145: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:52:22.29 ID:Rgu1qEPC0
こんにちは。
第26話、投下致します。
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352561755/
146: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:52:49.54 ID:Rgu1qEPC0
える「では、行きましょうか!」
千反田はそう言い、俺の手を引いて歩く。
奉太郎「分かった、分かったからもう少しゆっくりと歩
こう」
何も一緒に回るからと言って、手を繋ぐ必要は無い
と思うが……
奉太郎「それにしても、本当に色々とあるんだな」
える「そうですよ、楽しまなければ損です」
大体の部活は、その部活に合った内容の物を出し
ている様だ。
まあ、当たり前と言えば当たり前だな。
147: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:53:52.87 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「しかし、こう改めてみると……」
奉太郎「古典部の場所が、如何に悪いか良く分かる」
える「それは……確かにそうですね」
える「でも、やり様によっては……あの場所でも大丈夫ですよ」
える「折木さんが出した案も、きっと成功します」
奉太郎「だといいがな」
奉太郎「とりあえず、見て回りながらやって行くか」
そう言い、俺は手に持っていた手提げ袋……これは
里志から借りている物だが。
何でも手芸部では、いくつかこういった袋を作っているらしい。
それの一つを里志に頼んで貸して貰っている。
その袋から、何個かの封筒を取り出し、千反田に手渡した。
148: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:55:01.74 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「これ、千反田の分だ」
える「これですね、分かりました」
える「あの、中を見ても良いですか?」
奉太郎「別に見なくとも、内容は知っているだろ」
える「それもそうなんですが、どの様に書いてあるか気になりまして」
奉太郎「終わった後で見ればいいさ、目の前で読まれるのはあれだ……恥ずかしい」
える「ふふ、分かりました。 それならば終わるまで我慢します」
俺が作った物は、つまりは氷菓のあらすじ。
簡単な物であったが、それを10個程、別々の書き方をしたのだ。
149: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:55:34.78 ID:Rgu1qEPC0
える「ですけど、折角作って頂いてあれですが……」
える「本当にこれで、お客さんは来てくれるのでしょうか」
奉太郎「恐らくはな」
奉太郎「たった10枚でも、勝手に人が人を呼んでくれる」
奉太郎「一人が読めば、それを他の奴に言うだろう」
奉太郎「そして言われた奴も、他の奴にそれを言う」
奉太郎「ここの生徒は千人程だ、全員に噂が広まる事はまず無いが……」
奉太郎「半数、五百人がそれを聞いたとしよう」
奉太郎「その内の十人に一人が買おうと思い、足を運べば完売だ」
える「五百人ですか、中々に厳しい数字では無いですか?」
150: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:56:02.37 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「噂の広まる速度は凄いぞ、例えば……」
奉太郎「昨日の大日向、俺と千反田が付き合っている事を知ったよな」
奉太郎「あれも恐らく、もうかなり広まっているかもしれない」
える「……そんな、恥ずかしいです」
そう言うと、千反田は今まで繋いでいた手を離す。
奉太郎「冗談だ、大日向はそんな奴じゃない」
える「だと良いのですが……」
こう言う、小さな反応が中々に面白い。
それを楽しんでいる辺り、俺のモットーも大分薄くなってきているのかもしれないな。
151: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:56:30.48 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「とりあえず、行くか」
奉太郎「ずっと廊下で話していても噂が広まる事も無いしな」
える「そうですね、まずは何から見ましょうか?」
奉太郎「と言われても、俺は特に見たい物は無いからなぁ」
奉太郎「任せる、千反田が気になる物を回ればいいさ。 それに俺は付いて行く」
える「そうですか、では行きましょう!」
152: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:57:20.08 ID:Rgu1qEPC0
~1時間後~
奉太郎「はあ」
結論から言うと、千反田とはぐれた。
俺の予想を超える事が、二つ程あった。
一つは、神山高校文化祭の人の多さ。
これは、今まで部室に引き篭もっていた自分が悪い。
とは言っても、一日ずっと部室に居たわけでは無い。
……しかし、それでもここまで人が多いとは思わなかった。
もう一つは、千反田の好奇心。
これは知っていた筈だ。
だが、あそこまで人込みを掻き分けて行くほど、強い物だとは知らなかった。
……けど、予め予想は出来た筈だ。 俺がしようとしなかっただけで。
とどのつまり、俺の注意力が不足していただけなのだろう。
153: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:57:46.88 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「さて、どうした物か」
ここでこうしていても、何も変わらない。
仕方ない、千反田を探す事にしよう。
そう思い、廊下を歩く。
そこまで千反田と離れているとは思わないが……
向こうも多分、探していると思う。
探している、よな?
奉太郎「まだはぐれた事に気付いていないって事は……無いと願いたいが」
呟き、廊下を更に進む。
154: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:58:14.21 ID:Rgu1qEPC0
やがて、何か妙な物が目に入ってきた。
奉太郎「あれは、テントか?」
テントの前には【占い研究会】と言った文字が見える。
占い研究会……確か、千反田の友達が入っていると聞いている。
名前は確か、十文字だったか。
奉太郎「一応、聞いてみるか」
結論を出し、テントの入り口を塞いでいるカーテンを捲る。
十文字「こんにちは」
奉太郎「早速ですまんが、尋ねたい事があってな」
十文字「構わないけど、まあ入って」
その言葉を聞き、俺は中に入り、床に座る。
155: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:58:48.21 ID:Rgu1qEPC0
十文字「久しぶり、折木君」
奉太郎「話すのは大分久しぶりな気がするな」
十文字「そうね、まあそれは置いといて」
十文字「聞きたい事って言うのは?」
奉太郎「千反田の事だ、あいつがどこに居るか知らないか?」
十文字「ごめんね、私は生憎何も知らない」
十文字「それより、えると二人で見て回ってるの?」
奉太郎「そうだが、それが?」
十文字「なるほど、と思っただけ。 気にしないで」
なるほど……? どういう事だろうか。
奉太郎「違ったら悪いが、もしかして」
奉太郎「文化祭を一緒に、回る事になっていたか」
十文字「驚いた、えるから聞いてはいたけど、本当に探偵みたいね」
何を言った、千反田の奴。
156: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:59:15.70 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「悪いことをした、すまん」
十文字「いいよ、気にしてないから」
十文字「それより、ちょっとだけ嬉しいし」
奉太郎「嬉しい? 何でまた」
十文字「えるにも、そんな人が出来たんだなって思うと」
十文字「だから嬉しいし、気にしてない」
奉太郎「……さいで」
十文字「折角だし、占って行く?」
占いか、信じている訳では無いが……何かヒントでも得られれば、多少は良いかも知れない。
奉太郎「それじゃ、お願いするかな」
十文字「タロットでいい? 一番得意なの」
タロットカードには良い思い出が無いんだが……まあ、別にいいか。
157: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 10:59:55.25 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「ああ、それでいい」
十文字「了解、じゃあ何か一つ……質問を」
奉太郎「質問か、そうだな……」
奉太郎「これから先の事、千反田と会えるか」
十文字「随分と素直な質問ね、分かった」
十文字はそう言うと、床にカードを並べる。
並べ終わった所で、今度はそのカードを混ぜ始めた。
並べる必要はあるのか? と聞きたかったが、ちゃんとした意味があるのかもしれない。
俺は占いに詳しい訳では無かったので、その疑問を口に出す事はしなかった。
その後、十文字は混ぜたカードから二枚を引き抜き、机に再度並べる。
158: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:00:25.86 ID:Rgu1qEPC0
十文字「じゃあ、行くわね」
奉太郎「ああ」
十文字「まずはこれ、恋人達」
十文字「正位置の意味する事は」
十文字「そうね、選択の時……と言った所かな」
奉太郎「選択の時? 俺の選択で千反田が見つかるって事か」
十文字「そこまでは分からない、けどもしかすると、これから先……もっと先の事を意味しているかもしれない」
奉太郎「もっと先……?」
十文字「いつか、分かる時が来ると思う」
また随分といい加減な……
そういう物なのだろうか?
十文字「何だか納得していない顔、もう一度やり直す?」
奉太郎「ううむ……いや、やっぱりいい」
159: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:00:57.37 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「そろそろ探しに行かないと、あいつも探しているだろうし」
十文字「そ、早く見つけてあげてね」
奉太郎「ああ、占いありがとうな」
十文字「君ならいつでも占ってあげる、またのお越しを」
そう言い、十文字は頭を下げる。
やはりと言うか、こいつもまた千反田と同じ様な立場に居るだけあり、とても様になっているお辞儀であった。
俺も十文字に軽く頭を下げ、テントから出る。
奉太郎「さて、結局何のヒントも掴めなかったが」
こんな時、あいつはどこに行くのだろうか?
逆に考えよう。 行けば会えそうな場所、だ。
となると……何個かあるが、一つずつ潰して行くしか無いか。
まずはそうだな、一番近い場所からにしよう。
160: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:01:26.90 ID:Rgu1qEPC0
~古典部~
里志「それで、ここに来たって訳かい?」
奉太郎「まあそうだな」
摩耶花「で、会えなかったって事ね」
奉太郎「お前らしか居ないなら、そうなる」
里志「悪いけど、今日は戻ってきてないよ、千反田さん」
奉太郎「……そうか」
摩耶花「そんな折木に良い事教えようかな」
奉太郎「お前の良い事は俺にとって悪い事なんだが、大体は」
摩耶花「何よ、知りたくないの?」
奉太郎「聞くだけ聞こう」
摩耶花「何か上から目線ね……」
161: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:02:25.50 ID:Rgu1qEPC0
伊原は俺の態度に顔を歪め、本当に嫌そうに語り始める。
摩耶花「さっき、一回教室に戻ったんだけどね」
摩耶花「一回会ったわよ、ちーちゃんに」
奉太郎「本当か? どこで会った?」
摩耶花「会ったのは廊下だけど、軽く話しただけよ」
摩耶花「ちーちゃんも折木の事探してたわ」
奉太郎「そうか、じゃあまた探してくる事にする」
摩耶花「ちょっと待って、伝言を頼まれてるから」
奉太郎「伝言?」
摩耶花「うん」
摩耶花「もし会ったら上に居ますと伝えてくださいっ
て言ってた」
上に? 一応はここが一番上の階なのだが。
ああ、そうか。
162: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:03:25.72 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「分かった、なら風でも浴びてゆっくりするさ」
摩耶花「ゆっくりするって、探さないの?」
奉太郎「探し回るのは面倒だ」
摩耶花「……あんた、また!」
怖い怖い、言い方を俺も気をつけた方がいいかもしれない。
里志「摩耶花、すぐに怒鳴ると年を取るよ」
摩耶花「そう言われても、折木がまた……」
里志「ホータローも、素直に言えばいいのに」
奉太郎「俺はいつも素直だ」
里志「分かっているんだろう? 千反田さんの場所」
奉太郎「まあな」
摩耶花「なら最初からそう言いなさいよ、ほんっと素直じゃないわね」
奉太郎「お前にだけは言われたくない」
摩耶花「ふん」
腕を組み、そっぽを向いた伊原に向かって、ひと言お礼を言うと、俺は部室を後にする。
向かう先は、あそこだ。
163: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:04:02.45 ID:Rgu1qEPC0
~屋上~
奉太郎「よう」
える「遅いですよ、大分待ちました」
奉太郎「本はといえば、千反田が急に人を掻き分けて進んだのがいけない」
える「私に付いて行くと言ったのは、折木さんの方です」
奉太郎「それを言われると、何も言えんな……」
奉太郎「でもまあ、文化祭を楽しんでいる様で何よりだ」
える「楽しんでいませんよ、一人で回っても面白く無いです」
奉太郎「お前な、そんな賞とかをぶら下げて良く言えたな……」
164: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:04:29.58 ID:Rgu1qEPC0
える「これは、その……声を掛けられてですね」
奉太郎「もしかして、はぐれた事に最初気付いていなかったか」
える「それは、あの」
奉太郎「ま、いいさ」
奉太郎「結果的に会えたなら、いいさ」
える「そうですか、でも何だか疲れてしまいました」
奉太郎「俺もだ、後はゆっくり回るか?」
える「ええ、お話でもしながら、回りましょうか」
その言葉を聞き、千反田の方に視線を向ける。
手に持っていたのは、どこか見た事がある様な物。
165: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:04:58.10 ID:Rgu1qEPC0
奉太郎「その手に持っているのって、写真か」
える「はい、そうです」
える「……見せませんよ?」
奉太郎「ただ懐かしいと思っただけだ、気にするな」
そう言い、屋上から降りる為の扉に手を掛けた。
える「待ってください、折木さん」
後ろからそう聞こえ、空いていた方の腕を掴まれる。
奉太郎「何だ」
える「……折木さんは、何故この写真を見て懐かしいと思ったのですか?」
166: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:05:33.91 ID:Rgu1qEPC0
あ、まずい。
奉太郎「いや、あれだ。 しばらく写真を見てなかったから、似たような見た目だったし」
自分で言って、ちょっと苦しいとは思う。
える「それだけじゃありません、何故これが写真だとすぐに分かったんですか?」
える「折木さんの目線からは、裏しか見えなかった筈です! 何故すぐに写真だと分かったか、気になります」
奉太郎「それは……あれだ」
える「あれとは?」
奉太郎「……男の勘って奴だ」
える「私は納得しませんよ、折木さん」
える「しっかりとご説明、お願いします!」
167: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:06:08.44 ID:Rgu1qEPC0
うう、参ったな。
える「場合によっては、じっくりとお話する必要が……」
奉太郎「た、例えば……どんな場合だったら?」
える「そうですね、例えば」
える「一年生の文化祭の時、折木さんが私の写真を見ていた場合、等ですね」
そして、にっこりと笑顔を向けてくる。
俺はそれに引き攣った愛想笑いを返し、なんとかこの状況を脱出できない物かと、思慮する。
える「それで、どうなんですか?」
奉太郎「ええっと……」
168: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:06:35.91 ID:Rgu1qEPC0
時には多分、諦めも肝心なのだろう。
こんな事なら、屋上に来るのでは無かった……
しかしあれだ、後悔先に立たず。
俺は恐る恐る、何故それが写真と分かったか、語る
のであった。
第26話
おわり
169: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 11:07:58.51 ID:Rgu1qEPC0
何故か改行が所々おかしい……ですが、第26話、終わりとなります。
乙ありがとうございました。
次回は、えるたそ視点からの文化祭となります。
172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/04(火) 12:54:42.39 ID:Nr/2unXO0
乙です。
文化祭楽しそうで何よりですねえ。やっぱりいいなあ。
タロットは僕も最近調べましたが、色々な意味があって悩みますね。
次回も2日後くらいですかね。楽しみにしています。
173: ◆Oe72InN3/k 2012/12/04(火) 16:05:36.56 ID:Rgu1qEPC0
乙ありがとうございます。
次回も恐らく今日と一緒くらいの時間に投下だと思います。
>>172
氷菓のss書いていると、色々な知識が身に付いて来る……(私の書いている物だと、花言葉等)
そう言った事を調べて、物語を書いている時の一つ一つが楽しかったりします。
一応、年内までにはこちらのシリーズを完結させたいので、間に合わない場合は一日一話ペースに変わるかもしれません。
後10話程ですが、お付き合いお願いします。
175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/04(火) 20:39:28.22 ID:UchZo96IO
期待
176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/05(水) 01:34:50.12 ID:E/YfwOJAO
乙!
やっぱ文化祭最高!
奉太郎、修羅場っ!
えるのコスプレは良かったな・・・
あと10話で終わりか・・
寂しいなあ・・・
一日一話更新とか、前作のスパートを思い出すな
あれは胸熱だった・・・
奉太郎、今度こそえるの手を離すなよ・・・!
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- 2013/01/07(月) 23:05:40|
- 氷菓
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