963: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:13:26.38 ID:fcX3Mr2O0
こんばんは。
第22話、投下致します。
1000行く前に終わるかな……
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349003727/
964: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:13:57.78 ID:fcX3Mr2O0
える「段々と、良い感じになってきましたね」
奉太郎「そうか? 自分では全然分からんな」
える「正直、最初はどうしようかと思いました……」
奉太郎「悪かったな、そんなレベルで」
える「ふふ、冗談ですよ」
……こいつの冗談は、どうにも区別が付きにくい。
奉太郎「まあ、それもこれも全部、千反田さんのおかげです」
える「感謝の気持ちが、全く感じられないのですが……」
そうだろうか、こんなにも精一杯の言葉で現していると言うのに。
965: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:14:31.77 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「ま、本当に感謝はしているさ」
奉太郎「ありがとうな」
える「いいえ、このくらいならいつでも」
える「それに、私も楽しめましたので」
奉太郎「そうか」
俺と千反田が取り組んでいるのは、料理。
伊原の提案で、古典部全員で何かしら作る事になっていたのだ。
その事に対し、俺は別に……物凄くやる気があった訳では無い。
しかしまあ、やりたく無かった訳でも無かった。
966: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:15:14.29 ID:fcX3Mr2O0
える「あ、そういえばですけど」
千反田は何かを思い出したのか、人差し指を口に当てながら続ける。
える「作っていくお料理は、皆で揃える事になりました」
奉太郎「同じ物を作れって事か?」
える「ええ、比べるのにその方が良いと思いまして」
なるほど、確かに矛盾は無いな。
奉太郎「それで、作っていく物は何になったんだ?」
える「ええっとですね」
える「卵焼きです!」
卵焼き……卵焼き。
967: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:16:05.28 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「一ついいか、千反田」
える「あの、折木さんが言いたい事が少し分かる気がします」
奉太郎「ほう、何だと思う?」
える「……今までの練習が、あまり意味の無い物に、と言う事でしょうか」
奉太郎「さすが千反田、その通りだ」
つまり、俺がここ最近千反田の家で練習していたのは、如何にも千反田らしい料理……
噛み砕いて言えば、ちょっと上級者向けの物だろうか。
俺は詳しい訳でも無いので、声を大きくしては言えないが……
卵焼きは恐らく、かなり初心者向けなのでは無いだろうか。
968: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:17:05.60 ID:fcX3Mr2O0
える「で、でもですね!」
える「いつか役に立つ時が、来る筈です!」
奉太郎「やけに自信たっぷりだな」
える「ええ」
える「努力は必ず、報われますから」
ふむ、今まで大した努力もして来なかったので、俺にはちょっと分からない。
奉太郎「そうだと良いな」
える「絶対にです!」
える「私、努力をしている人は好きなので」
奉太郎「……そうか、それに俺も当てはまると良いんだが」
える「何を言っているんですか、折木さんが努力をしてきたのは、私が一番良く知っています」
奉太郎「……ああ、まあ」
969: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/11/10(土) 22:18:40.01 ID:fcX3Mr2O0
千反田が言う事は、分かる。
俺も手を抜いて練習していた訳でも無いし、周りから見たらそれは努力をしていると呼べるのかもしれない。
だが何だか、自分で僕は努力をしていますと言うのも違うので言葉を濁してその話は終わらせる事にした。
える「まだ少し時間があるので、練習しましょうか」
奉太郎「そうだな、そうしよう」
……あれ、ちょっと待て。
奉太郎「ちょっといいか、千反田」
える「はい? 何でしょうか」
奉太郎「千反田は、知っていたんだよな」
奉太郎「皆で同じ料理……卵焼きを作ると言う事を」
970: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/11/10(土) 22:20:05.51 ID:fcX3Mr2O0
える「勿論です、知っていましたよ」
奉太郎「なら何で、練習をすぐにそれに変えなかった?」
俺がそれを問いただした時、千反田はちょっとだけ焦っていた。
言葉にすれば、多分……しまった。 とかそんな感じの顔をしていた。
える「ええっと……」
える「あの、一緒にお料理をするのが……楽しかったので」
さいですか。
971: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:21:57.00 ID:fcX3Mr2O0
~折木家~
そして、その日がやって来た。
俺はいつもより少しだけ早く起き、それに取り組む。
とは言っても、大して練習する時間も無かったのは事実であり、結果にもそれは出ていた。
奉太郎「……なんと言うか」
卵焼きと言うよりかは、炒り卵と言った感じか。
手を抜いた訳では無いが……まあ、時間も無いし別に大丈夫だろう。
卵を焼いたのは事実なのだし。
俺はそれを小さい容器に入れ、鞄の奥へと仕舞う。
そのまま鞄を背負い、家を出て行った。
972: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:24:13.33 ID:fcX3Mr2O0
える「おはようございます、折木さん」
奉太郎「おはよう」
家を出るとすぐに、千反田が目に入ってくる。
これにも最近では随分と慣れてきた。
最初来た時は、事前に何も言われていなかったので相当驚いたが。
える「どうでした? 上手く作れましたか?」
学校までの道で、横に並んで歩く千反田が声を掛けてくる。
いつもはまあ、本当に他愛も無い会話をしているのだが、今日は勿論あれの事だろう。
奉太郎「ううむ、上手く……とはとても言えないな」
える「と言いますと、失敗したんですか?」
973: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:24:55.17 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「結論から言うと、そうだな」
奉太郎「卵焼きと言うよりは、炒り卵と言った方が近いかもしれない」
える「そうでしたか……でも、焼いた事には変わりは無いので、大丈夫ですよ」
なんだ、俺は随分と投げやりにその結論を出したのだが……
千反田に同じ事を言われると、本当にそれが正しい気がしてくる。
奉太郎「そっちはどうなんだ?」
える「私ですか、私もあまり成功とは言えないかもしれません……」
奉太郎「珍しいな、失敗したのか?」
える「いえ、そう言う訳では無いのですが」
える「あ、それでしたら」
える「お昼に一つ、食べますか?」
974: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:25:32.31 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「いいのか? 放課後に食べる分もあるんじゃないか」
える「いいえ、実はですね」
える「最初から、そのつもりだったので」
奉太郎「そうか……なら、貰おうかな」
える「ええ、福部さんや摩耶花さんには内緒ですよ」
奉太郎「分かっているさ」
奉太郎「それより、千反田が成功とは呼べない物には少し興味があるな」
える「気になりますか?」
975: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:27:39.39 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「いや、そこまでじゃない」
える「気にならないんですか?」
奉太郎「……それも違うが」
える「どちらですか、それが私、気になってしまいます」
奉太郎「どっちかと言うと……少し、気になるかもしれない」
える「そうですか! それなら折木さんが気になる物、お昼まで楽しみにしておいてくださいね」
千反田はそう言うと、ようやく見えてきた校舎の中へと走って行ってしまう。
奉太郎「……何が満足なんだか」
俺は、聞こえてはいないだろう千反田の背中に向かってそう言うと続いて校舎に入って行った。
976: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:28:05.21 ID:fcX3Mr2O0
~古典部~
午前の授業も終わり、俺は古典部へと足を運んだ。
扉を開けると、すぐに窓際に座っている千反田が目に入ってくる。
一緒に古典部まで行けばいい、とは思うのだが……なんだかそれは、俺も千反田も自然と避けていた。
奉太郎「早いな」
える「そうでもないですよ、折木さんが遅いだけです」
……否定はしないが。
その言葉は軽く流し、千反田の向かいの席へと俺も腰を掛ける。
奉太郎「それで、成功しなかった卵焼きとやらを見せて貰おうか」
える「あの、あまりそればかり言わないでくださいよ」
977: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:28:47.10 ID:fcX3Mr2O0
千反田はそう言いながら、鞄から小さな容器を取り出した。
える「そう言えば、折木さんには一度、卵焼きを作ってましたっけ」
あったっけか、そんな事が……
ああ、映画を一緒に見た時か。
奉太郎「とは言っても、かなり昔だな」
える「ふふ、そうですね」
える「時が経つのは早い物です」
千反田はそう言い、窓の外に視線を移した。
やめてくれ、まだ若いままで居たいから、そんな年老いた雰囲気は出さないで欲しい。
978: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:29:26.74 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「それで、食べていいか」
える「あ、そうでしたね」
える「どうぞ」
千反田は容器に手を掛け、開いた。
……なんだ、見た目は全然普通だな。
むしろ、俺のと並べたらそれは多分悲惨な事になるだろう。
奉太郎「じゃあ、いただきます」
俺はそう言うと、一つ卵焼きを口に入れる。
奉太郎「……うまいな」
何故、千反田が成功したと言わなかったのかが分からないくらいに、美味しかった。
979: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:29:52.86 ID:fcX3Mr2O0
える「本当ですか?」
奉太郎「ああ、こんな事で嘘は付かない」
える「少々、味付けを失敗したんですが……ちょっと濃くないですか?」
奉太郎「……いや、別に?」
える「そうですか、それなら良いのですが」
ここまで美味しいのに、成功じゃないと言われてしまったら俺はどうすればいいのだろうか……
奉太郎「俺が作った奴も、食べてみるか」
える「良いんですか? 是非!」
そこまで期待されても困るが。
980: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:30:20.48 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「じゃあ、ほら」
鞄から容器を取り出し、千反田の前で開ける。
える「これは、確かに卵焼きと言うよりは炒り卵と言った方が正しいですね」
奉太郎「だろうな」
える「でも、食べてみなければ分かりませんよ」
そう言うと、千反田は少しだけその卵を取り、口に入れた。
える「おいしいですよ、折木さん」
……何だか、照れるな。
正面から言われると、どうにも目を合わせられない。
奉太郎「……そうか、それなら良かった」
それからは、それぞれの容器を仕舞うと弁当を広げ食べ始める。
まあ、千反田が美味いと言ってくれたから……これで少しは安心できると言う物だ。
味も最悪だったら、伊原に何と言われるか分かった物じゃないからな……
981: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:31:05.11 ID:fcX3Mr2O0
~放課後~
里志「と言う訳で、皆作ってきたかな?」
摩耶花「勿論、作ってきたわよ」
摩耶花「皆に聞くより、一人に聞いた方が良いと思うけど」
伊原はそう言いながら、俺の方に顔を向けてくる。
奉太郎「失礼な、俺もしっかり作ってきたぞ」
摩耶花「へえ、楽しみにしておくわね」
里志「じゃあ、ホータローのは最後のお楽しみにしておくとして、最初は僕でいいかな?」
える「そうですね、ではお願いします」
里志「了解! とは言っても普通のだけどね」
里志が取り出したのは、一見すると言葉通り、普通の卵焼きであった。
982: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:32:17.31 ID:fcX3Mr2O0
摩耶花「それじゃ、貰うわね」
伊原の言葉を合図に、里志を除く三人が箸を伸ばす。
奉太郎「……うまいな」
何だろうか、少し辛い? そんな感じの味だ。
える「これは、明太子ですか?」
里志「そう、流石は千反田さん! 食べてからすぐに分かって貰うのは作る側として嬉しいよ」
摩耶花「……確かに、悔しいけど美味しいかも」
里志「ただの卵焼きじゃ、何だかつまらないと思ってね。 一工夫してみたんだ」
……なるほど、里志らしい考え方と言えばそうかもしれない。
983: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:35:06.14 ID:fcX3Mr2O0
摩耶花「次は私かな?」
える「あ、私でも構いませんよ」
里志「いやいや、次は摩耶花に頼みたいかな」
える「どうしてですか?」
里志「それは勿論、落差を楽しみたいから」
……覚えとけよ、里志め。
千反田は何か言いたそうな顔をしていたが、里志の勢いに流されてしまう。
摩耶花「それじゃあ、私のはこれ」
伊原のも、一見して普通の卵焼きか。
……見た目で違いなど、分かる訳無いか。
984: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:37:36.93 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「どれどれ」
卵焼きを一つ箸で掴み、口に入れる。
奉太郎「む……甘いな」
える「みりんとお砂糖ですね、私はこの卵焼きも好きです!」
……さっきから思うが、千反田が料理の先生に見えて仕方ない。
里志「うん、美味しいね」
里志「……これだけ出来るなら、食べ比べる必要も無かったんじゃないかなぁ」
摩耶花「それ、ちーちゃんのを食べてから言って欲しいな」
える「そんな、私のも皆さんと同じくらいですよ」
千反田はそう言いながら、鞄から容器を取り出す。
985: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:38:53.92 ID:fcX3Mr2O0
摩耶花「なんか見た目から、とっても美味しそう」
里志「そうだね……って」
里志「気のせいかな、器に比べて中身が少なくない?」
本当に、小さい事を気にする奴だな。
える「あ、あのですね、器がこれしか無かったので……」
摩耶花「ふうん、まあ一つ貰うわね」
何とか誤魔化せたみたいだが、千反田の慌てっぷりから少々冷や汗を掻いてしまった。
もう少し、上手く誤魔化せない物か……
摩耶花「わ、これ美味しい」
里志「ほんとだ、味付けは普通に醤油かな?」
える「ええ、何か工夫をしようと思ったのですが……色々思いついてしまって」
986: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:39:33.39 ID:fcX3Mr2O0
摩耶花「それで、結局最初に戻ったって訳ね」
える「ふふ、そうです」
里志「まあ、それでも僕達のとはやっぱり比べ物にならないなぁ」
える「そんな事無いですよ、福部さんのも摩耶花さんのも、とても美味しかったですよ」
摩耶花「そうね、ふくちゃんのも美味しかったなぁ」
摩耶花「今度、作り方教えてもらおっと」
里志「うん、何か新しいのにもチャレンジしてみたいし、いいかもね」
里志「それより、一ついいかい?」
える「はい、何でしょうか」
里志「あ、いや。 千反田さんじゃなくて、ホータローに」
俺に? また急に……何だと言うのか。
987: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:40:49.66 ID:fcX3Mr2O0
里志「ホータローは、千反田さんのを食べないのかい?」
……さっきは千反田に、心の中でダメ出しをしたが、どうやら俺もやらかしたらしい。
奉太郎「ああ、いや……食べる」
くそ、余計な事を考えすぎていたか。
える「は、はい。 どうぞ」
千反田も慌てながら渡してくる物だから、余計に怪しくなってしまう。
奉太郎「ありがとう、じゃあ貰うか」
俺も千反田の卵焼きを一つ貰い、口に入れる。
奉太郎「……美味いな」
ううむ、里志や伊原のとは違い……いや、二人のも十分に美味かったが。
比べるとやはり、千反田のは美味かった。
988: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:41:29.61 ID:fcX3Mr2O0
里志「それじゃ、次はホータローの番だよ」
奉太郎「……ほら」
そう言い、俺は鞄からそれを取り出し、机の上に置く。
摩耶花「よっ」
勢い良く、伊原がふたを開いた。
里志「ホータロー、今日作ってくる物は何だっけ」
奉太郎「……卵焼きだな」
摩耶花「それで、折木が作ってきたのは何?」
奉太郎「……卵を焼いた物だ」
里志「違うね、これは卵を炒った物だよ」
さいで。
989: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:42:17.14 ID:fcX3Mr2O0
える「み、見た目はともかく、味も大事ですよ!」
千反田のフォローが、少し辛い。
里志「うーん、まあいいか」
里志「それじゃ、頂きます」
里志と伊原と千反田は、それぞれ箸を伸ばす。
里志「……ちょっとしょっぱいかな?」
奉太郎「……醤油を入れすぎたかもな」
摩耶花「ちょっと、あんた真面目に作ったの?」
失礼な、かなり真面目に取り組んだつもりだと言うのに。
里志「やっぱり、練習した方が良かったかもね」
千反田との毎日の練習を、こいつらに見せてやりたい。
990: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:43:30.13 ID:fcX3Mr2O0
える「あ、あの……折木さんも、真面目にやられていたと思いますよ」
摩耶花「無いって! 絶対適当にやってたでしょ」
里志「そうそう、ホータローが真面目にやるのは、面倒事を避ける時だけだよ」
随分と酷い言われ様である、まあ……今に始まった事では無いので別にいいが。
奉太郎「それじゃ、今日のは終わりでいいか」
摩耶花「なんか納得行かないけど……ふくちゃんとちーちゃんのは、勉強になったしいいかな」
里志「了解、日が落ちると寒くなるから、そろそろ帰ろうか」
そう言い合うと、それぞれ自分の荷物へと手を伸ばした。
える「……待ってください」
何だ、この後に及んでまだ何かあると言うのか……
991: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:45:30.56 ID:fcX3Mr2O0
奉太郎「どうしたんだ」
える「折木さんは、真面目に作っていました」
える「絶対に、適当にやっていた何て事は無いです」
える「……納得、出来ないんです」
別に、俺自身は大して気にしていないのだが……
える「一週間、一緒にお料理の練習をしていたんです」
える「毎日、学校が終わった後に」
える「そんな折木さんが今日、適当に作ってくる事は無いんです」
こうなってしまっては、千反田は結構頑固だ。
992: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:46:15.33 ID:fcX3Mr2O0
里志「そ、そうだったのかい。 ごめんね、千反田さん……ホータローも」
珍しく怒っている千反田に、里志は少し慌てていた様子だった。
それが見れただけでも、今日は散々言われた甲斐があったと言う物だ。
摩耶花「ご、ごめん。 知らなくてつい」
える「……すいません、少し言い過ぎました」
える「お二人がそれを知らなかったのも、当たり前の事です」
奉太郎「……まあ、俺は全く構わないんだがな」
奉太郎「今度何か奢って貰う事で、許してやろう」
里志「はは、それは冗談かい?」
奉太郎「それをどっちと取るかは、里志と伊原に任せるさ」
摩耶花「……急に偉そうになったわね」
……冗談のつもりだったが、普段冗談を言わないだけでこうも言われるのか。
993: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:46:56.42 ID:fcX3Mr2O0
える「では! 帰りましょうか」
える「もう少しで日が落ちてしまいますし」
里志「そうだね、また今度……次は何がいいかな?」
摩耶花「そうね、今度はちーちゃんに教えて貰って作りたいかな」
える「私で良ければ、いつでも大丈夫ですよ」
奉太郎「……俺はもう勘弁して貰いたいが」
摩耶花「折角教えて貰ってたのに、そんな事言うんだ」
里志「ホータローは、千反田さんの料理じゃ参考にならないって言いたいのかなぁ」
える「え、そうなんですか……折木さん」
……これは、またしても厄介な事になりそうである。
994: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:47:58.54 ID:fcX3Mr2O0
える「決めました、今日は寒いので……」
える「折木さんが、帰りに暖かい飲み物をご馳走してくれるみたいです」
ほら、なった。
奉太郎「却下だ」
里志「ああ、寒くて寒くて僕は倒れそうだ」
奉太郎「……却下だ」
摩耶花「私も……さっきから体の震えが止まらない」
奉太郎「……却下だ」
える「折木さんは、友達を見捨てるんですか!」
千反田、一つ教えてやろう。
その台詞は、笑顔で言う物では無いと。
995: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:48:30.29 ID:fcX3Mr2O0
うう……気温も低ければ、財布も寒くなる物なのだろうか。
……いかんいかん、これは年老いてからの駄洒落だろう。
そんな事を思い、かぶりを振りながらどう切り抜けようかと考える。
しかし良い考えが思い浮かばず、それならば別に、飲み物の一本や二本くらい……別に良いか。
……いや、良くはないだろうが。
外を歩き、肌には秋らしい冷たさが感じられる。
だが、不思議と暖かかった。
第22話
おわり
996: ◆Oe72InN3/k 2012/11/10(土) 22:50:27.35 ID:fcX3Mr2O0
以上で第22話、終わりとなります。
セーフ!セーフ!
11月中は、投下間隔がちょっと遅れそうです。
12月に入ればまた二日間隔で投下出来ると思うので……
次は第23話、投下する際にスレ立てで大丈夫ですかね?
何か質問等あった時用に、立てて置いた方がいいのでしょうか。
997: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2012/11/10(土) 22:52:27.13 ID:fJXzjMA3o
おつおつ
いま次スレたてて、ここにURL貼れるならそれが一番いいんじゃない?
迷子になるかもだし
998: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) 2012/11/10(土) 23:28:44.12 ID:MMnhBAGAO
乙~
努力をして真剣に取り組んだ奉太郎に、二人が悪く言った時のえるの怒った感じ、たまらん!!
なんというか・・・
ちゃんと奉太郎の事を理解してくれてるんだなと思うと・・・ごちそうさまです!!
>>997に同意かな
999: ◆Oe72InN3/k 2012/11/11(日) 00:36:46.10 ID:zz4dfsYx0
1000: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) 2012/11/11(日) 00:44:52.08 ID:mmPgC0jNo
>>1000なら大学編まで続け
1001: 1001 Over 1000 Thread
☆.。 .:* ゜☆. 。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
:::::::::::::=:。.: * ・゜☆ =?☆.。 .:*・゜☆. 。
::::::::::::::::::::::::?.:*゜☆ =:. :*・゜☆.:::::::::::?☆
。.: *・゜☆.。. :* ☆.。:::::::::::::::.:*゜☆ ?。.:・゜☆.。
::::::::::::::::: *=@☆.。::::::::::::::::::::::::::::::.:*・゜☆ =磨K☆.。
::::::::::::::::::?.:*・゜☆ ?. :*・゜☆.::::::::::::::::::::::::::゜☆.
: =: ? * ゜☆.。::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
☆.。 .:* ゜☆. 。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
:::::::::::::=:。.: * ・゜☆ =?☆.。 .:*・゜☆. 。
::::::::::::::::::::::::?.:*゜☆ =:. :*・゜☆.:::::::::::?☆
。.: *・゜☆.。. :* ☆.。:::::::::::::::.:*゜☆ ?。.:・゜☆.。
::::::::::::::::: *=@☆.。::::::::::::::::::::::::::::::.:*・゜☆
::::::::::::::::::?.:*・゜☆ ?. :*・゜☆.::::
?? !ヽ ?
? !ヽ、 ,! ヽ
,! =]‐‐'' ヽ?
? / ´`)'´ _ !、
lヽ / ノ , ` `!?
lヽ、 / Y ,! ヽ-‐‐/ l
. =@>‐'´` l ノ ヽ_/ ノ?
,ノ ヽ =@ _,イ?
?#39;.o r┐ * ヽ、 ヽ、_ ,..-=ニ_
=@ ノ ノヽ、, !..□ / ヽ
ヽ .ィ'. ,! ハ/ 、 `!、 七夕に…
`ー-、_ く´ =@ / ヽ
,! `! l ヽ、__ノ このスレッドは1000を超えました。もう書き込みできません。
l `! `! ! l
l . =@ ,=@ヽ、 、_ ,ィ ノ
l、_,! し' l =@ `l =@ ?//vip2ch.com/
- 関連記事
-
- 2012/11/11(日) 20:46:56|
- 氷菓
-
| トラックバック:0
-
| コメント:1
-
|
-