24: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:36:03.89 ID:xjsus1gx0
こんばんは。
第23話、投下致します。
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352561755/
25: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:36:50.21 ID:xjsus1gx0
奉太郎「物は出来たのか?」
摩耶花「勿論! 去年はちょっと少なかったからね」
摩耶花「今年は、結構作ってきたわよ」
そう言い、伊原は例のアレを取り出す。
里志「お、本にして改めて見ると……良いデザインだね」
える「ええ、去年は迷惑を掛けてしまったので……今年は頑張ります!」
奉太郎「それにしても、後一週間か」
里志「そうだよ、ホータロー」
そう言い、里志は俺の肩に腕を回して来る。
里志「どうだい、時が経つのは早い物だろう?」
奉太郎「……そうだな、それは里志の言う通りだった」
26: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:37:16.77 ID:xjsus1gx0
今だからこそ、俺はそう思っていた。
具体的にそれを感じ始めたのは、いつだっただろうか。
える「楽しみですね、折木さん」
……千反田と、付き合ってからだ。
一日一日が名残惜しい程に早く、過ぎ去っていく。
奉太郎「ああ、今年で最後だからな」
里志「そうだよ、僕達にとってはこれが最後になるんだ」
摩耶花「そう言われると、何だか寂しいわね」
える「そうも言っていられませんよ、楽しみましょう!」
最後、か。
思えば一昨年、去年、殆どを古典部の部室で過ごして居たっけか。
……今年は少し、見て回ってみようかな。
奉太郎「……文化祭か」
27: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:37:44.50 ID:xjsus1gx0
~帰り道~
奉太郎「……千反田は」
奉太郎「約束とか、あるのか?」
える「約束? ええと、何のお話でしょうか」
奉太郎「あ、すまんすまん」
奉太郎「文化祭の時、一緒に見て回る友達とか居るだろう」
える「そう言う事でしたか」
危ないな、千反田の説明を飛ばす癖が俺に感染でもしたのか。
える「今の所は……居ない筈です」
奉太郎「そうか、なら」
奉太郎「その、一緒に回るか……文化祭」
28: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:38:12.39 ID:xjsus1gx0
える「本当ですか!」
える「折木さんの事でしたので、また店番をすると言い出すかと思っていました」
奉太郎「俺だって、最後くらい……見てみたいと言う気持ちはあるぞ」
える「そうでしたか、何だか感動してしまいそうです」
……俺が部室から動くだけで、感動するのか。
失礼な奴だ、全く。
奉太郎「それで、どうする」
える「あ、是非お願いします!」
奉太郎「じゃあ決定だな」
奉太郎「里志も今年は委員会の仕事が無いらしいから、店番は順番でやろう」
29: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:38:40.11 ID:xjsus1gx0
える「分かりました。 明日早速、お二人にもお話しましょう」
奉太郎「……だな」
千反田があんな反応をしたせいで、明日がちと怖い。
普段からやたらと言ってくるあいつらが、俺の意思を知ったら何と言うか……
える「話が変わりますけど」
……何だろうか。
千反田がこう言う風に、急に話題を変えるのはちょっと珍しいな。
える「今度の週末、何か予定はありますか?」
奉太郎「お前が一番良く知っているだろ、予定なんて入っていない」
える「そうですか、それなら」
える「私が、予定になりましょう」
30: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:39:09.19 ID:xjsus1gx0
つまり、何かしら千反田にはしたい事があるのだろうか?
奉太郎「わざわざどうも」
奉太郎「それで、どこか行きたい所でもあるのか?」
える「ええ、あります」
奉太郎「あまり遠い所は勘弁してくれよ」
える「大丈夫ですよ、すぐ近くですから」
まあ、それなら別にいいか。
える「日曜日の夜ですが、良いですか?」
奉太郎「日曜日? 次の日は学校だろ」
える「そんな遅くまではならないと思いますよ」
31: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:39:36.29 ID:xjsus1gx0
奉太郎「……じゃあ、その言葉を信じるか」
える「ふふ、ありがとうございます」
奉太郎「それにしても、夜に行きたい場所なのか?」
える「はい、そうです」
聞けば多分、千反田は答えるだろうが……ちょっと考えてみるか。
確か、千反田はすぐ近くと言っていたな。
とすると……神山市の中だろう。
あの公園だろうか?
……いや、それならばそう言う筈だ。
何回も行っているのに、わざわざ場所を言わない理由は無い。
ううむ、予想以上に難しい問題かもしれない。
32: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:40:03.83 ID:xjsus1gx0
奉太郎「……その場所は、俺が行った事のある所か?」
える「ええ、そうですよ」
千反田も俺が考えている事に気付いたのか、場所を言おうとはしなかった。
で、行った事のある場所か。
……学校?
違う、夜に行って肝試しでもするなら別だが……時期が違うか。
それに千反田は、肝試しとかそんな遊びをする時は必ず里志や伊原にも声を掛けるだろう。
と、なると……
奉太郎「もしかして、千反田の家か?」
える「あ、凄いですね」
奉太郎「なら、当たりか」
える「ふふ、惜しいですけど」
33: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:40:29.92 ID:xjsus1gx0
……違ったのか。
だが、凄いと言ったからにはかなり良い線だったのだろう。
ああ、そうか。
奉太郎「当たって欲しくは無いんだが」
奉太郎「俺の家か」
える「それならば、折木さんにとっては残念な結果です」
奉太郎「……さいで」
にしても何故、俺の家なのだろうか。
奉太郎「俺の家に来ても、面白い事やお前が気になる事なんて無いぞ」
える「いいえ、それが次の週末にはあるんです」
……また問題を提示されてしまった。
だがちょっと、難しいな……これもまた。
34: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:40:56.14 ID:xjsus1gx0
える「あ、それは考えては駄目です」
奉太郎「えっと、どうして?」
える「ふふ、お楽しみにしておいてください」
奉太郎「……ま、答えは出そうに無かったしいいが」
える「絶対ですよ?」
奉太郎「分かってる」
える「家に帰ってからも、考えないでくださいよ?」
奉太郎「わ、分かったからちょっと離れてくれ」
える「約束してくださいね」
奉太郎「ああ……するよ」
35: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:41:35.42 ID:xjsus1gx0
全く、考えなくても良いと言われ、更にはそれを約束しろとは……いつも千反田にはこうであって欲しいな。
……そうでもないか?
しかし、考えるなと言われると却って気になるでは無いか。
日曜日の夜……何かあるのだろうか。
える「折木さん、考えてますよね」
奉太郎「いや、まあ」
える「誤魔化さないでください、折木さんが考えている時は、顔を見ればすぐに分かるんですから」
奉太郎「……それは参ったな」
奉太郎「分かったよ、考えない」
える「……」
うう、そうもじっと見られていては、考えようとしても考えられないと言う物だ。
36: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:42:17.59 ID:xjsus1gx0
奉太郎「……そろそろ着くぞ」
える「……あ、そうですね」
える「では、また明日」
奉太郎「ああ、またな」
える「絶対に考えないでくださいね」
奉太郎「約束するさ、別の事でも考えておく」
える「別の事、ですか?」
奉太郎「例えば、そうだな」
奉太郎「文化祭の時、どこを回ろうかとか」
える「それは良いですね」
える「ふふ、楽しみにしておきますね」
……余計な事を言ったか。
奉太郎「ま、じゃあな」
える「ええ」
そう言い、俺は自分の家へと歩いて行った。
37: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:42:46.53 ID:xjsus1gx0
奉太郎「……もう秋か」
この文化祭が終われば、もう後は受験だけか。
今年ももうすぐ終わり……とまでは行かないが、後3ヶ月程度しかない。
そう言えば、千反田がどこの大学へ行くかも、まだ聞いていなかった。
……文化祭が終わってから、聞いてみるか。
奉太郎「……久しぶりに公園にでも寄るか」
公園に行った事自体は結構最近の気がするが、一人で来るのは随分久しぶりな気がする。
思えば本当に、色々とあった高校生活だった。
一番俺に影響を与えたのは、間違い無く千反田だろう。
そんな事を考えていた時、丁度公園の入り口が見えてきた。
38: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:43:17.98 ID:xjsus1gx0
~公園~
俺はベンチに腰を掛け、綺麗に彩る紅葉を眺めながら思考する。
もし、千反田と会っていなかったら、どうなっていたのだろうか?
あの日、古典部に行った時、千反田が居なかったら。
俺は恐らく、名前だけを古典部に置いて、活動らしい活動なんて一切しなかった筈。
学校が終わればすぐに帰り、自分の部屋で本でも読んでいたのだろう。
里志に誘われて遊びに行く事もたまにはあったかもしれない。
……文化祭には、何か出すだろうか?
姉貴の存在のおかげで、何かしら文集らしい物は作ったかもしれない。
勿論、氷菓の名前の由来や関谷純が伝えたかった事も、一切知らないで。
そうして今も、この公園に足を運ばなかったのかもしれない。
39: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:44:06.67 ID:xjsus1gx0
……それは、悪い事だろうか?
そうでは無い、悪い事では無いのだ。
ただ、良くある高校生の過ごし方だと思う。
なら別に、千反田と出会わなくても良かったのでは無いか。
良かった、とは思わないが……それもあり得た道ではある。
しかし、どうだろうか。
今となっては、それは多分……
千反田と出会っていなかった日常、恐らく。
奉太郎「……つまらんな」
40: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:44:35.70 ID:xjsus1gx0
そうあっさりと結論を付け、目の前に落ちてきた葉っぱを一枚手に取った。
そのまま、神山市を一望出来る所まで移動する。
俺は手すりに寄りかかり、手に持っていた葉っぱを風に乗せた。
気持ちいいくらいの勢いで、それは町へと飛んでいく。
だが、どこまでも行きそうなそれでも……この町から出ることは叶わないのだろう。
一人で飛んでも、結局はまた、同じ地へと戻ってくる。
そこにあるのは多分、孤独……そんな所だろうか。
そんな葉っぱに少しだけ俺は、寂しい気持ちになり、すぐに馬鹿らしいとかぶりを振った。
奉太郎「……寒くなってきたな、帰るか」
誰にともなく、呟く。
そうして俺は、一人……帰り道を歩いて行った。
第23話
おわり
41: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:45:30.94 ID:xjsus1gx0
以上で第23話、終わりとなります。
続いて、短いですが……23,5話を投下致します。
42: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:46:08.87 ID:xjsus1gx0
私は、折木さんに見送ってもらった後に、ある事に気付きました。
ついつい夢中で話していて、学校に忘れ物をしてしまったのです。
私とした事が、と言ったら傲慢に値するかもしれません。
そうして私は、本日二度目の下校をしている所でした。
える「まだ門が開いていて良かったです……」
そんな事を呟き、帰り道をゆっくりと歩きます。
町を彩っているのは、綺麗な紅葉でした。
える「……今度、折木さんを誘って紅葉でも見に行きましょう」
43: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:46:41.84 ID:xjsus1gx0
神山市は、自然に恵まれていると思います。
紅葉が良く見れる場所は知っていますし、悪い案では無いかも知れません。
問題は……そうですね、折木さんの気分が乗るかでしょうか。
そんな時、ふと風に乗って一枚の葉っぱが飛んできました。
それはゆっくりと、風に揺られながら地面へと落ちていきます。
える「どこから飛んできたのでしょうか……気になりますね」
こんな時、折木さんが居れば……私が考えもしない方法で、答えを出してくれるのですが。
今は残念ながら、私一人です。
そして私は、地面に落ちた葉っぱの下へと歩いていきます。
44: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:47:08.44 ID:xjsus1gx0
える「ふふ、良かったです」
どこからともなく飛んできた葉っぱは、木の根元に落ち、そのすぐ傍にはもう一枚の葉っぱがありました。
それはどこか、寄り添っている様な、そんな気がして……不思議と幸せな気分になります。
える「……ちょっと寒くなってきましたね」
風邪を引かない内に、帰りましょう。
それにしても、次の日曜日は楽しみです。
私はそんな事を思いながら、一人帰り道を歩いて行きました。
第23,5話
おわり
45: ◆Oe72InN3/k 2012/11/18(日) 19:47:58.44 ID:xjsus1gx0
以上で第23,5話、終わりとなります。
乙ありがとうございました!
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) 2012/11/18(日) 20:27:10.43 ID:v7oNvvbAO
乙!
文化祭に向け、気分が高まってきたぜ・・・!
去年は二人とも楽しめなかったからな・・・
特にえるは、欝状態だったしな・・・
なにはともあれ、まずは日曜日!気になります!
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/18(日) 21:55:05.88 ID:+93XyO3O0
乙です
一話一話丁寧に書かれていて、見ていて飽きないなぁ
>>1の風邪が早く治りますよーに
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2012/11/18(日) 23:50:23.34 ID:K1jqOiVg0
>>1が忙しいみたいだから次は来週かね。
乙でした
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) 2012/11/19(月) 00:01:54.84 ID:lGnrNAlw0
乙です。風邪は大丈夫でしょうか。無理はしないで下さい。
作品でももう秋ですね。文化祭が楽しみです。
>>23
ありがとうございます。僕は読み返して投稿はするんですが、後からもちょくちょく直したり、書き足したりすね癖があって、掲示板形式だとひどいことになりそうです。ここの主は凄いですね。
52: ◆Oe72InN3/k 2012/11/19(月) 00:43:29.46 ID:JPUs3Tvl0
>>47
神山高校の文化祭の日程、その前の日曜日。
それを当てはめると、えるたそがしたい事が分かるかも知れません。
>>48
それはとても嬉しい……
あまりにもだらだらとした文章ですので、そう言ってもらえるとありがたいです。
風邪は一日経って、ちょっとマシになってきました。
先週の月曜日からずっと引き摺っていて、さすがに一週間も経てば風邪達も次の宿主を探しに行くようです。
>>49
そうですね……次も多分、日曜日辺りになると思います。
11月さえ乗り切ればまた二日、三日のペースで投下できると思います。
>>50
レスありがとうございます!
50さんの作品、クリスマスのお話や豆まきのお話、全部読んでいますよ~
今日投下されたと言うお話も時間ある時に読んでおきます!
自分も読み返して投稿しないと間違えが多くて多くて……
いや、読み返して投稿しても、の間違えですね。
それではまた、日曜日辺りに投下致します。
何か、これってこうじゃない? これはどういう意味? 等あれば、ちょこっとレスをしに来るかも知れません。
では、おやすみなさい。
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/19(月) 14:22:50.47 ID:DWygibsIO
乙
55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) 2012/11/19(月) 21:42:21.96 ID:JMYV5mvAO
乙!
去年の冬には、ほうたるはえるたそを授業中に連れだしたりしたりしたし、周りの人達は二人の事をどんな風に見てるのかも気になる・・・!
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- 2013/01/04(金) 22:00:12|
- 氷菓
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