96: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:21:44.39 ID:glc2EIhw0
こんばんは、第3話投下致します。
>>86
参考画像ですか、今度絵でも書いてみましょう。
私、結構絵には自信があるんだす
97: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:22:18.22 ID:glc2EIhw0
里志「と言う訳で、そろそろ始めようか」
……とても面倒くさかったが、始まってしまった物は仕方ないか。
まあ、それはそうと里志のルール説明を理解しなければ。
里志「じゃあチーム毎に分かれて、10分後に始めよう」
奉太郎「ああ」
摩耶花「そうね、分かった」
える「ええ……! 負けませんよ!」
千反田はやけに張り切っている様だったが、今は敵だ……倒さねばなるまい。
というか、こいつは前に食べ物を粗末にするなという様な事を言っていた気がする。
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349003727/
98: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:22:49.95 ID:glc2EIhw0
奉太郎「そういえば、千反田」
える「へ? は、はい」
気合を入れていた所に、唐突に俺が話しかけたせいで変な声が出ていた。
奉太郎「この豆まきは、食べ物を粗末の内に入らないのか」
える「まさか、捨てる筈ありません」
奉太郎「……食べるのか」
える「いえ、それはちょっと、衛生上あれなので」
える「私の家には鳩がよく来るので、あげようかと思っています」
奉太郎「なるほど、それなら問題無いか」
える「心置きなく、投げてくださいね」
100: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:23:11.43 ID:glc2EIhw0
……それはどうかと思うが、問題は無いらしい。
そして俺達は二つに分かれる。
俺は伊原と共に、台所へと向かった。
千反田と里志は恐らく、あの氷菓の時に使った部屋に行っただろう。
奉太郎「お前と一緒のチームになったのは不服だが」
奉太郎「やるからには負けたくないな」
摩耶花「ちょっと、もうちょっとやる気が出そうな台詞とか無いの?」
やる気が出そうな台詞……
奉太郎「……頑張ろう」
摩耶花「……はぁ」
101: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:23:41.92 ID:glc2EIhw0
どうにも上手く行きそうに無いが、勝算はあった。
それよりルールを確認しよう。
確か、里志の説明によると……
里志『一人に割り与えられる体力は5』
里志『そして、一人の弾の数……ここだと豆の数だね』
里志『それはこの皿に乗っているのを半分にしよう』
里志『一度使った豆を拾って再利用は認めない』
里志『場所は千反田邸、全て』
里志『体力が無くなったら自己申告で頼むよ』
里志『それと、自分を倒した相手に手持ちの豆は全て渡す事』
里志『そうしないと、全部使い切ってしまう場合もあるからね』
里志『どちらか片方のチームが全滅したら残った片方のチームが勝ち』
里志『景品とかは無いけど……楽しんでやろうか』
との事らしい。
102: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:24:11.59 ID:glc2EIhw0
なるほど、確かにこれはやりがいがある豆まき……もとい豆の投げ合いである。
そして俺達に割り当てられた豆の数は20。
一人当たり10個と言った所だ。
奉太郎「伊原、準備はいいか」
摩耶花「抜かり無いわ」
摩耶花「……それにしても、ありなのかなぁ」
奉太郎「ルール違反ではないさ、そうだろ?」
摩耶花「まあ……そうだけど」
奉太郎「なら問題無い」
奉太郎「里志は俺達を甘く見過ぎていただけって事だ」
103: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:24:40.26 ID:glc2EIhw0
~える/里志~
里志「と、ホータロー達は考えている頃だろうね」
える「ええと……つまり、どういう事ですか?」
里志「このルールにはね、穴があるんだよ」
える「……折木さん達は、それに気付いていると言う事ですか」
里志「その通り、摩耶花だけならまだしも……ホータローが居るとなるとね」
里志「まず、間違いなく気付いていると思う」
福部さんが発表したルールの抜け穴……なんでしょうか?
える「す、すいません」
える「その抜け道を、教えて欲しいです」
える「私、さっきから気になってしまって」
104: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:25:17.07 ID:glc2EIhw0
里志「気になりますって奴かな」
える「ええ、その通りです」
私がそう伝えると、福部さんは特に焦らす事も無く、教えてくれました。
里志「……体力が0になった人の扱いさ」
える「え? それはつまり……どういう事でしょうか」
里志「このルールだとね」
里志「体力が0になった人はどうなるか……と言うのを決めていないんだよ」
里志「つまり……体力が無くなっても、離脱はしなくてもいいんだ」
里志「体力は無くなっても、攻撃が出来る」
里志「勿論それは、相方から豆を分けて貰ってからだけどね」
105: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:25:43.52 ID:glc2EIhw0
える「え、そんなの反則ですよ!」
里志「はは、そう思うのも仕方ない」
里志「でもね」
里志「ルールで縛られていない以上、可能なのさ」
……納得、できませんが。
それでも確かに、ルールを決めた福部さんが言うのなら……そうなのかもしれません。
でも。
える「……ずるいですよ、福部さん」
える「そんなルールでやるなんて、ずるいです」
106: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:26:11.71 ID:glc2EIhw0
里志「うーん……千反田さんにそう言われちゃうと、参っちゃうな」
里志「でもさ、ホータロー達もこれには気付いているんだよ?」
里志「なら別に、フェアじゃないって事は無いと思うけどな」
……それもまた、言えているかもしれません。
える「……分かりました、ですが」
える「折木さん達も気づいているのなら、私達が有利という事も無いですよね」
里志「果たしてそうかな」
何やら、考えがあるのでしょうか。
里志「例え体力が0になっても動けると言っても……二人同時に倒されてしまっては意味がないんだよ」
あ、それには気付きませんでした。
える「なるほど……」
そう言い、私が腕を組んでいると……福部さんが再び口を開きました。
107: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:26:50.42 ID:glc2EIhw0
里志「……なんだか、千反田さんを見ているとホータローを見ている気分になるよ」
える「え? どういう意味でしょうか」
里志「その腕を組んだりする癖、そっくりだ」
わ、私はそんなつもりは無かったのですが……
少し、恥ずかしくなり腕を組むのをやめました。
える「そ、そんな事は無いですよ」
える「それより、作戦を考えましょう!」
里志「はは、分かった」
里志「あまり時間も無いし、簡単に伝えるよ」
里志「実はもう、大体考えてあるんだ」
福部さんはそう言うと、少し声を小さくして作戦を私に教えてくれました。
なるほど、確かに理に適っています。
108: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:27:17.06 ID:glc2EIhw0
~奉太郎/摩耶花~
奉太郎「さて、どう出るか」
摩耶花「ふくちゃんの性格だと……様子見、かな」
奉太郎「……俺もそう思う」
開始までは後5分も無い、俺達が取るべき行動は……
奉太郎「なるべく二人で一緒に行動は避けたいが……そうもいかないな」
摩耶花「どうして?」
奉太郎「俺達はこの家の構造を把握していないからだ」
奉太郎「向こうには千反田が居るんだぞ」
摩耶花「あ、そっか」
摩耶花「ばらばらに行動したら、ちーちゃんの攻撃を避けられないって事ね」
奉太郎「そう言う事だ」
109: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:27:51.18 ID:glc2EIhw0
二人で動けば一見……攻撃される確率が高まる様に見える。
しかし、全ての構造が分かっていない場所では話が少し変わる。
更には敵側には一人、構造を完璧に把握している人物がいるのだ。
なら行動を共にして、視野を広く持った方が安全だろう。
奉太郎「まずは様子を見よう、あいつらは多分……ばらばらで来るからな」
摩耶花「分かったわ」
奉太郎「危険なのは里志だ、あいつの考えている事は時々わからん」
摩耶花「でも、ちーちゃんも結構危険よね」
奉太郎「……ああ」
摩耶花「……勝てる見込みが、無いんだけど」
110: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:28:19.87 ID:glc2EIhw0
奉太郎「やれるだけはやるさ」
摩耶花「あんた、珍しくやる気ね」
……確かに、言われてみればこの豆合戦を楽しんでいる俺がいた。
まあ、やらなくても良かった事なのは事実だが……やるからには、やはり負けたくは無い。
奉太郎「かもな、だが」
奉太郎「勝算は、あるだろ」
摩耶花「……そうね」
作戦は大体さっき話してある。
うまく行けば、負ける事は無いだろう。
さてと、そろそろスタートか。
まずは、廊下の様子を見る事にしよう。
111: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:28:45.57 ID:glc2EIhw0
~える/里志~
える「先手必勝、ですか」
福部さんが考えた作戦は、意外な物でした。
里志「そう、別に始まるまでここに居なきゃいけない理由は無いからね」
里志「ホータロー達が行ったのは台所だから、そのすぐ傍で待ち構える」
里志「僕が最初に突っ込むから、千反田さんは裏に回ってくれないかな?」
える「分かりました、挟み撃ちですね」
里志「うん、その通りだ」
里志「と言っても、中々相手も手強いからね」
里志「いきなり倒されたら豆が一気に10個も減ってしまう」
里志「それだけは気をつけてね」
112: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:29:12.50 ID:glc2EIhw0
そうでした、倒されたら豆を全て渡さなければいけないのでした。
単純に考えれば、私達の手持ちの豆が半分になってしまうと言う事です。
それに加えて、折木さん達の豆が増えるという事にも繋がります。
……気をつけましょう。
える「分かりました、任せてください」
える「この家は、私の家なので」
里志「頼もしい言葉だね」
里志「さて、そろそろ始まるから移動しようか」
里志「先手必勝、ホータロー達には悪いけど」
える「勝たせてもらう、という奴ですね」
里志「はは、本当に頼もしい」
113: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:29:38.52 ID:glc2EIhw0
福部さんはそう言いながら、廊下へと出ます。
私は反対側に行き、台所の裏手へと回りこみました。
こちら側の廊下からは、少し中が覗ける様になっています。
折木さんと摩耶花さんは何やら話している様子でしたが……しっかりとは聞こえませんでした。
そして時計に目を移すと、間もなく始まる時間を指す所です。
時計が……12を指し、豆まきがスタートしました。
……折木さん達はどうやら、最初は慎重に行く様ですね。
あ、折木さんが廊下に繋がる扉に手を掛けました。
駄目です!
そちらには、福部さんが!
……い、いえ。
今は敵なのでした、折木さんは倒さなければいけないんです。
私は、私のすべき事をするのです!
114: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:30:18.04 ID:glc2EIhw0
~奉太郎/摩耶花~
廊下に顔だけを出した俺に、最初に目に映ったのは里志の姿だった。
直後、飛んでくる豆。
その豆は見事に俺の額へと命中した。
奉太郎「いてっ!」
あいつ、全力で投げやがった。
豆もここまで本気で投げられると随分と痛い。
しかし、それに怯んでいては第二、第三の攻撃が来るのは想像に難くないだろう。
奉太郎「伊原! 逃げろ!」
台所の中に居た伊原に向け、声を発する。
その直後に、再び飛んでくる豆をなんとか避ける。
それと同時に俺も台所の中に避難し、伊原と一緒に裏手の扉から廊下に飛び出た。
……だが。
115: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:31:07.30 ID:glc2EIhw0
える「待ってましたよ、お二人とも」
それすらも読まれていた。
前には千反田、後ろは行き止まり。
そして俺達が来た方向からは里志が追っかけてきているだろう。
千反田はそのまま投げる格好をし、豆を投げてきた……と言うよりは、放ってきた。
俺はそれをなんなく避ける、避けたはいいが……
放られた豆は、一つではなかった。
千反田は豆を3つ、投げていたのだ。
1個は床に落ち、2個は伊原へと命中する。
116: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:31:37.90 ID:glc2EIhw0
える「あ、ご、ごめんなさい」
そう謝っているこいつは、とても申し訳無さそうな顔をしていた。
隙だらけではあるが……片方だけ倒してしまっても仕方ない。
いや、むしろ片方だけ倒してしまったらそれこそ不利になってしまう。
……そのルールの穴に、里志と千反田も気付いていての別行動だろう。
だが削っておく分には問題無いだろう……とりあえず一つ、千反田の頭へ向かって投げた。
俺が投げた豆は、千反田の頭に当たり跳ね返る。
える「い、痛いです……」
117: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:32:04.81 ID:glc2EIhw0
奉太郎「わ、悪い」
しまった、俺もつい謝ってしまった。
なんだこれは、謝りながら相手に豆をぶつけるゲームだったか。
摩耶花「何謝ってるのよ! 行くわよ!」
伊原はそう言うと、頭を抑えている千反田の横を通り抜ける。
俺は少しの後ろめたさを感じながら、それに付いて行った。
118: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:32:32.82 ID:glc2EIhw0
~える/里志~
や、やられてしまいました。
つい謝ってしまったせいで、お二人とも逃がしてしまいました。
福部さんに何と言えばいいのか……分かりません。
で、ですが! まだ勝負は始まったばかりです!
里志「はは、やっぱり逃がしちゃったか」
福部さんはそう言いながら、台所から出てきました。
える「……ごめんなさい、摩耶花さんに二つ当てたのですが、つい謝ってしまいまして」
里志「いいさ、千反田さんらしいじゃないか」
里志「それに、計算外って訳でもないしね」
119: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:33:06.04 ID:glc2EIhw0
える「そ、そうですか」
える「では、次の作戦があるんですね?」
里志「勿論」
里志「千反田さん、ホータロー達が逃げて行った先には何があるんだい?」
える「ええっと」
える「まず最初にあるのがお風呂ですね」
える「次にそのまま真っ直ぐ進めば客室が左右にあります」
える「突き当たりには物置部屋もありますね」
里志「ず、随分と部屋が多いんだね」
そうでしょうか? 確かに少し多いのかもしれませんが……そこまで驚く事でも無いと思います。
120: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:33:36.29 ID:glc2EIhw0
里志「ま、なんにせよ」
里志「好都合だよ」
える「……どういう意味ですか?」
里志「つまりホータロー達はその部屋の内のどれかに居るって事でしょ?」
里志「なら、ここより前の部屋に行くにはここを通るしかない」
里志「……分かるかな」
える「なるほど、と言う事は」
える「袋の鼠、と言う訳ですね」
里志「そう、ホータロー達はもう逃げ場が無い」
里志「片方はここで待機して、もう片方はしらみ潰しに部屋を探す」
里志「それで僕達の勝ちさ」
121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/10/04(木) 23:34:04.90 ID:glc2EIhw0
える「分かりました!」
里志「部屋を探すのは僕がやるよ」
里志「千反田さんは今度こそ、宜しくね」
える「はい、任せてください」
今度は絶対に、逃がしません!
里志「はは、張り切ってるね」
里志「じゃあそんな千反田さんに取って置きの技を教えておくよ」
取って置きの技……なんでしょうか?
福部さんは少し声のトーンを落とし、私にその技を教えてくれました。
……やっぱり福部さんは少し、ずるいです。
でも、これを使えば確かになんとかなるかもです。
……私、頑張ります!
122: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:34:46.79 ID:glc2EIhw0
残り体力/所持豆数
奉太郎:残り体力4/豆の数9
摩耶花:残り体力3/豆の数10
里志:残り体力5/豆の数8
える:残り体力4/豆の数7
第3話
おわり
123: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:35:21.57 ID:glc2EIhw0
以上で第3話、終わりとなります。
乙ありがとうございました。
124: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:37:27.37 ID:glc2EIhw0
そして秋の夜長に一つ短編でも投下致します。
書きながらになるので少し、投下遅いですが……良ければお付き合いください。
*古典部の日常とは無関係となります。
タイトル
える「お久しぶりです」
126: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:39:22.05 ID:glc2EIhw0
奉太郎「そうだな」
える「一年ぶりですからね」
奉太郎「大人になったしな、仕事がどうにも忙しい」
える「ふふ、高校の時からは考えられない台詞ですね」
奉太郎「……だな」
える「この縁側でお話をしていると、丁度10年前を思い出します」
奉太郎「……10年前となると、高校三年の時か」
127: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:41:02.88 ID:glc2EIhw0
える「ええ、あの日も確か……今日の様な月が綺麗な日だったのを覚えています」
奉太郎「秋で縁側……あれか」
える「思い出しましたか?」
奉太郎「……いい思い出では無い、かな」
える「……そうですか」
える「あの日は確か、私に用があると言って家まで来てくれたんでしたよね」
奉太郎「そうだったかな」
128: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:42:22.30 ID:glc2EIhw0
える「そうですよ」
奉太郎「……お前がそう言うなら、そうなんだろうな」
える「ふふ」
える「用事は確か、告白でしたね」
奉太郎「……そうだな」
える「この縁側で、私は好きだと言われました」
奉太郎「……ああ」
129: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:43:26.01 ID:glc2EIhw0
える「あの時は、とても驚きましたよ」
奉太郎「なあ、もうやめないか」
える「いいえ、思い出に浸りたい気分なんですよ」
奉太郎「……」
奉太郎「お前の返事は……」
奉太郎「許婚が居る、って返事だったな」
130: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:44:55.18 ID:glc2EIhw0
える「……覚えているじゃないですか」
奉太郎「……そうだな」
右後ろから、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
奉太郎「呼ばれているぞ」
える「……その様ですね」
える「では少し、席を外しますね」
奉太郎「……ああ」
131: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:45:55.40 ID:glc2EIhw0
える「戻りました」
奉太郎「早いな……って」
奉太郎「連れてきたのか、その子」
える「ええ、月を少しみせたくて」
奉太郎「……そうか」
える「……私には」
132: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:47:11.86 ID:glc2EIhw0
える「旦那さんが居ないこの家は、少し広すぎます」
奉太郎「……そうだろうな」
える「……一人で子育ては、中々大変ですよ」
奉太郎「……そう、だろうな」
える「辛い時も、ありますよ」
奉太郎「……そうか」
133: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:48:26.99 ID:glc2EIhw0
える「ふふ、そればっかりですね。 さっきから」
奉太郎「……悪かったな」
える「今日の月は、今までの中で一番綺麗かもですね」
奉太郎「ああ」
奉太郎「っと、もうこんな時間か」
える「また、お仕事ですか」
奉太郎「まあ、忙しいからな」
134: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:49:44.80 ID:glc2EIhw0
える「次に神山市に戻ってくるのは、いつですか?」
奉太郎「多分また、一年後だろう」
える「そうですか、ではまた一年後に会いましょうか」
奉太郎「……俺は」
奉太郎「俺は、いいのかな」
える「何がですか?」
奉太郎「お前に顔を合わせる権利が、俺にあるのか」
135: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:50:57.85 ID:glc2EIhw0
える「……ありますよ」
奉太郎「悪い事をしているようで、気が気じゃないんだよ」
える「そんな事……無いです」
奉太郎「……そうか」
奉太郎「……すまんな、そろそろ行くよ」
える「ええ、お仕事頑張ってくださいね」
奉太郎「ぼちぼちな」
136: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:52:08.35 ID:glc2EIhw0
俺はそう言い、その家から出て行く。
次に会うのは一年後か。
そういえば今年は、里志と伊原……今は二人とも福部か。
あいつらに挨拶をできなかったな。
……まあ、来年でいいか。
137: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:54:00.32 ID:glc2EIhw0
この俺の適当さが、今の状態になっているのかもしれない。
まあそれも、全て俺への罰なのかもしれないが。
怠惰が過ぎると、随分と痛い目を見る事になると今更ながら理解する。
とにかく、これで神山市にはしばらく帰って来れない。
また昔みたいに、四人で遊びたいが……そうもいかないな。
138: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:56:36.45 ID:glc2EIhw0
……仕事、頑張らないとな。
俺は少々の名残惜しさを残し、神山市を後にする。
今まで怠けていた分、体を動かさないとどうにかなってしまいそうだ。
車で何日か掛けて、遠い地へと向かう。
今日は本当に、月が綺麗だ。
あいつと、その子供の為にも……頑張るか。
大好きな嫁と、俺の子供の為にも。
おわり
139: ◆Oe72InN3/k 2012/10/04(木) 23:57:41.06 ID:glc2EIhw0
以上で終わりです。
ありがとうございます。
141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) 2012/10/05(金) 00:14:00.06 ID:oXu2hHDi0
乙です。
短編が気になります!! 振られた後の話かと思ったら、逆ですか?? しかし、一年に一回しか会えないとは。。
豆まき??も意外と少ない弾数で、無駄には出来ないんですね。今回は里志が以外に策士ですね。次回が楽しみです。
142: ◆Oe72InN3/k 2012/10/05(金) 00:27:23.65 ID:uLs9XbhC0
>>141
結婚した後のお話になります。
ほうたるも頑張っているので、いつか仕事がひと段落し、毎日幸せに暮らせるでしょう。
そして、えるたそとその子供の気になる事を解決する日常がきっと……
ここまで私の様に妄想できたら仲間です。
143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/05(金) 09:04:31.78 ID:TsbEUKV00
乙!
次回も…気になります!
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) 2012/10/05(金) 12:08:57.07 ID:tIp+PjQAO
えるたそに許嫁がいるって言われた後に、どうやって結婚まで持っていったのか、私、気になります!
146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/05(金) 13:02:55.10 ID:cd9/GnE00
>>145
計算能力が高い奉太郎の事だから軽~くI先輩やT先輩を脅はk…ゲフンゲフン、協力してもらうんじゃない?
「先輩に『結構頭がいい後輩に協力してもらった。』と奉太郎のいい噂を広げるよう頼む。」→先輩の両親も耳に入れる→千反田家に圧力。みたいなルートで。
ついでにえるも十文字さんに相談&十文字事件の真相の話をすれば、千反田家包囲網があっという間に…。
150: ◆Oe72InN3/k 2012/10/05(金) 20:43:21.34 ID:uLs9XbhC0
152: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/05(金) 20:53:37.80 ID:TsbEUKV00
狂気を感じる
153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2012/10/05(金) 20:58:03.97 ID:bpnVKWiA0
ふぇぇ…怖いよぅ…
156: ◆Oe72InN3/k 2012/10/05(金) 21:51:29.59 ID:uLs9XbhC0
これでも必死に書いたんですよ……
一応明日か明後日に、次のお話投下できると思います。
159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/05(金) 22:04:22.89 ID:WEjjmvSEo
ひっ・・・し・・・?
160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) 2012/10/05(金) 22:47:57.50 ID:GQwq49mOo
私、結構絵には自信があるんだす(キリッ
163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/06(土) 07:50:53.45 ID:3KL6lBAo0
絵に自信があるって言葉に騙されたwwwwwwww
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- 2012/10/06(土) 21:47:12|
- 氷菓
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