題ないよ、ばれなければね」だそうだ。 間違ってはいないかもしれない。
そして何故、ここに俺が居るのか? ちなみに一人では無い、横にはもう一人居る。
正確に言えば、神社の入り口にはもう二人程居る。
この状況を説明するには少し、記憶を掘り返さなければならない。
一週間ほど前だっただろうか? 夏休み前の最終登校日だったのは覚えている。
『 奉太郎「古典部の日常」 目次 』引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346934630/
490: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:18:53.61 ID:kxAEl/Vt0
~~~
~古典部~
普通、一学期の終業式が終わってしまえばそのまま家に帰る者や、友達と遊びに行く者が大多数だろう。
だが、この部活動が活発な神山高校では家に帰れば夏休みだというのに未だに残って部活動に励む者の方が多い。
それに対し俺は「頑張れ」とか「お疲れ様」等とは思わない、なんせ俺もその励む者の中の一人なのである。
そんな事を考えながら小説のページを捲る、やはり頑張れくらいは思った方がいいかもしれない。
奉太郎「……」
周りが静かなら、それは心地よい物なのだろうが……生憎先ほどから3人ばかし、何やら盛り上がっている様子だ。
「静かにしてくれ」と言いたいが、俺もそこまで傲慢ではない。
里志「それでさ、丁度夏休みに入ることだし……行ってみない?」
摩耶花「ええ……ちょっと嫌だな……」
える「でも……ちょっと、気になるかもしれないです」
491: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:19:23.35 ID:kxAEl/Vt0
何やら不吉な言葉が最後に聞こえた。
その言葉のせいで小説に集中するのもできず、顔を里志達の方に向ける。
奉太郎「……何の話だ?」
里志「お、ホータローが食いついてくるとは思わなかったかな」
摩耶花「と言うか……話聞いてなかったの?」
奉太郎「いや、聞いてはいた。 覚えていないだけで」
軽い冗談のつもりだったが、伊原の目つきを悪くさせるには十分だった様だ。
里志「30日辺りにね、やろうと思っているんだ」
奉太郎「何を?」
里志「肝試し」
492: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:20:02.35 ID:kxAEl/Vt0
奉太郎「またくだらん事を……千反田の家で肝試しでもするのか?」
自分で言って、あそこは中々肝試しに向いているかもしれないと思う。 夜は真っ暗になるし、何より広い。
える「酷いですよ折木さん、私の家にはお化けなんて出ません!」
奉太郎「じゃあ伊原の家か」
摩耶花「折木の家でいいんじゃない? 怠け者のお化けとか出そう」
これは失敗、伊原を突くとどうにも手痛いしっぺ返しを食らってしまう。
里志「冗談も程々にさ、うってつけの場所があるんだよ」
里志「随分前に倒産した神社があるんだけど、最近では誰も寄らなくなってるんだ」
里志「そこなら丁度いいと思うんだけど、どうかな」
それはまた……つまりは廃墟、という事か。
しかしそれは千反田が納得するのか? そういうのは厳しそうなイメージがあるのだが。
える「そうですね、本当にお化けが出るのか気になります」
奉太郎「いいのか? 千反田はそういうのはしないと思ったんだが」
える「ええ、倒産してしまった神社なら問題は無いです」
さいで。
493: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:20:33.09 ID:kxAEl/Vt0
里志「それで! 皆で肝試ししないかい?」
摩耶花「み、皆で行くならいいかな……」
える「私も、30日ならば大丈夫です」
奉太郎「……今回は断っていいのか」
里志「いや、駄目だね」
奉太郎(なら何故確認するんだ……)
里志「じゃ、全員参加って事で」
里志「ああ、それと」
里志はそう言うと、巾着袋から割り箸を4本取り出した。
里志「二人一組で一周しよう。 そっちの方が盛り上がる」
その為の割り箸か、準備がいい奴だな。 この状況にならなかった時、里志はどんな顔をして割り箸を取り出すのか少し興味があるが。
いや、もしかすると取り出さずに持ち帰って一人でくじ引きをするかもしれない。 寂しい奴だ。
494: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:21:20.48 ID:kxAEl/Vt0
摩耶花「ふ、二人で行くの?」
える「楽しそうですね、やりましょう!」
伊原はやはり、こういうのが苦手なのかもしれない。
それにしてもくじ引きか……
心の中でしか言えないが、順位をつけるとしたら1位が千反田。 次に里志。 はずれは伊原。 心の中では遠慮は必要無い筈だ。
奉太郎「よし、引くか」
とても口にしたらただでは済まない事を思いながら、俺はくじ引きに挑む。
里志「皆掴んだね。 せーの!」
全員が割り箸を引き抜く、俺の割り箸には……
奉太郎「赤い印が付いているな」
里志「僕のは無印だね、という事はホータローとは一緒に周れない」
今更思うが、男二人で肝試しはちょっと嫌だ。 なのでこれはこれで良かったのかもしれない。
495: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:21:46.16 ID:kxAEl/Vt0
しかし次に千反田が言った言葉によって、男二人の方が良かったのかもしれない、と心が揺らぐ。
える「私は無印です、福部さんと一緒ですね」
つまり?
摩耶花「……」
奉太郎「良かったな、一緒に周れるぞ」
俺がそう言うと、伊原は持っていた割り箸を真っ二つに折った。
~~~
496: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:22:40.43 ID:kxAEl/Vt0
そして俺は、今ここに居る……伊原と共に。
奉太郎「……はぁ」
摩耶花「悪かったわね、私で」
奉太郎「いやこっちこそ、俺で悪かった」
摩耶花「……ふん」
全く、もう1/3程は周っているのに会話は今のが最初だ。
特に何事も無く周る。 そして丁度裏手に周った時、道が無い事に気付いた。 裏には山がそびえ立っており、木で埋め尽くされている。
奉太郎「ん、通れないぞ……これ」
摩耶花「ええ? ふくちゃんはちゃんと下調べはしたって言ってたんだけどな……」
奉太郎「ふむ、ってことは」
奉太郎「この神社の中を通れって事か」
摩耶花「確かに廊下はあるけど……屋根は無いし、大丈夫なのかな」
奉太郎「下調べは済んでいるんだろう? なら大丈夫だろ」
摩耶花「そ、そうね。 行こう」
と言いつつ、伊原は先に行こうとはしない。 目で俺に「行け」と合図はしている。
それに逆らっても良い事なんてのは無い、仕方なく伊原の指示に従うことにした。
497: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:24:24.49 ID:kxAEl/Vt0
奉太郎「……本当に大丈夫か、これ」
床はとても弱そうで、ギシギシと木が軋んでいるのが伝わってくる。
それに加え、所々穴が開いている。 本当に里志は下調べをしたのだろうか?
最初の一歩を踏み出したときは少し穴に足を取られてしまった。 しっかりチェックはしてもらいたい物だ。
摩耶花「ちょ、ちょっと折木」
奉太郎「ん、なんだ」
摩耶花「……手、繋いで」
俺は一瞬自分の耳はついにおかしくなってしまったのかと思った。 それを確認する為に再度聞く。
奉太郎「え? なんて言った今」
498: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:25:14.22 ID:kxAEl/Vt0
摩耶花「……手! 繋いで!」
やはり俺の耳はおかしくなってしまったのか。 お化けが出るより余程怖い。
そんな事を考え、ぼーっとしている俺の手を伊原が掴む。
摩耶花「……歩き、にくいから」
奉太郎「……そうか、まあいいが」
良かった、俺の耳はおかしくなんてなってなかった。
伊原と手を繋ぎ、ゆっくりと廊下を進む。 しかし暗くて下がよく見えない。
足を先に出し、ここは大丈夫か確認しながら進む。
そんな事をしばらくしている間に廊下の終わりが見えてきた。
砂利の地面に足を付けると、伊原はすぐに手を離す。
摩耶花「……行こ、もうすぐでしょ」
奉太郎「ああ、そうだな」
なんとも……何も無い肝試しであった。 強いて言えば伊原と手を繋いだ事くらいか。 確かにこれは貴重な体験である。
そして神社の階段を降り、下で待つ里志と千反田の元に到着した。
499: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:31:14.46 ID:kxAEl/Vt0
里志「お疲れ様、二人とも」
える「どうでした? 何か出ました?」
奉太郎「いや、なんにも出なかったぞ」
奉太郎「それより里志、ここは下調べしたのか?」
里志「勿論さ、裏に廊下があっただろう?」
奉太郎「あるにはあったが、穴は開いているし暗くて床は見えないしで危なかったんだが……」
里志「あれ? おかしいなぁ……穴は開いてなかったと思ったんだけど」
里志「まあ、僕達は灯りを持っていくよ。 念のためにね」
……俺たちにも灯りくらい寄越せ。
里志「じゃ、行って来るね」
える「行ってきます! また後ほど」
そう言い、里志と千反田は出発して行った。
500: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:31:57.99 ID:kxAEl/Vt0
出発してから割りとすぐ、3分ほど経っただろうか? 隣から伊原が声を掛けてくる。
摩耶花「……さっきはありがとね」
奉太郎「ん? 何の事だ」
摩耶花「手、繋いでくれたこと」
奉太郎「ああ、別に構わんさ」
摩耶花「……そっか」
しばらくの沈黙、そして再び伊原が口を開く。
摩耶花「折木ってさ」
摩耶花「ちーちゃんと私に対する態度、違うよね」
奉太郎「……一緒だと思うが」
摩耶花「それ……本気で言ってるの?」
摩耶花「仮にさ、ちーちゃんが手を繋いでくれって言ったらどう思う?」
奉太郎(千反田が手を繋いでと言ったら、か)
奉太郎「いや、まあ……繋ぐ、かな」
摩耶花「……やっぱり違う」
そうなのだろうか? 確かに、千反田に言われたら少し恥ずかしいかもしれない。
ああ、そういう事か。
501: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:32:24.89 ID:kxAEl/Vt0
奉太郎「そう、かもな」
摩耶花「それでさ」
摩耶花「何か進展はあった? ちーちゃんと」
あると言えばある、無いと言えば無い。 どちらにでも当てはまる物だと思う。
奉太郎「さあな、俺にもわからん」
摩耶花「……ふうん」
奉太郎「……どうして急に?」
摩耶花「……最近、折木とちーちゃん前より仲が良さそうに見えたから」
摩耶花「何か進展あったのかな、って思っただけ」
奉太郎「……そうか」
俺としては、前とは何も変わらず千反田との距離はあるつもりだった。
しかし伊原が言うからには、そうなっているのかもしれない。
502: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:32:51.68 ID:kxAEl/Vt0
摩耶花「私はさ」
摩耶花「応援、してるから」
奉太郎「応援? 何を?」
摩耶花「……折木の事」
奉太郎「てっきり逆かと思っていた」
摩耶花「そんな訳ないでしょ、正直に言うと」
摩耶花「ちーちゃんと折木、お似合いだと思ってるんだ」
奉太郎「……」
第三者から言われると、ちょっと恥ずかしい。
奉太郎「それは、どうも」
奉太郎「……ありがとな」
摩耶花「……くっ……あはは」
何を急に笑っているんだ、こいつは。
503: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:33:18.38 ID:kxAEl/Vt0
奉太郎「悪霊にでも取り憑かれたか」
摩耶花「ご、ごめんごめん」
摩耶花「折木が素直にお礼を言うのが面白くって」
俺はそこまで礼儀を軽んじていただろうか? やはり伊原は何か悪霊に……
摩耶花「……あんた、なんか失礼な事考えてない?」
いや、取り憑かれていなかった。 いつもの伊原だ。
奉太郎「い、いや」
これから伊原になんと言われるか、どうしようかと思っていた所に里志達が戻ってくる。
里志「たっだいまー」
える「戻りました……」
意外と早かったな、月は丁度頭上まで動いてきている。 そこまで時間は経っていないだろう。
そして千反田が何故か元気が無い、何かあったのだろうか?
奉太郎「元気が無いな、何かあったのか?」
える「いえ、何もありませんでした……」
それで元気が無かったのか、分かり辛い。
504: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:33:51.21 ID:kxAEl/Vt0
里志「それより、さ。 ホータロー」
奉太郎「ん? どうした」
里志「嘘は良くないな、ジョークならまだしも嘘は良くない」
奉太郎「……言っている意味がわからんのだが」
える「確かに廊下はあったんですが、穴なんて開いてなかったですよ?」
摩耶花「え? 嘘だ、開いてたよ?」
奉太郎「俺も確かに見たぞ、だから慎重に進んだんだ」
里志「……それは妙だね、違うルートでも通ったのかな?」
奉太郎「ま、そうだろうな」
える「……確認しに行きましょう!」
摩耶花「うん、気になる」
おいおい、またこの階段を上れと言うのか。 冗談じゃないぞ。
里志「……そうだね、確認すれば終わる事だよ」
奉太郎「……分かった、行くか」
毎度毎度このパターンだ。 結局は強制されてしまう、断るのもできるが省エネにはならないだろう。 千反田がいる限り。
そして俺達4人は再び階段を上る。
505: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:34:17.42 ID:kxAEl/Vt0
里志の灯りのおかげもあり、すんなりとその現場には到達できた。
里志「僕達が通ったのはこの廊下だけど……ホータロー達は?」
奉太郎「俺達が通ったのもこの廊下だ、なあ伊原?」
摩耶花「うん、この廊下だよ」
里志がその廊下を灯りで照らす。
える「ほら、穴なんてありませんよ?」
千反田がそう言い、俺と伊原で廊下を覗き込む。 そこには確かに穴は……開いていなかった。
摩耶花「……うそ、なんで……?」
奉太郎「……本当だ、確かに穴なんて開いていないな」
里志「ってことは……考えられるのは一つだね」
える「な、なんでしょうか!? 気になります!!」
いつになく千反田のテンションが高い。 夜中と言うものは人のテンションを上げるらしい。
里志「つまり……ホータロー達はどこか異次元に行っていたんだよ!!」
摩耶花「い、いやあああああああ!!」
伊原はそう叫ぶと、しゃがみ込んでしまう。 俺には異次元へ行った事よりその叫び声が怖かった。
506: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:35:05.63 ID:kxAEl/Vt0
奉太郎「……里志、本気か?」
里志「あはは、ジョークだよ」
里志「でもさ、可能性も無くはないよね?」
奉太郎「まあ、少し妙ではあるな」
える「折木さん、私……気になります!」
まあ、ここまで来たんだ。 別にいいか。
奉太郎「……分かったよ、考えよう」
と言う訳で考える事となったのだが、大体の見当は既に付いている。
奉太郎「里志、一度灯りを消してくれないか」
里志「灯りを? 分かった」
里志が灯りを消すと、辺りは真っ暗となる。
かろうじで……月の光によって俺達の影は見える。
507: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:35:37.76 ID:kxAEl/Vt0
俺はその影を指差しながら、言う。
奉太郎「原因はこれだな。 温泉に行ったときに見た首吊りと似たような物だ」
える「でも、ですね」
える「この廊下には天井なんてありません。 一体どんな影が穴を見せたのですか?」
千反田の言葉を聞き、俺は近くに落ちている葉っぱを一枚拾った。
それを廊下の方に手を伸ばし、かざす。
奉太郎「これだ、この神社の裏は山となっている」
奉太郎「俺と伊原が通ったときは丁度山から月が見えていた」
奉太郎「そして、その木の葉っぱが穴を見せていたって所だな」
える「……なるほど、それで私達が行ったときは穴が無かったんですね」
里志「僕達の時は光源もあったしね、それが余計に影を消したのかも」
奉太郎「ま、実際はこんなもんさ……異次元とか馬鹿な事を行ってないでそろそろ帰るぞ」
508: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:36:10.44 ID:kxAEl/Vt0
里志「ま、摩耶花ー。 帰るよ?」
摩耶花「……ふくちゃんの、ばか」
これはどうやら、里志は埋め合わせをしなくてはいけなくなりそうだ。 穴だけに。
そんなつまらない事を考えながら、前を行く里志と伊原の後に続く。
える「やはり、なんでも分かっちゃうんですね。 折木さんには」
奉太郎「何でもって訳でもないさ、分からない事だってある」
える「……そうですか。 あの」
える「手、繋ぎましょうか」
奉太郎「あ、ああ。 ほら」
俺と千反田は、里志達には見えないように……そっと手を繋いだ。
奉太郎(確かに、伊原とだった場合……接し方は変わるな)
奉太郎(どうにもこれは……心臓に悪い)
そして俺は一つの事を思い出す。
廊下を歩いたときに、最初は確かに穴につまづいた。
あれは……何だったのだろうか?
第16話
おわり
509: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/18(火) 23:37:57.33 ID:89vw1bod0
いやああああああああ!!
乙です
面白かったです
510: ◆Oe72InN3/k 2012/09/18(火) 23:38:25.89 ID:kxAEl/Vt0
以上で第16話、終わりとなります。
奉太郎がつまづいた穴は一体何だったのか……里志達が単純に見逃していたのか、それとも……
511: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/18(火) 23:42:54.52 ID:gP1JSOC/o
なにそれこわい…
おつっしたー
512: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) 2012/09/19(水) 00:20:39.51 ID:d9tVfiPAO
怪談の種明かし後に怪異に気付くのは様式美ですね
いつもながら乙です
毎回楽しみにしています
513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) 2012/09/19(水) 00:55:15.65 ID:iTu9SWKbo
>>488
感謝の正拳突き乙
楽しみにしてます!
514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/19(水) 01:30:59.72 ID:PORilYvSO
何ナチュラルに手繋いじゃってんのこいつら
516: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:16:48.30 ID:5dtdEAz50
ドンドン、ドンドン
私「え?なんすか」
私「なに? 投下の時間?」
私「でも、あれは日課じゃなくて」
私「投下しないと肩パン?」
私「ええ……でも」
私「じゃあ顔パン? って、ええ」
私「すればいいんだろ!!」
第17話、投下します。
517: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:17:14.67 ID:5dtdEAz50
供恵「あんた、一体どこで寝てるのよ」
姉貴に顔をぺちぺちと叩かれ、目が覚める。
奉太郎「……どこ、って……」
頭の回転はまだ良くない、姉貴の言葉をゆっくりと飲み込む。
昨日は確か、里志の発案で肝試しに行った。
その後に千反田を家まで送って行った、歩きながら寝そうなくらい眠そうな千反田を。
そして俺が家に着いたときには1時を回っていた気がする。
そのまま俺はソファーに横になって……そうか。
奉太郎「……あのまま寝ていたか」
供恵「昨日は夜遅かったみたいね、何をしていたの?」
奉太郎「別に、里志と遊んでいただけだ」
供恵「奉太郎が不良になっちゃうなんて……お姉さん悲しいなー」
供恵「もうあんたに構ってあげられないなんて……」
518: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:17:47.56 ID:5dtdEAz50
奉太郎「そうか、じゃあそろそろ俺の顔を叩くのをやめてくれないか」
供恵「あら、ごめんなさい」
そう言うとようやく姉貴は俺の顔を叩く手の動きを止めた。
奉太郎「……ふぁぁ」
でかいあくびをしながら起き上がる、ソファーにしてはよく寝れた方だろう。
供恵「そんなあんたに朗報ー」
奉太郎「なんだ」
姉貴がこう言う時は、大していい事でもない……むしろその逆の方が多いと思う。
供恵「これ、映画のチケットなんだけどね」
供恵「2枚あるからあげる」
そう言い、チケットを渡される。
奉太郎「ほう、中々気が利くな」
供恵「照れるなぁ。 有効期限明日までだけどね」
奉太郎「おい」
519: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:18:26.17 ID:5dtdEAz50
そんな漫才を朝からしたせいで、なんだか今日は既に疲れてしまった。
それに加え、生憎外は雨模様。 今日は外に出る気がしない。 ……いや、いつもか。
奉太郎(里志でも誘って明日、行くか)
そう思い、電話機を取る。 俺のモットーは思い立ったらすぐ行動なのだ。 嘘だが。
たまたま近くにあった電話機に感謝をしつつ、里志の携帯の番号を押す。
家でも良かったが、外出している可能性も考えると携帯に掛けた方が手短に済むという物だ。
珍しく30秒ほどかかっても里志には繋がらず、諦めかけた所で電話は繋がった。
520: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:19:21.81 ID:5dtdEAz50
里志「あ、ホータロー?」
奉太郎「ああ、忙しかったか?」
里志「いや、そういう訳じゃないんだけど」
摩耶花「……、………」
電話の奥から伊原の声が聞こえた、恐らく「折木って本当に空気が読めない」とか「タイミングが悪い奴」とか言ってるのだろう。
いや……決め付けは良くないな。
里志「ご、ごめんね。 摩耶花がホータローに怒ってる」
そうでもないか。
奉太郎「あー、そうか。 明日は空いているか?」
里志「明日もちょっと……ごめん」
奉太郎「分かった、それなら仕方ない」
奉太郎「頑張れよ」
里志「まあ、うん。 そうだね」
奉太郎「じゃ、また今度」
と言い、電話を切る。
521: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:19:54.34 ID:5dtdEAz50
奉太郎(さて、どうするか)
その様子を見ていた姉貴が口を出してくる。
供恵「かわいそーに、お姉さんと一緒に行く?」
奉太郎「遠慮しておく」
供恵「それは残念、でもあんたの友達は里志君だけじゃないでしょ」
供恵「前に家に来た子、あの子でも誘ってみたら?」
奉太郎「……千反田か、ううむ」
別に気が進まないって訳ではない。 だが……あいつはどうにも休みの日は忙しそうだ。
奉太郎「ま、するだけしてみるか」
姉貴が後ろで嫌な笑い方をしているのが分かった。 何だというのだ、全く。
再び電話機を取り、千反田の家の番号を押す。 できれば携帯に掛けた方が無駄が無くていいのだが……あいつは携帯を持っていない。
2回ほどコール音が鳴ったところで、電話は繋がった。
522: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:20:21.88 ID:5dtdEAz50
える「もしもし、千反田です」
奉太郎「千反田か、折木だ」
える「あ、折木さんですか。 どうされました?」
奉太郎「姉貴から映画のチケットを貰ったんだが、明日どうだ?」
それをどこで入手したか。 そして目的は何か。 それをする日はいつか。 これを完璧に一文で伝えた、省エネとはこういうことだ。
える「え、あ……明日、ですか」
奉太郎「あー、何か予定があるならいい。 すまなかったな」
える「い、いえ。 そういう訳ではないんです」
奉太郎「ん、じゃあどういう訳で?」
える「……折木さんから遊びの誘いがある事が、とても意外だったもので」
さいで。
奉太郎「……まあ、じゃあ明日行くか」
える「分かりました! 朝からにします?」
奉太郎「そうだな、夕方からは雨らしいからそうしよう」
える「では、明日の朝……一度、折木さんの家に伺いますね」
奉太郎「分かった、じゃあまた明日」
523: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:20:49.69 ID:5dtdEAz50
……電話が切れない。
奉太郎「……なんだ、どうした」
える「え? 何もないですが……」
奉太郎「……そうか」
える「はい、ではまた明日」
……またしても。
奉太郎「何か用でもあるのか」
える「そういう訳では無いですが、折木さんが電話を切ると思ったので」
奉太郎「……俺はそっちから切ると思っていた」
える「……すいません、では切りますね」
奉太郎「ああ、またな」
奉太郎「あ、そうだ」
切れた。
何時に来るのか聞くのを忘れていた。 わざとでは無いが長引いて、結局は聞けなかったとはなんとも情けない話である。
524: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:21:15.65 ID:5dtdEAz50
奉太郎「まあ、いいか」
後ろを振り向くと、姉貴は未だに嫌な笑いを俺に向けている。 余程、暇なのだろう。
とにかく、明日の予定は決まった。 それにしても俺から遊びに誘うのが意外だと言っていたが、そうだろうか?
里志はたまに遊びに誘う事もあるし、俺が今日は何処に行こう。 と決める事だって無かった訳では無い。
だが言われてみれば……千反田を誘った事は無かったかもしれない。 当たり前と言えば当たり前だが……
千反田がそう思ったのも、仕方ない事だ。
奉太郎「……さて、今日はゆっくりするか」
ま、特にする事も無い。 ましてや里志や伊原、千反田によって俺の休日の一日が消費される事も無い。
供恵「あー私ちょっと出るから、留守番よろしくね」
奉太郎「そうか、気をつけてな」
そう言いながらも姉貴は、既に家から出ていた。 その行動の早さだけは俺には真似できそうにない。
奉太郎「……ニュースでもチェックしよう」
特に他にする事もない。 小説を読む気分でも無かった俺は、情報収集という画期的な事を思いつく。
ゆっくりとパソコンの前まで移動し、電源を付けた。
起動までには少し掛かることを俺は知っている、その間にコーヒーでも淹れよう。
台所へ行き、コーヒーを淹れる。
パソコンの前に戻ると、既にデスクトップが映し出されていた。
525: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:21:47.34 ID:5dtdEAz50
奉太郎「……」
しばらくの間、ニュースに目を通す。
やがてそれにも飽き、パソコンを落とそうとするが……落としたとして、何をしようか。
奉太郎「……そういえば、前に千反田がチャットをやっているとか言っていたな」
俺もそれは一度使ったことがある。 あの時はただ単に、千反田に事情を説明する為だった。
……少し、暇つぶしでもしよう。
チャットルームまで行くのにそこまで苦労はしない。 なんと言っても指を動かすだけだから。
やがてチャットルームの入り口が目に入る。
そのままチャットルームのロビーに入ると、何個か部屋があり、少し目を引く名前の部屋があった。
2013/7/31 11:04【気になります】
おい、なんだこれは。 千反田が作ったのだろうか? それにしても……もっとこう、入る人が目的は何なのか分かるように立てろ。
この部屋の名前が俺には気になって仕方ない。 しかし閲覧者として入るのも……気が引ける。
奉太郎「……入室してみるか」
名前を打つ。 前回は打ち間違えた結果、ハンドルネームが「ほうたる」となってしまった。 俺は同じ過ちを二度は繰り返さない。
丁寧に「ほうたろう」と打ち、それを変換。
「法田労」
どこかのお坊さんみたいな名前になってしまった。 しかし確定してしまったのを消すのは面倒だ。 同じ過ちでは無いし別にいいか。
そして入室をクリックする。
526: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:22:17.81 ID:5dtdEAz50
《法田労さんが入室しました》
L:こんにちは
L:代わったお名前ですね
L:変わった、です
法田労:千反田か?
L:え?なんで解ったんですか?
L:分かった、です
法田労:いつも見ているからな、お前の事は
奉太郎(少し、暇つぶしにからかってみるか)
527: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:22:51.45 ID:5dtdEAz50
L:えっと、いつも見ていたと言うのは、どういうことですか?
法田労:言葉通りだ。 たまに朝、昼はあまり見ていないが……放課後なんかはほとんど毎日見ている。
法田労:休みの日なんかも、たまに見ている
L:あの、すいません
L:まちがっていたら、ごめんなさい
L:ストーカーさんですか?
法田労:千反田がそう思えば、そうかもな
L:ふしぎな人ですね、それよりわたしの話、きいてくれますか?
法田労:構わないが、この部屋名だと人は余り寄ってこないと思う
L:それはすこし、思っていました
L:法田労さんが、初めてでしたから
法田労:まあ、そうだろうな
法田労:それで、気になるってのは何だ?
528: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:23:17.89 ID:5dtdEAz50
L:あ、そうでした
L:気になると言っても、ちょっとちがうかもしれません
L:じつは、ですね
L:明日、その
L:友達と映画にいくのですが、時間を決めるのを忘れてしまったんです
法田労:それで?
L:どうすればいいのか、おしえてください
奉太郎「……単純に電話をすればいいだけだろう」
奉太郎「しかしなんか、悪いことをしている気分だな」
奉太郎「言い出すタイミングも……失ってしまった」
奉太郎「……ま、いいか」
529: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:23:44.14 ID:5dtdEAz50
法田労:そんなの、その友達に電話すればいいだけだろう
L:ええっとですね、そのお友達は、とても面倒くさがりな人でして
悪かったな……
L:いちど終わった話をまたしても、迷惑かとおもうんです
法田労:なるほど、面倒な友達だな、それは
L:ええ、そうなんです
こいつ、俺が聞いていないのを良い事に。
法田労:大体の時間も決めていないのか?
L:あ、それはきめています
L:朝に、そのお友達の家にうかがうことになっているんです
法田労:そうか、なら適当な時間に行けばいいんじゃないか?
法田労:あくまでも、迷惑ではない時間に
法田労:大体、そうだな……10時くらいなら迷惑ではないと思う
530: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:24:17.91 ID:5dtdEAz50
L:そうですか、ではそのくらいの時間にいくことにします
L:ありがとうございます、たすかりました
法田労:いいさ、暇だったしな
L:変わったストーカーさんですね、ふしぎなひとです
法田労:まあ、そうだな
L:あ、そうです
L:もうひとつ、聞いてもいいですか?
法田労:ああ、いいぞ
L:えっと、ですね
L:あした、お洒落して行こうとおもっているんです
L:あまり派手なのも、どうかとおもうんです
L:どのくらいが、いいんでしょうか?
531: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:24:48.59 ID:5dtdEAz50
法田労:お洒落か、別に
チャットを打つ手が止まる、続ける言葉が思いつかない。
「別にしてこなくていいさ」と打ちそうになり、ある程度消した所で誤ってエンターを押してしまった。
L:別に、なんですか?
L:あれ、います?
法田労:ああ、すまない
法田労:別に、普通でいいんじゃないか?
法田労:いつも通りで、いいと思う
L:そうですか、ではそうする事にします
法田労:ああ、それがいい
L:やはり、ふしぎな人ですね
L:わたしは、法田労さんの正体が、少し気になります
532: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:25:15.74 ID:5dtdEAz50
法田労:さあな、分からない方がいい事も世の中にはあるんだ
L:そうなんですか、それなら仕方ないですね
法田労:ああ
そこで一度、チャットが止まる。
千反田もこれ以上聞きたい事は無いだろう。
とうとう最後まで言い出すことができなかったが……まあ、いいか。
法田労:それじゃ、俺は出る
L:はい、ありがとうございました
L:明日、楽しみにしていますね、おれきさん
L:あ
《Lさんが退室しました》
533: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:25:41.64 ID:5dtdEAz50
奉太郎「……やられた」
奉太郎(あいつ、分かっていたのか……)
まあ、良くは無いが……明日の時間を決められたのは悪く無い事だ。
しかし、千反田にまんまと騙された。 俺が騙していたと思ったが、騙されていたのは俺の方だった。
電話をしてやろうかと思ったが、そこまでしなくていいだろう。 どうせ明日会う事になる。
パソコンの前からソファーに移動する。
俺は倒れこむように、ソファーに横になった。
奉太郎「……あいつは将来、入須みたいになるのではないだろうか」
奉太郎「……やっぱり、納得いかん」
もっと早く、気付くべきだった。
そうすれば俺は今日失敗をせずに済んだだろう。
534: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:26:16.71 ID:5dtdEAz50
例えば……最初の方のあれだ。
俺が確か「面倒な友達だな」 と言った時。
あいつは「ええ、そうなんです」 と言った。
俺の正体に気付いていないからあんな事を言ったのかと思ったが、その逆だろう。
千反田は俺に気付いていたから、敢えてそう言ったのだ。
いつもの千反田なら、あそこで同意は絶対にしない。 そう……絶対に。
違和感は今思い出すと他にもあった。
千反田は人を疑うことはあまりしない。 だがそれにも限度と言うものはあるだろう。
例えば見ず知らずの人間に「今日は学校、お昼からだよ」と言われても、確認くらいはするだろう。
それを今日の千反田はしなかった。 俺という見ず知らずの人間に言われているのにも関わらず。
535: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:26:42.87 ID:5dtdEAz50
俺の意見を全て受け、その通りにすると言っている。
今日初めて会った人間をそこまで信用するのも、千反田は絶対にしないだろう。
その点C組の奴は案外うまい事、千反田をはめる事ができたのかもしれない。
それらを思い出すと、やはり気付ける要素はあったのだ。 俺が千反田は気付いていないと思い込みさえしなければ。
まあそんな失敗に頭を悩ませても仕方がない。
明日は映画を見に行く事になっている、昼寝でもして体力を温存しておかなければ。
そう理由をこじ付け、俺はソファーに横になりながら瞼を閉じる。
外から聞こえてくる雨音は、俺に眠りをもたらすには十分だった。
第17話
おわり
536: ◆Oe72InN3/k 2012/09/19(水) 22:27:17.79 ID:5dtdEAz50
以上で第17話終わりとなります。
乙ありがとうございます。
537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/19(水) 22:33:12.22 ID:QySzxBOjo
乙
正直、今日もくるだろうと思ってたわww
538: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/09/19(水) 22:44:05.42 ID:urrR7B5Mo
ほんとかわいいなこいつら
539: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) 2012/09/19(水) 23:42:34.28 ID:f9kIXFH4o
おつー
>>1のエネルギー消費の多い生き方に敬礼っ
次→
奉太郎「古典部の日常」 09
- 関連記事
-
- 2012/09/20(木) 21:48:00|
- 氷菓
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
-
|
-