165: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:38:58.47 ID:ez1jU9OO0
こんばんは。
>>161
血じゃなくてシュシュですよ。
>>162
いいヒロインになれると思います。
それでは第4話、投下致します。
166: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:39:44.01 ID:ez1jU9OO0
~奉太郎/摩耶花~
俺達が逃げ込んだのは、一番奥の物置小屋だった。
薄暗く、あまり広いとは言えない。
しかし幸いにも、引き戸であった。
少しだけ扉を開き、外の様子を伺う。
奉太郎「……何か、話し合っているな」
摩耶花「多分、二手に分かれようとかそんな感じでしょうね」
奉太郎「だろうな」
さて、どうするか。
このままではいずれ、俺と伊原は見つかってそのまま負けてしまう。
……今のこの状況を、どうにか打破しなければいけないのだ。
奉太郎「俺達も、二手に分かれよう」
摩耶花「でもそれは、最初に駄目って言ってなかった?」
奉太郎「状況が変わった、そうしなければ負けるぞ」
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349003727/
167: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:40:56.85 ID:ez1jU9OO0
摩耶花「……分かった」
摩耶花「って言っても、どうやって分かれるの?」
伊原の疑問はもっともだった。
確かにこの物置部屋の中だけで、分かれるとはいかないだろうから。
奉太郎「恐らく片方……里志が部屋の捜索に刈り出るだろう」
奉太郎「この物置から一番近い部屋に入った瞬間、俺が外に出る」
摩耶花「……なるほど」
摩耶花「それで、ふくちゃんを挟み撃ちって事ね」
奉太郎「それは俺が千反田を倒せた時、だな」
奉太郎「しかし俺が考えているのは少し違う」
摩耶花「……つまり?」
168: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:41:29.31 ID:ez1jU9OO0
奉太郎「なんとか千反田の所を突破する」
奉太郎「そうした方が、勝算はあるだろ」
奉太郎「豆のぶつけ合いになってしまっては、俺達の体力は少し心許ない」
摩耶花「確かにそれはそうだけど……うまくいくの?」
奉太郎「さあな、やってみなければ分からん」
成功率は五分と言った所か。
奉太郎「ああ、それと」
俺は伊原に少しばかりの作戦を提案した。
摩耶花「……おっけー」
それに伊原は乗る、奥の手もあるが……まだ使う時では無いか。
外の様子を見ると、里志は丁度一番近い部屋に入る所だった。
……よし、行くか。
169: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:42:31.51 ID:ez1jU9OO0
勢い良く扉を開け、そのまま走る。
千反田は一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに俺に向かって豆を1つ投げてきた。
それを避けつつ、千反田に迫る。
近づく前に、千反田に向かって豆を5個同時に投げる。
える「きゃ!」
千反田の短い悲鳴は、俺の豆のいくつかが命中した事を告げていた。
1……2……2個か。
さっきの対峙で、俺は1つぶつけている……つまり。
千反田の体力は、残り2か。
俺はすぐに千反田を倒すべく、投げる構えをした。
ここで千反田を倒せれば、里志を挟み撃ちにできる……それは多分、最善の成功例だろう。
しかし、その直後……俺の動きを止める出来事が起きてしまった。
170: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:42:59.39 ID:ez1jU9OO0
える「ご、ごめんなさい」
千反田が……しゃがみ込んでしまったのだ。
える「わ、私……折木さんと敵は、嫌なんです」
える「もう、やめてください……」
奉太郎「……わ、悪い」
える「……いえ、大丈夫ですよ」
奉太郎「……すまなかったな」
える「あ、あの」
える「ちょっと、いいですか」
そう言い、千反田は俺の顔を見てくる。
……少しだけ違和感を感じたが、特に気にする事も無くそのまま千反田へと近づいて行った。
171: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:43:25.72 ID:ez1jU9OO0
奉太郎「どうした」
える「ごめんなさい!」
千反田はそう言い、俺に豆を3つ放ってきた。
……くそ、やられた。
まさか千反田がこんな行動をするとは、全く予想していなかった。
近づきすぎていた俺に、その豆を避ける暇は無く、全てが命中する。
奉太郎「……」
える「こ、これは福部さんに教えてもらった事なので……」
若干の冷や汗を流しながら、千反田は必死に言い訳をしていた。
そんな千反田に向かって、俺は片手に持っていた約10個の豆を全て千反田に投げつける。
投げつけると言っても、さすがに本気でぶつけたりはしないが。
無音で豆達が千反田にぶつかり、床へと落ちて行った。
172: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:43:52.06 ID:ez1jU9OO0
える「……ぶつけすぎです」
奉太郎「……そうでもないな」
なんにせよ、これで千反田の体力は0となった筈。
奉太郎「さて、手持ちの豆を渡してもらおうか」
える「えっと、それなんですが」
その時、俺の後ろから声が掛かる。
里志「どうやら、同じ事を考えていたみたいだね」
奉太郎「……そういう事か」
里志「千反田さんはもう、豆を持っていないよ」
里志「4つを残して、僕に全て渡していたからね」
里志「丁度ホータローを倒せる数、渡していたんだけどね」
里志「そこまでうまくはいかなかったみたいだ」
奉太郎「……なるほど」
奉太郎「それに同じ事、と言うと」
その俺の言葉を聞いていたのか、伊原が里志の後ろから顔を出した。
173: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:44:26.57 ID:ez1jU9OO0
摩耶花「……ごめん、やられちゃった」
奉太郎「気にするな、こうなるかもしれないとは思っていた」
里志「……さすがだね」
里志「でもまさか、摩耶花の手持ちを全部ホータローが持っていたのは予想できなかったなぁ」
そう、俺は伊原の豆全てを渡してもらっていたのだ。
奉太郎「このまま一騎打ちと行きたい所だが……」
奉太郎「一旦退かせて貰おう」
俺はそう告げると、その場を走り去る。
……少し、面倒な事になってしまったな。
残り体力/所持豆数
奉太郎:残り体力1/豆の数4
摩耶花:残り体力0/豆の数0
里志:残り体力5/豆の数8
える:残り体力0/豆の数0
174: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:44:55.23 ID:ez1jU9OO0
~える/里志~
折木さんにまたしても、やられてしまいました。
それに結局、逃げられてしまいます。
える「ふ、福部さん! 早く追いかけないと!」
私がそう言うと、福部さんはいつもの笑顔からもう少しだけ笑い、答えました。
里志「まあまあ、慌てないで」
里志「……落ちてる豆を、数えよう」
える「そんな事してどうするんですか?」
里志「ホータローの手持ちの豆の数が分かる」
里志「場合によっちゃ、わざわざ見つけ出さなくても僕達の勝ちさ」
そう言うと、福部さんは廊下に散らばった豆を数え始めました。
5分ほど豆を数え、私の方に向き直り、口を開きます。
175: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:45:21.97 ID:ez1jU9OO0
里志「やっぱりね」
里志「僕達の勝ちだ」
える「……どういう意味ですか?」
里志「千反田さんの周りに落ちている豆は15個」
里志「今まで投げられた豆を計算すると……」
里志「ホータローの手持ちは4個なんだよ」
える「ええっと……あ!」
える「福部さんの体力は5、ですよね」
里志「そういう事さ」
里志「全ての豆をぶつけられても、負けはありえない」
なるほど……確かに、豆の数を数えたのは正解でした。
やはり、福部さんも中々に手強い方です。
味方となれたのは、良かったかもしれません。
里志「それと、一つお願いがあるんだけど……いいかな」
176: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:46:15.36 ID:ez1jU9OO0
える「はい? なんでしょうか」
里志「最後は一対一で、話がしたいんだ」
里志「だから、千反田さんはそのまま豆を持たなくてもいいかな」
える「……ええ、勿論いいですよ」
える「ここまで追い詰められたのも、福部さんのおかげですから」
里志「はは、千反田さんも中々の名演技だったよ」
える「え、ええと」
える「……実は少し、本心でした」
里志「……やっぱり、千反田さんは千反田さんだ」
里志「さて、と」
里志「そろそろ決着を、付けにいこうか」
える「ええ、そうですね」
そういえば、先ほどから摩耶花さんの姿が見えません。
……ですが、合流されても問題は無いでしょう。
折木さん達が持っている豆を全て、福部さんに当てたとしても……福部さんが全て外さない限り、私達の勝ちです。
……折木さんに勝負事で勝てると言うのは、少し気分がいいかもしれません。
177: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:46:46.96 ID:ez1jU9OO0
~奉太郎/摩耶花~
さて、向こうも気付いた頃か。
だが全ての豆を避けるのは中々難しい、それに加えうまくやったとしても引き分けがいい所だろう。
……まあそれも、俺は分かっていた事なのだが。
奉太郎「どうするか」
摩耶花「どうするかじゃないでしょ、あんたがあんなに豆を使わなければこんな事にはならなかったのに」
奉太郎「ま、そうだな」
摩耶花「それで、どうするのよ」
奉太郎「……伊原」
奉太郎「お前はこの勝負、どうなると思う?」
摩耶花「どうって言われても」
摩耶花「負けか、あるいは引き分け」
摩耶花「……それと」
178: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:47:15.47 ID:ez1jU9OO0
そこで伊原は一旦言葉を区切り、いかにも悪そうな笑顔をする。
摩耶花「私達の勝ち、かな」
奉太郎「そうだな、それしかない」
奉太郎「……準備は、出来てるか」
摩耶花「勿論、その為にわざわざここまで来たのよ」
奉太郎「なら、そろそろ行くか」
摩耶花「……そうね」
タイミング良く、居間の外から里志の声が聞こえてきた。
それはどうやら、俺に諦めろと説くような内容であった。
……あいつらしいと言えば、そうかもしれない。
里志「ホータロー、そろそろ諦めたらどうだいー?」
声が近くなる。
恐らくもう、目と鼻の先に里志と千反田は居るだろう。
俺はゆっくりと立ち上がり、廊下へと続く扉を開く。
そのまま廊下に出て、声の方を見据える。
179: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:47:42.66 ID:ez1jU9OO0
奉太郎「どういう意味だ、里志」
里志「自分で気付いていなかったのかい?」
里志「……少し気になるけど、まあいっか」
里志「僕はまだ、体力が5あるんだよ」
里志「豆の数は8個、言ってる意味は分かるよね」
奉太郎「……はあ」
奉太郎「それに気付かない事を祈っていたんだがな」
奉太郎「……くそ」
俺は右の拳を握り締める。
里志「何年友達をやっていると思っているんだい」
里志「そのくらい、すぐに気付くよ」
奉太郎「そうか、どうやらこの勝負」
奉太郎「俺達の負けみたいだな」
里志「……うん、そうみたいだ」
里志にはそのまま俺に、豆をぶつけると言う手段も取れただろう。
しかし、里志は手に持っていた豆を一つ……廊下に落とす。
180: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:48:45.24 ID:ez1jU9OO0
里志「僕はね」
里志「無理にホータローに豆をぶつける趣味は無いんだ」
奉太郎「……なるほど」
奉太郎「つまりお互い豆を落として、終わりにしようと言う事か」
里志「察しが良くて助かるよ、その通りだ」
……悪い案では無い、俺も別に豆をぶつけられたい訳じゃないしな。
俺は言葉を返す変わりに、一つ豆を捨てる。
それを見た里志は、いつもより更に口角を引き上げて、もう一つ豆を落とす。
一回、二回、三回。
里志「それでホータローは手持ちの豆が無くなった訳だ」
里志「僕も、全部落とすよ」
そう言い、里志は全ての豆を廊下に落とす動作を取った。
……これで、終わりだな。
181: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:49:29.99 ID:ez1jU9OO0
~える/里志~
私は後ろから、その光景を眺めていました。
お二人が一つずつ、豆を廊下に落として行きます。
……少し勿体無い気もしますが、捨てる訳では無いので我慢です。
そして折木さんが豆を4つ落とした後、続いて福部さんも豆を落とし……
ちょっと待ってください。
私が知っている折木さんは、こう言っては何ですが、たかが遊びであそこまで悔しがるでしょうか?
……拳を握り締める程、悔しそうにしている折木さんはなんだが不自然なんです。
何故かは分かりませんが、嫌な予感がします。
える「ふ、福部さん!」
私は福部さんに声を掛けますが、時既に遅し……全ての豆は廊下へと落ちました。
182: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:50:19.82 ID:ez1jU9OO0
次に折木さんの顔を見た私は、後悔する羽目になります。
折木さんは……小さく、笑っていたのです。
……もっと考えるべきでした。
える「何故、笑っているんですか」
奉太郎「分かるだろ、俺達の勝ちだからだ」
える「もう豆は無い筈です、それはしっかりと確認しているんですよ」
奉太郎「なら確認が甘かったって所だな」
そう言い、折木さんは握ったままの拳を私達の方に差し出します。
そのまま手の平を上に向けて、開きました。
……そこには、大量の豆が……あったのです。
里志「……どういう事だい」
何故あんなに豆を……もしかして、拾ったのでしょうか?
える「豆を拾ったのですか?」
私はそのままの疑問をぶつけます。
しかし。
183: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:51:01.50 ID:ez1jU9OO0
奉太郎「それはルール違反だろ」
奉太郎「拾ってはいない」
える「……なら、何故豆を持っているんですか」
奉太郎「分けたんだよ、皿に乗っていた豆を」
分けた……とは、どういう意味でしょうか。
それを聞く前に、折木さんは再び口を開きます。
奉太郎「俺達はな、豆を持ち込んでいたんだ」
奉太郎「そして始まってからその豆を皿に乗せ、半分にした」
奉太郎「しっかりお前らの分もまだ皿に乗っているぞ」
……卑怯じゃないですか!
奉太郎「……なんだか言いたそうな顔だな」
奉太郎「だがルール違反ではない」
奉太郎「皿に乗せた後で分けたなら、そうだろ?」
184: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:51:37.39 ID:ez1jU9OO0
里志「……確かに、ルール違反では無いね」
なら、なら今の内にお皿の所まで行き、私たちも豆を補充すれば……!
そう思い、振り返ると……
摩耶花「ごめんね、ちーちゃん」
摩耶花さんが、立ち塞がっていました。
奉太郎「だから言っただろ、俺達の勝ちだって」
里志「はは」
里志「参ったよ、僕達の負けみたいだ」
里志「でも一つだけ、教えて欲しい事がある」
奉太郎「なんだ」
里志「どうして僕が、自らの豆を捨てると思ったんだい?」
確かに、福部さんがこの案を出さなければ……折木さん達にはいくら豆があっても確実に勝てはしなかったでしょう。
185: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:54:06.12 ID:ez1jU9OO0
奉太郎「おいおい里志」
奉太郎「俺はお前がどの様に行動するかくらい、分かるさ」
奉太郎「さっき自分で言ってただろ」
奉太郎「何年友達をやっていると思っているんだ、とな」
里志「……そうだった、すっかり忘れてたよ」
福部さんはそう言い、両手を挙げます。
私もそれに習い、両手を挙げ、降参の意を示しました。
里志「一思いにやってくれると、助かるね」
奉太郎「……ああ、そのつもりだ」
この豆まきで、私が最後に見た光景は……私達に降りかかる、大量の豆でした。
186: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:55:43.55 ID:ez1jU9OO0
~縁側~
える「それにしても、なんで私も巻き込まれなくてはいけなかったんですか」
奉太郎「仕方ないだろ、位置が悪かったと思え」
える「それでも納得できません」
まあ確かに、投げすぎた感はあったが。
里志「いやあ、見事にやられちゃったね」
里志「やっぱりホータロー相手だと、分が悪すぎる」
摩耶花「ちょっと、私は居ても居なくても変わらないって言いたいの?」
里志「そ、そういう訳じゃないよ」
あれだけ動き回ったのに、こいつらは良くこんな元気がある物だ。
……ああ、そういえば。
奉太郎「豆がまだ残っているんだが、食べるか」
187: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:57:38.94 ID:ez1jU9OO0
俺はそう言い、三人に向け豆が入った袋を出す。
どうやら意見は同じだった様で、全員の手が袋に伸びる。
俺も豆を数粒取り出し、口の中に放る。
ポリポリとそれを咀嚼し、飲み込む。
……うまいな。
奉太郎「今日はちょっと、動きすぎた」
摩耶花「いつも動かない分、動いたって考えればいいんじゃない?」
える「たまにはいい物ですよ、体を動かすのも」
里志「そうだね」
……俺はそこまで動かない奴だっただろうか。
奉太郎「帰ってゆっくり風呂にでも入りたい気分だ」
里志「お、それには同意するよ」
摩耶花「……私も」
奉太郎「一致したな、帰るか」
その俺の言葉を聞き、千反田を除く三人は立ち上がる。
帰って風呂に入り、コーヒーでも飲んで残りの時間はゴロゴロしてよう。
本来休みとは、そういう物だから。
188: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:58:34.73 ID:ez1jU9OO0
……しかしそれは、叶わぬ望みとなってしまう。
今日、色々と作戦を練ったが……これだけは予想外だった。
と言うのも……
える「駄目ですよ、まだ帰っては駄目です」
奉太郎「なんだ、また豆まきでもするのか」
える「いえ、そういう訳では無いです」
奉太郎「なら」
える「私の家を、汚したままにするつもりですか」
ええっと……何個投げたっけか。
最初に配られたのは全員合わせて40個か。
それは全員使った筈。
だがその後に俺と伊原は豆を補充している。
あれは何個だったっけか。
確か……
いや、考えるのはやめよう。
189: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 21:59:34.94 ID:ez1jU9OO0
俺が考えるのをやめたのにはしっかりとした理由がある。
俺と伊原が持ち込んだ袋には豆が100個入っている。
それを半分に分けて俺達が使ったのは50個。
25個ずつ伊原と分け、俺はその25個全てを千反田と里志に投げつけた。
そして、何故か終わった後に伊原が喜びのあまり豆を上に向かって投げたのだ。
つまり拾わなければいけない豆の数は……90個。
あ、しまった……結局考えてしまったではないか。
……もういい、無駄な事は考えずに豆を拾おう。
える「皆さん、全部しっかりと拾ってくださいね」
そうしなければ、俺達はいつまで経っても家に帰れないからである。
190: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 22:16:22.94 ID:ez1jU9OO0
~折木家~
結局家に着いた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
そんな俺を待っていたのは、鳴り響く電話だったが……
誰も居ない様で、仕方なくそのまま俺は電話を取る。
奉太郎「折木です」
える「あ、折木さんですか?」
奉太郎「今、そう言った筈だが」
える「あ、いえ……私が言いたかったのはですね」
える「私が知っている折木さんか、そうではない折木さんか、という事でですね」
える「それはつまり、折木さんのご家族の方の可能性もあったので……」
奉太郎「やめてくれ、用件はなんだ」
放っておいたらいつまでも続きそうで、俺は手短に用件だけを聞くことにした。
191: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 22:17:28.97 ID:ez1jU9OO0
える「は、はい」
える「実はですね、少し……やってみたい事があるんです」
奉太郎「やってみたい事? 気になる事では無くてか」
える「今回は少し、違います」
える「私がやってみたい事と言うのは……」
その内容を聞いた俺は、とても驚いたのを覚えている。
千反田からそんな提案があるとは、露ほども思わなかったからである。
それが面白くて、俺は珍しくその提案に乗ることにした。
奉太郎「……分かった、乗ろう」
える「ほんとですか、ありがとうございます」
……明らかに俺向きでは無いが、それもまた意外性があってこの提案にはいいかも知れない。
ゆっくり、進めていけばいいだろう。
とりあえず今日は風呂に入ろう。
奉太郎「じゃあ、またな」
える「ええ、また明日」
……さて、今日は豆の夢を見そうになりそうだ。
来年は普通の豆まきがしたい、切実に。
そんな事を思いながら、俺は風呂場へと向かった。
第4話
おわり
192: ◆Oe72InN3/k 2012/10/06(土) 22:21:57.67 ID:ez1jU9OO0
以上で第4話、終わりとなります。
乙ありがとうございます。
193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/10/06(土) 22:45:37.78 ID:oo3MkzJJ0
おつおつ
以降も期待
194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2012/10/06(土) 23:09:58.20 ID:Wc63tSSlo
えるたそのやりたいこと、私気になります
199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/08(月) 09:07:08.65 ID:r9Au1VHY0
えるほー って音楽の授業一緒なんだよな?どうかそれに関するものをいずれ書いてくれる人はいないだろうか?チラッ
200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) 2012/10/08(月) 14:37:43.25 ID:iqTi8c/A0
>>199
選択科目としての音楽は1年の時だけでしょう。ここではもうすぐ3年生、受験生ですね。外伝としても原作もアニメも1年過ぎてるし。もしも書くとしても、過去の話として書く感じになるんですかね。
閑話休題。恵方巻きくらい、簡単に作ってしまうんだろうなあ、L嬢は。
201: ◆Oe72InN3/k 2012/10/08(月) 17:19:43.72 ID:dwmrjsng0
最近、寒くなってきましたね。
>>199
古典部の日常が終わったら、書いてみましょうか。
アイデア頂く感じで申し訳ないですが。
どの道、このお話が終わっても何かしら氷菓のSSは書くつもりでしたので。
次回投下ですが、本日の夜に投下致します。
203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/08(月) 19:37:36.00 ID:gTuEpvovo
やっほい!
正座で全裸待機しときますね!!
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- 2012/10/08(月) 21:43:53|
- 氷菓
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