741: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 22:58:25.13 ID:0ZWRgRbP0
>>738
23話は投下した筈なんですけどね……見えない一話が、あるのかもしれません。
という訳で、第24話投下致します!!!!!!1!!11!!
742: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 22:59:10.60 ID:0ZWRgRbP0
結局私は、文化祭を昨日と今日……二日休みました。
もう空は暗くなっていて、縁側に座る私には夜風が少し冷たく感じられます。
庭からは鈴虫の声が聞こえて、月がとても綺麗な夜でした。
福部さんと摩耶花さん……それに折木さんからも、連絡はありませんでした。
それも、そうかもしれません。
私は差し伸べられていた手を振り払い、自分の気持ちを優先したのですから。
える「……今年の文集は、どうなっているのでしょうか」
それを古典部の方達に聞く権利は、私には無いでしょう。
そして、私はもう……古典部に顔を出すつもりも、ありませんでした。
行けばきっと、あの人に会ってしまうから。
会えばきっと、私は泣いてしまうから。
泣けばきっと、またあの人は優しい言葉を掛けてくれるから。
しかし、それは……私が学校にも行けなくなってしまいそうで。
……怖かったです。
『 奉太郎「古典部の日常」 目次 』引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346934630/
743: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 22:59:59.88 ID:0ZWRgRbP0
これからは多分、つまらない人生になるでしょう。
……ふふ、前の雛祭りの時に自分でここはつまらなくは無いと言って置きながら、こう思ってしまうので可笑しな物です。
これが、私の本心でしょうか。
駄目です……前向きに考えましょう。
この約二年間、本当に楽しかったです。
……出来れば忘れてしまいたいけど、楽しかった物は楽しかったんです。
氷菓の時もそうです。
あれは折木さんが居なければ、解決は出来なかったでしょう。
たったあれだけの事から、見事な推理を組み立ててくれたのは本当に心の底からすごいと思います。
2年F組の映画の時も、折木さんが作ったお話は……本郷さんの意思ではありませんでした。
ですが、最後には本郷さんの意思に気付き、私にチャットで教えてくれました。
……あの時確か、私は本当の事を知っていたのでは無いかと言われました。
勿論、私は知りませんでしたが……人が死ぬお話は好きでは無いと言ったときに、お前らしいと言ってくれました。
去年の文化祭の時は、私は結局……十文字事件の真相を知る事は出来ませんでした。
ですが、折木さんの意外な一面を見れた気もします。
お料理対決の時に、私のミスを助け、摩耶花さんを助ける為に大声を出していたのは今でも心に残っています。
そして、生き雛祭り。
私はてっきり、断られるかと思っていました。
しかし、折木さんはすぐに、手伝うと言ってくれて……とても嬉しかったのは記憶に新しいです。
744: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:00:25.25 ID:0ZWRgRbP0
……あれ、折木さんの事ばかりではないですか。
私の学校生活は、大分折木さんとの思い出しか無いみたいです。
……私が、忘れたいと思うのも無理はないかもしれませんね。
その時でした。
家のチャイムが鳴り、私は縁側からお客が誰か確かめます。
時刻は22時近く、普通のお客とは思えません。
こんな時間に来るなんて、誰でしょうか。
サンダルを履き、縁側から少し離れ、玄関の方を覗き込みます。
……そこに居たのは、私が一番、会いたく無かった人でした。
745: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:00:52.96 ID:0ZWRgRbP0
える「……折木、さん」
折木さんはこちらに気付いていない様で、私も敢えて気付かれる様な事はしません。
今は、話したくないからです。
……家に、戻りましょう。
折木さんが来たのには少し驚きましたが……こうして遠くから見ているだけでも、胸がチクチクと何かに突かれるような感じがします。
縁側に戻り、家の中に入ります。
折角来ていただいたのに、申し訳ありませんが……
縁側から部屋へと入り、障子に手を掛けます。
……? 何か、遠くから聞こえてきました。
外、でしょうか。
私は、半分ほど閉めた障子を再び開きます。
奉太郎「千……田……おい!」
746: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:01:22.57 ID:0ZWRgRbP0
音の原因は、折木さん……?
それからは体が勝手に、縁側から外へと動いていました。
奉太郎「千反田! 居るんだろ!」
……こんな、夜遅くに、非常識です!
迷惑です、近所迷惑です!
もう少し、マナーという物を弁えた方が良いと私は思います!
でも、でもでもでも。
える「……夜遅くに、人の家の前で叫ばないでください」
私の気持ちが、こんなに高ぶっているのは何故でしょうか。
奉太郎「……インターホンという物がお前の家では機能していなかったみたいだからな」
そんな事、ある訳無いじゃないですか、折木さん。
える「……何か、私に用でしょうか」
747: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:01:55.65 ID:0ZWRgRbP0
私が自分の気持ちを抑え、そう聞くと……折木さんは小さく答えました。
奉太郎「明日、最終日だぞ」
奉太郎「お前が何故来なくなったのかは……俺には分からないが」
胸からズキリと、音が聞こえた気がします。
奉太郎「俺はお前程……繊細じゃないしな」
奉太郎「でも、やっぱりお前が居ないと……その」
奉太郎「退屈なんだよ、面倒な事が無くて」
える「……そうですか」
える「でも、それで折木さんは良かったのでは無いですか」
える「私が居なければ、折木さんは自分のモットーを貫けるのでは無いですか」
える「ふふ、違いますか?」
そうです、そうでなければ……何故あなたは入須さんと、あそこまで仲良くしているのですか。
748: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:02:35.97 ID:0ZWRgRbP0
奉太郎「……本当に、俺が良かったと思っていると……お前は感じているのか」
える「……はい」
奉太郎「……そんな事、ある訳ないだろ」
える「……そうでしょうか?」
奉太郎「俺が、信じられないのか」
える「……」
折木さんのその言葉に、私は返事が出来ませんでした。
奉太郎「……分かった、俺はもう帰る」
奉太郎「だが」
奉太郎「明日は、来いよ」
奉太郎「来なかったら俺は、お前を許せなくなる」
奉太郎「今年は予定に変更があって午前で文化祭は終わり、午後からは通常授業だ」
奉太郎「だから、朝から必ず来い」
749: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:03:02.17 ID:0ZWRgRbP0
える「……はい、とは言えません」
奉太郎「いいさ、それはお前が決める事だ」
奉太郎「だが、さっきも言ったが」
奉太郎「俺はお前を許さない、古典部の部長を」
奉太郎「……そんな事には、なりたくないんだ」
……折木さんのせいで、行けないのに。
でも、折木さんに許されなくなってしまうのは、少し……
奉太郎「時間取らせて悪かったな、じゃあまた明日」
える「……わざわざすいませんでした、また明日」
折木さんはそう言うと、ご自宅へと帰っていきました。
750: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:03:46.23 ID:0ZWRgRbP0
一番会いたくなかったのに、話してみると意外と普通だった自分が居たかもしれません。
でも、折木さんと少しお話をしたら……今まで必死に落ち着かせようとしていた気持ちが、不思議と落ち着いていました。
……私には、やっぱり。
ですが、また前みたいな光景を見てしまったら?
また、私は苦しくなってしまうのかもしれません。
一度落ち着いた気持ちを、また崩されると言うのは……とても、辛いです。
それはもう、あの喫茶店で経験していた事でした。
でも!
751: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:04:13.83 ID:0ZWRgRbP0
……少しだけ、希望を持っても、いいのでしょうか。
また私の気持ちを崩されても、一度経験した事です……人間いつかは慣れるのではないでしょうか?
それが無理でも、あと……
あと、1回だけ。
これが最後です、これが駄目だったら……私は、もう。
……明日は、学校に行きましょう。
だって、つい私は言ってしまったのですから。
折木さんに、また明日と。
752: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:04:41.12 ID:0ZWRgRbP0
私は、翌日文化祭へと行きました。
久しぶりの部室はどこか懐かしい感じがして……つい、顔が綻んでしまいました。
迎えてくれたのは、福部さんに摩耶花さん……そして、折木さん。
三人とも、いつも通りに接してくれて、まるでこの一週間の事は無かったかの様でした。
文集の売れ行きも、去年の成果があったからでしょう。 今年も好調でした。
福部さんは委員会のお仕事で忙しそうに走り回り、摩耶花さんは折木さんと店番をしていました。
午前だけとの事は本当だった様で、ほんの二時間ほどの私の文化祭はすぐに終わってしまいます。
そして……
753: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:05:11.88 ID:0ZWRgRbP0
~3年教室~
私は扉の前に立ち、深呼吸をします。
大丈夫、大丈夫です。
ゆっくりと扉を開きました。
丁度教室から出ようとしていたのか、目的の人物は目の前に居ました。
える「……こんにちは、入須さん」
入須「千反田か、どうした急に」
える「お話があります。 お時間は大丈夫でしょうか」
入須「構わんが、ここでは出来ないのか?」
える「……ええ、付いて来てください」
私はそう告げ、古典部の部室へと向かいました。
文化祭が終わり、午後の授業に移り変わる前の休憩時間……あそこなら、既に誰も居ません。
754: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:05:43.89 ID:0ZWRgRbP0
~古典部前~
私は古典部の教室前の廊下で立ち止まり、後ろから付いて来ていた入須さんの方へと振り返りました。
入須「ここまで来なければいけなかったのか、話とは何だ?」
入須さんは私が振り向くと、目的の場所に着いたと理解したのか、話の内容を聞いてきます。
える「……折木さんの事です」
私の話の主旨を聞き、入須さんは口に指を当てると……口を開きました。
入須「彼の事か、悪いな……特にこれと言って話せる事は無い」
える「……そんな訳、無いじゃないですか」
入須「……ふむ、と言うと?」
える「私は、見ていたんです」
える「入須さんと、折木さんが一緒に遊んでいるのを」
入須「……それで?」
える「……何故、何故ですか」
える「何故、折木さんなんですか」
755: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:06:33.30 ID:0ZWRgRbP0
入須「何故……と言われてもな」
入須「……それは返答に困る」
そんな訳、無いじゃないですか。 だって……あんな楽しそうに、笑っていたじゃないですか。
える「そう、ですか」
える「では、質問を変えます」
える「……急に折木さんと仲良くした理由はなんですか」
入須「君は、面白いことを言うね」
入須「私が一人の人と仲良くするのに、理由がいるのか?」
える「あまり、仲が良い様には今まで見えなかったからです」
入須「……なるほどな」
入須「確かに、その通りだ」
える「なら、理由はなんですか」
756: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:08:30.23 ID:0ZWRgRbP0
入須「……ふむ」
入須「それに答える義務が、私にあると思うか?」
ある程度、予想は元からできていました。
私なんかではとても、入須さんと口論になったとして勝てる見込みなんて無い事を。
ですが、これだけは……この事だけは。
える「……私は」
える「……私は!」
える「折木さんの事が、好きなんです!」
私がそう言ったとき、入須さんは何故か笑った様に見えました。
私にはそれが嘲笑っているかの様に見えて……
える「もう、折木さんと一緒に居るのを……やめてください」
辛くて、ここに居るのが、辛くて。
える「……お願いです」
自分でも、とても変なお願いをしているのは分かっていました。
入須さんが、折木さんの事をもし好きだったら、私は入須さんの気持ちを踏み躙っている事となります。
それでも、私は。
757: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:08:57.97 ID:0ZWRgRbP0
入須「……今までの話を聞いて、一つ質問をしよう」
入須「君は、折木君と恋仲なのか?」
その質問に、私は……答えられません。
える「……」
入須「違うようだな」
入須「だから私はこう返す」
入須「君に、それを言う権利があるのかな?」
入須さんは私にそう告げると、私の返事を待っている様でした。
私にその質問はあまりにも重く、この場に……足で立っているのも、無理なくらいに。
最後の悪あがきに、入須さんの事を睨み、私は走って自分の教室へと向かいました。
758: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:10:07.44 ID:0ZWRgRbP0
~階段~
あまり、人が居るところには行きたくない気分でした。
人気が無い階段で、壁に寄りかかります。
える「……私では、無理でした」
入須さんは、私から話があると聞いた時点で……どんな内容か分かっていたのかもしれません。
とうとう入須さんは最後まで涼しげな表情を崩さず、私の前に立っていました。
対する私は……今にも泣き出しそうな顔をしていたのかもしれません。
なんて、惨めなんでしょうか。
それでも入須さんには言いたい事を伝えました。
そして、入須さんの言葉は……折木さんとの関係を認める物でした。
もしかしたら、折木さんは入須さんと付き合っているのかもしれません。
それを私に伝えなかったのは、入須さんの最後の情けでしょうか。
ああ……やっぱり、私は惨めです。
だって、もう泣かないと決めたのに。
何回も、何回も何回も!
759: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:10:39.81 ID:0ZWRgRbP0
気付けば、目からは涙が溢れ、顔を濡らします。
泣くつもりなんて、無かったんですよ。
本当です。
……少しの希望なんて持って、学校に来るべきでは無かったです。
そんな事を思い、涙を拭いながら階段の途中にあった窓から外を眺めました。
丁度、窓の外には一輪の花が咲いており、確か名前は……ガーベラ。
その花言葉は、辛抱強さ。
……なんて、皮肉なんでしょう。
私がどれだけ、辛抱して居たと思っているのでしょうか。 この花は。
あの花は私を貶める為に、咲いていたのかもしれませんね。
ついに私は、花にすら……嫉妬していたのでしょうか。
もう、どうでもいいです。
760: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:11:06.38 ID:0ZWRgRbP0
そんな自分が……なんだかちょっと、おかしくて。
える「ふふ」
える「……ふふ」
える「……う、うう…」
える「……うっ…ううう……!」
可笑しくて、涙が、出てきてしまいました。
一回止まったのに、可笑しなものです。
……色々と、吹っ切れました。
とりあえずは午後の授業に出ましょう。
後の事は、それから考えれば良い事です。
……そうです、そうしましょう。
それが、今私の選べる最善の選択だと……思います。
第24話
おわり
761: ◆Oe72InN3/k 2012/09/25(火) 23:12:04.26 ID:0ZWRgRbP0
以上で第24話、終わりとなります。
乙ありがとうございました。
1000行く前に終わるのか……私、気になります!
762: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/25(火) 23:13:00.45 ID:uN41GyEeo
おつー
投下の時間ですよって煽ろうと思ったらもう始まっててわろた
予告に出てきたセリフが…!
てっきりほうたるに向けられるものだとばかり思ってたわ
763: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/25(火) 23:14:36.18 ID:sSZ5X5Zm0
強く生きろよ…
えるたそ…
764: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/25(火) 23:22:37.86 ID:5nORjDJYo
乙です!
いりほーも嫌いじゃないけどこのssではえるたそに幸せになって欲しいです・・・
770: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2012/09/26(水) 00:54:54.95 ID:iFCrkabv0
まぁだ引っ張るのかよおおおお辛いおおおおおおおお
772: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:40:38.86 ID:9Mfs4qeW0
遅刻してもうた……
第25話、投下致します。
今回から奉太郎視点へと戻ります。
773: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:41:06.87 ID:9Mfs4qeW0
~古典部~
俺は、古典部の部室で一つの事を考えていた。
ここへ来た理由はなんとも情けなく、三年の先輩による使いっぱしりである。
なんでも……シャーペンを忘れたらしい。
断ろうかと思ったが、古典部の部員である俺はその先輩よりは確かに部室には入りやすい。
その先輩とは面識が無かったとは言え……仮にも先輩だ。 断るのも若干気が引けてしまったのだ。
そうして部室に来たのはいいが、半ば強制的に俺は思考する事となってしまった。
……まあ、いいが。
そして、その俺が考えている事に結論を出すには……少し、俺の記憶を巻き戻さなければならない。
あれは……確か、千反田と部室で話した後の事だった。
話の内容は、なんだっけか。 伊原と里志が揉めていたとか、そんな感じだった気がする。
だが今大事なのはそれではない、その後、俺が家に帰った後に起こった事だ。
774: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:41:32.96 ID:9Mfs4qeW0
~折木家~
奉太郎「……そりゃ、そういう顔にもなりますよ」
奉太郎「先輩が何故ここに来たのか、俺には検討も付きませんからね」
入須「ふふ、それも無理はないだろう」
入須「今日はね、一つ君に協力をしてあげようと思って来たんだよ」
怪しいな、これは……露骨に怪しい。
奉太郎「協力? また俺に探偵役でもやらせるつもりですか?」
入須「……君は随分と根に持つタイプの様だな」
そりゃ、どうも。
入須「少し、噂話を聞いてな」
入須「君の相談に乗ろうと、わざわざ足を運んだんだよ」
奉太郎「相談、ですか」
入須「ああ」
苦手な先輩が来て、非常に迷惑しています。 とでも相談してみようか。
……いや、やめておこう。
775: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:42:01.94 ID:9Mfs4qeW0
奉太郎「俺は特に、相談する様な悩みもありませんよ」
入須「そうか、なら私の勘違いだったかな」
入須「……千反田」
入須「千反田えるの事なのだが」
……こいつは、どこまで知っているんだ?
一つ、鎌でもかけてみるか。
奉太郎「ああ、あいつの事ですか」
奉太郎「確かに、それなら相談する事がありますね」
入須「……ほう、言ってみてくれ」
奉太郎「……あいつの好奇心を、どうにかする方法を教えてください」
入須「……く、あっはっは」
こうまで笑われると、俺の発言が馬鹿みたいで少し居づらいではないか。
776: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:42:28.01 ID:9Mfs4qeW0
入須「す、すまんすまん」
入須「そんな事では無いだろう、君の相談は」
奉太郎「……言って貰ってもいいですか、俺はこれでも自分の事には疎いもので」
入須「……まあ、いいか」
入須「君は、千反田の事が好きなんだろう?」
……誰から、聞いたんだ。 一体こいつはどこまで知っているんだ。
入須「誰から聞いた、と言いたそうな顔だな」
入須「だが私は口を割る気は無い」
入須「まあ、少しだけヒントをやるか……君の家に押し掛けた様な物だしな」
入須「私にそれを教えてくれたのは、総務委員会の奴だ」
入須「ま、最初そいつに問いただしたのは私だがね。 傍目から見て、もしかしたらと思ったら案の定って訳だ」
777: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:42:54.42 ID:9Mfs4qeW0
入須「ああそれと、これはヒントにならないかもしれないが」
入須「そいつはいつも、巾着袋を持っていたな」
……口が軽いにも、程があるのではないか。
よりにもよって俺が苦手な入須に、その事を言うとは。
今度、喫茶店でコーヒーを俺が飽きるまで奢ってもらおう。
奉太郎「あなたがどこから情報を得たかは分かりました」
奉太郎「それで、何を協力するって言うんですか」
入須「ほお、たったあれだけの情報で分かったのか」
奉太郎「……茶化すのはやめてもらえますか」
やはりこいつは、苦手だな。
入須「そうだな、本題に入るとするか」
入須「私は、女だ」
778: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:43:32.21 ID:9Mfs4qeW0
奉太郎「……見れば分かりますが」
俺がそう言うと、入須は少し困ったような顔をした。
入須「千反田と同じ女だ」
奉太郎「だから、見れば分かりますよ」
入須「……君には回りくどく言っても、無駄か」
入須「女の私が、君と一緒に出かけてやろう」
……頭をどこかに、ぶつけてきたのだろうか。
奉太郎「言っている意味がよく分かりませんが……俺とデートでもするつもりですか」
入須「……デートか、それとは少し違うな」
奉太郎「もっと、分かりやすく話してください」
入須「そうだな……女という物は、サプライズに弱いんだよ」
779: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:44:08.88 ID:9Mfs4qeW0
なんだなんだ、何故俺は入須とこんな話をしなければいけなくなったのだろうか。
奉太郎「そうですか、それで?」
入須「君が千反田に何かサプライズをすれば、彼女は大いに喜ぶとは思わないか」
ああ……そういう事か。
奉太郎「話の内容が見えてきました」
奉太郎「つまり、あなたはこう言いたいんですね」
奉太郎「千反田に何かプレゼントをあげ、千反田を喜ばせろ」
奉太郎「そして、そのプレゼントを女である私が選ぶのを手伝ってやる」
奉太郎「そういう事でしょうか?」
入須「……ある程度の情報が出れば、飲み込みが良くて助かるよ」
入須「そう、つまりはそういう事だ」
だが、何故急に……?
奉太郎「それをしようと思った理由は、何ですか」
780: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:44:37.72 ID:9Mfs4qeW0
入須「……これは、あまり言いふらさないでくれると助かる」
奉太郎「俺にはどこかの総務委員見たいな趣味は持ち合わせていません」
入須「ふふ、そうか」
入須「……君と、千反田には恩があるんだよ」
奉太郎「恩、ですか?」
入須「……ああ、去年の映画の事は、覚えているだろう?」
奉太郎「ええ、勿論」
入須「……私には、ああするしかなかったんだ」
入須「と言っても、信じてくれるとは思っていない」
入須「その事への、せめてもの恩返しだと思ってくれればいい」
何か少し引っかかるな……
いや、俺は入須という人物を……少し大きく見すぎていたのだろうか?
781: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:45:05.23 ID:9Mfs4qeW0
入須「これが恩になるとは、思えないがな」
そして俺は、女帝の……入須の笑顔を見てしまった。
それはいつもの入須からはとても想像ができない表情で、そんな入須をきっぱりと拒否するのも、なんだかあれだ。
最終的に千反田が喜ぶなら、まあ……いいか。
奉太郎「……分かりました」
奉太郎「入須先輩の恩返し、受け取る事にします」
入須「そうか、なら早速……明日、一度喫茶店で打ち合わせをしよう」
奉太郎「……はい」
入須「長居してすまなかったな、私はこれで帰るよ」
奉太郎「玄関くらいまでなら、送っていきますよ」
782: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:45:40.94 ID:9Mfs4qeW0
~古典部~
そうだ、あの日俺は……入須に協力して貰う事にしたんだった。
そして次の日には喫茶店で打ち合わせをして……土曜日に駅前で何が良いか話しながら店を巡っていた。
……千反田達には、バイトを始めたと嘘を言ったんだっけか。
あの入須と二人で出かけるなんて……絶対に言える訳が無い。
ましてや里志の奴、簡単に口を割りやがって。
勿論、千反田本人には当然言えなかった。
あいつの事だ、変に気になりますを出されたらアウトだからな。
次に思い出すべき事は……なんだ。
時間が無いな、急がねば。
ああ、あれだ。 その土曜日だ。
あの日は確か……喫茶店の前で、待ち合わせをしていた。
783: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:46:11.90 ID:9Mfs4qeW0
~喫茶店~
遅いな、遅いと言ってもまだ時間まで少しあるが。
それにしても……指定してきた場所が一二三とは、嫌な奴だ。
……いつまで待たせるつもりだ、そろそろ帰ろうか。
そんな事を考えながら、空を見上げた時だった。
入須「やあ、ちゃんと来たんだな」
突然、後ろから声が掛かる。
奉太郎「そりゃ、先輩にお呼ばれしたのに断る事なんて出来ませんよ」
入須「どうだかな、さて行くか」
俺はそのまま入須に付いて行き、駅前へと向かった。
道中は特にこれと言って会話は無かった、話す内容もある訳ではないのでそっちの方が俺には心地がいい。
意外と駅前から近かった様で、すぐに目的地へと到着する。
784: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:46:38.27 ID:9Mfs4qeW0
~駅前~
奉太郎「今日は、プレゼント選びでしたね」
入須「そうだ、まずはあそこへ行こうか」
そう言い、入須が指を指したのは服屋だった。
俺は特に意見も無かったので、黙ってそれに付いて行く。
入須「早速だが、君はどれが良いと思う?」
奉太郎「……と言われましても」
入須「ふふ、そうだな」
入須「これなんか、どうだろうか」
入須が手に取ったのはボーイッシュな服だった、ジーパンとシャツとパーカージャケット。
悪くは無いが……千反田のイメージでは無いだろう。
785: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:47:08.36 ID:9Mfs4qeW0
奉太郎「ちょっと、違いますかね」
入須「……そうか? 私は良いと思うんだが」
奉太郎「あの、自分の服を選んでいる訳じゃないですよね」
入須「ああ、そうか。 今日は千反田の服だったな」
……大丈夫か、こいつに任せて。
入須「それならやはり、こっちだろうな」
次に入須が手に取ったのはワンピース。
ううむ、やはり千反田にはこっちの方が似合いそうである。
奉太郎「……やはり、そっちですよね」
入須「イメージ的にな、良く似合うと思う」
だが、待てよ。
奉太郎「今更なんですが、ちょっといいですか」
入須「ん? どうした」
奉太郎「……俺、あいつの服のサイズとか知りませんよ」
786: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:47:38.96 ID:9Mfs4qeW0
俺がそう告げると、入須はこれでもかと言うほど呆れた顔をし、口を開く。
入須「君は、時々どこか抜けている所がある様だな」
入須「……場所を変えよう、頼むからしっかりしてくれ」
へいへい、すいませんでした。
心の中でしっかりと入須に謝り、俺は再びその後を付いて行く。
入須「次は、アクセサリーでも見てみるか」
そう言うや入須は既に、店の中へと入っている。
少し小走りになりながら、俺はそれに付いて行った。
入須「ふむ、色々とある様だな」
奉太郎「そうですね、どういうのがいいんですかね」
入須「基本的にはどれも嬉しい物だが……あまり重過ぎる物は駄目だな」
奉太郎「気持ち的にって事ですか」
入須「ああ、そうだ」
入須「例えば……この指輪とか」
確かにそれをプレゼントしたら、重いな。
787: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:48:05.87 ID:9Mfs4qeW0
奉太郎「……招き猫とか、どうでしょう」
入須「そんな物をプレゼントして、相手が喜ぶと君は思っているのか」
奉太郎「……いえ」
入須「なら口に出すな」
伊原よ、招き猫はプレゼントには向いてないらしいぞ。
入須「まあ、ここにある物ならどれでも嬉しいかな……私としてはだが」
入須「しかし、何より大切なのは気持ちだよ。 折木君」
奉太郎「……あなたからそんな言葉が聞けるとは思いませんでした」
入須「君は随分と私の事を勘違いしてないだろうか」
奉太郎「無いと思いますが」
788: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:48:43.04 ID:9Mfs4qeW0
入須「……まあいい」
入須「ここは候補としては、中々良さそうだな」
奉太郎「ええ、そうですね」
入須「さて、次はどこに行こうかな」
入須「適当に、周ってみる事にしよう」
その後、俺は結局夕方まで一緒に店巡りをした。
なんだかんだでプレゼントはその日、決まらなかった。
789: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:49:09.82 ID:9Mfs4qeW0
~古典部~
そう、土曜日は千反田のプレゼントを探しに行ってたんだ。
入須の意見は中々俺の参考になった。 なんと言っても俺は人の気持ちを考えない事が多々ある気がするから。
そんな俺にとって、入須の手助けは結構有難かった気がする。
……さて、まだ思い出さなければならない事はある。
あまり、思い出したく無いが……あれは。
水曜日、くらいだっただろうか。
記憶としてはこちらの方が新しいし、思い出すのに苦労はしないかもしれない。
あの日は確か……千反田が部活に来なくなって、三日目の事だったか。
……そう、あの日も千反田は部活に来なかったんだ。
790: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:50:07.17 ID:9Mfs4qeW0
~古典部(水曜日)~
にしても、なんだか今週に入ってからあいつらの様子がおかしい。
あいつらというのは勿論、古典部の部員達。
里志に関してはいつも通りに見えたが……どこか余所余所しい感じがしていた。
伊原は一向に俺と口を聞こうとしない。 全く、意味が分からない。
そして千反田……あいつが一番異常だ。
ほとんど毎日部活に出ていたのに、今週は一回たりとも来ていない。
何があったのかは分からないが、廊下等で時々……後姿は見ていた。
学校まで休んでいないと言う事は、何か忙しいのだろう。
それに口を出して問いただすことは、俺にはできない。
……家の事となってしまっては、俺にはどうしようもないからだ。
結局俺は一人で、古典部の部室で本を読むことになる。
先週は随分と入須に呼び出され、中々部活に来れなかったが……来てみればこれだ。
791: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:50:34.63 ID:9Mfs4qeW0
まあ、文集は完成した様だし、文化祭の打ち合わせにはまだ時間がある。
奉太郎「それにしても、誰も来ないとはな……」
思わず独り言が漏れてしまう。
今はまだ16時、今日は入須と予定が入っていた。
土曜日振りだったが、なんだか段々と面倒になってきてしまった。
もう俺一人でも決められる様な気がするが……折角手伝ってくれた人に対して、もういいですとは中々言えない物だ。
……最初から、自分でやればよかったか。
それにしても、する事が本当に無い。
千反田が来さえすれば、またあいつの話に付き合って時間を潰せたと言うのに。
……少し早いが、行くか。 ああ、面倒だな。
792: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:51:11.01 ID:9Mfs4qeW0
~喫茶店:歩恋兎~
入須に場所はどこにするか聞かれ、俺が指定したのはここだった。
ここの喫茶店には少し、思い入れがある。
……あいつとは色々あったが……今考える事でもないか。
それより今は、入須との話し合いをどうするか、だ。
俺は手短なテーブル席に着き、入須を待つ。
約束の時間まではまだ時間があったが、俺が席に着いて少し経った頃、入須がやってきた。
奉太郎「どうも」
入須「待たせてしまったかな」
奉太郎「いえ、俺も丁度来たところです」
入須「そうか、なら良かった」
入須「にしても、いい店だな」
入須「次の日曜日は、ここで会おう」
793: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:51:36.71 ID:9Mfs4qeW0
まだ何かの打ち合わせをする気なのか、まあ仕方ない……この計画に乗ったのは俺な訳だし
。
奉太郎「それで、今日はなんのお話ですか」
入須「特にこれと言って、内容は考えていない」
奉太郎「……帰ってもいいでしょうか」
入須「まあそう言うな、たまには少し他愛の無い会話をしたい物だ」
奉太郎「友達とでは駄目なんですか」
入須「私の心の内を話すのには、友達では少し嫌なんでな」
奉太郎「そう、ですか」
俺はそう言い、頼んでおいたブレンドに口を付ける。
結構久しぶりに飲んだが、やはりうまい。
入須「……私はね」
入須「あまり、人の心を覗くのが好きではない」
794: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:52:27.48 ID:9Mfs4qeW0
奉太郎「……それはちょっと、意外ですね」
奉太郎「試写会の時だって、俺の事を良い様に使ったじゃないですか」
入須「前にも言っただろう、あれは仕方なかったんだ」
入須「私は自分の意思で動いたのかもしれないが」
入須「同時に周りの意思でもあったのだよ」
入須「好き好んで人の心を……見たくはないさ」
その時の入須の表情は初めて見る物で、とても嘘を付いている様には見えなかった。
奉太郎「……すいません、俺は少し」
奉太郎「入須先輩の事を、勘違いしていたのかもしれません」
795: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:53:01.70 ID:9Mfs4qeW0
入須「気にするな、そう思われるのは慣れている」
奉太郎「……そうですか」
そして入須も、店に入ったときに頼んだのだろうブレンドに口を付けていた。
入須「これは、美味しいな」
奉太郎「ええ、ここのブレンドは美味しいですよ」
入須「中々に気に入ったよ」
俺からは特に話す事も無く、少しの間の沈黙。
そんな沈黙が居づらく、俺は適当に言葉を繋ぐ。
奉太郎「俺が今思っている事は、分かりますか」
入須「……そうだな、恐らく」
入須「なんでこんな面倒な事をしなければいけないのか」
入須「と言った所か?」
796: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:53:28.63 ID:9Mfs4qeW0
奉太郎「……やはり、心の内を見るのが好きな様で」
入須「……あくまで推論さ」
入須「君の今までの言動や行動から、導き出しただけの事」
入須「さっきの私の言葉は、本心だ」
奉太郎「……では、俺の本心が分かった所でどうします?」
入須「ふむ、そうだな」
入須「あまり長居する必要も無い、帰ろうか」
奉太郎「……それは、非常にいい案だと思いますよ。 先輩」
入須「つれない奴だ、全く」
797: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:54:07.15 ID:9Mfs4qeW0
~古典部~
あの時、話した喫茶店はあそこだったか。
この今考えている事が終わったら、あの喫茶店に行こう。
だがまずは、このやらなければいけないことを片付けなければ。
俺は今、この大量の記憶をひっくり返して見直す事を面倒だとは思っていなかった。
理由は……なんだろうか。
いや、それよりもまだ思い出さなければいけない事はある。
時間があまり無くなって来た様だ、次に思い出すべき事……それは。
文化祭の二日目、か。
これを思い出さない限り、俺は結論へと辿り着けないだろう。
よし、やるか。
798: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:55:14.27 ID:9Mfs4qeW0
~文化祭二日目~
昨日は結局、千反田は来なかった。
予想が出来ていなかったと言えば嘘になるが……
もう既に時刻は昼、今日もあいつは来ないだろう。
本当に、家の用事なのだろうか?
あいつはとても文化祭を楽しみにしていたし、文集にも一番力を入れていた。
そんなあいつが参加を諦めるほどの事、そんな事があったのだろうか?
一度、会う必要があるかもしれない。
まあそれは後回しにするとして、今はこの状況が気まずくて仕方が無い。
部室で一人店番、と言う訳に今年はいかず……横には伊原が居た。
奉太郎「……何か俺がしたか」
摩耶花「……」
奉太郎「……はあ」
799: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:56:13.45 ID:9Mfs4qeW0
この通り、折角俺が話しかけていると言うのに一度も返事すらしない。
入須よりこいつの方がよっぽど面倒かもしれないな……
奉太郎「ま、いいさ」
奉太郎「どうせ話してもろくな事にはならないからな」
つい、毒づいてしまった。
それにようやく伊原が反応を示したのは……少し良い事だったかもしれない。
摩耶花「……折木は」
摩耶花「折木は、何を考えているの」
俺が、何を考えているか?
奉太郎「質問の意図が分からないんだが」
摩耶花「……そう、ならいいわ」
摩耶花「もうあんたと話す事は無い」
なんなんだこいつは、意味が分からない。
だが話す事は無いと言われてしまった以上、俺も話しかける気にはならなかった。
800: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:57:04.58 ID:9Mfs4qeW0
~折木家~
今日も最後まで、千反田は来なかった。
俺は今ベッドに横たわっているが……もう少しすれば、動かなければならないだろう。
千反田の家に行き、状況を知らなければ。
……一度リビングに行き、水を飲もう。
俺はそう思い、リビングに行くと姉貴と鉢合わせになった。
供恵「あら、あんたまだ制服のままだったの?」
奉太郎「ちょっと出かけるからな」
供恵「そ」
供恵「それより、最近元気がないねー」
奉太郎「別に、普通だ」
供恵「そうかしら?」
奉太郎「……何が言いたい」
801: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:58:01.99 ID:9Mfs4qeW0
供恵「別に? 部活の子が来ないからってそこまで気を落とさなくてもいいと思ってね」
奉太郎「全く、どっから聞いたんだ……そんな話」
供恵「私にはお友達がいっぱい居るのよ、沢山」
また里志か、そういえばあいつには入須に口を割ったことを問い詰めていなかったな。
まあ、文化祭が終わってからでいいか。 何かと忙しそうだしな。
奉太郎「付き合ってる暇は無い、ちょっと出かけてくる」
供恵「はいはい、気をつけてねー」
そして俺は、千反田の家へと向かった。
802: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:58:38.69 ID:9Mfs4qeW0
着いてからインターホンをいくら鳴らしても千反田が出てこず、姉貴のせいで若干イライラしていた俺はつい大声を上げて呼び出してしまった。
結果的に、あいつが出てきたから良かったが……
しかし、どうにも様子がいつもと違っていた。
何か、あったのかもしれないが……
家から出てきたと言う事は、出れなかった訳では無い。
つまり、あいつは自分の意思で出てこなかったのだろう。
そんな事実にまた、イラついてしまい……千反田にきつい言葉を浴びせてしまった。
帰り道は酷く後悔していたのを覚えている。
803: ◆Oe72InN3/k 2012/09/26(水) 23:59:18.37 ID:9Mfs4qeW0
~古典部~
繋がった、な。
そして今も刻まれているこの記憶、これを合わせれば答えは出る。
しかし……俺は随分と馬鹿をしてしまったみたいだ。
ああ、くそ。
悩んでいても仕方が無い。 決着をつけなければ。
外の会話も、どうやら終わったらしい。
一人の廊下を走る足音が、俺の耳へと入ってくる。
それを聞いた俺は扉に手を掛けた。
その扉を開けようとした所で、向こう側から扉が開かれる。
入須「……盗み聞きとは、関心しないな」
奉太郎「……それはどうも」
奉太郎「入須先輩、少し時間を貰います」
奉太郎「終わりにしましょう、話があります」
入須「ああ、予想は出来ていた」
入須「場所を、変えようか」
第25話
おわり
804: ◆Oe72InN3/k 2012/09/27(木) 00:05:10.60 ID:Bq5OdWnm0
以上で第25話、終わりとなります。
乙ありがとうございました。
805: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/27(木) 00:05:36.16 ID:Cj5H6NBD0
乙です
うわぁぁ
わたし気になります!!!
806: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/27(木) 00:06:06.61 ID:enaUgvi90
乙です
ほうちゃんたら聴いてたのかよ
807: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/27(木) 00:08:21.29 ID:SWqf8A840
続きが、気になります!
813: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/09/27(木) 19:54:31.44 ID:Dy+a38ru0
>>1よ。このSSは奉えるHAPPY ENDで終わるんだよな?(釘バット握りしめながら・・・)
814: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/27(木) 20:25:15.32 ID:enaUgvi90
アンハッピーなほろ苦エンドでも私は一向に…
- 関連記事
-
- 2012/09/27(木) 21:40:00|
- 氷菓
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
-
|
-