177: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:00:27.09 ID:diPQgWvT0
こんにちは。
第27話、第27,5話を投下致します。
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352561755/
178: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:01:40.67 ID:diPQgWvT0
える「折木さん! あそこに行ってみましょう!」
去年は色々とあり、私は文化祭に参加する事は出来ませんでし
た。
その分、とでも言えばいいのでしょうか。
いつも以上に、楽しむつもりで私は心待ちにしていました。
何より嬉しかったのは、折木さんが一緒に回ろうと声を掛けてくれ
た事です。
先約があったのですが、思わず二つ返事で快諾してしまいました
。
勿論、先に約束していたかほさんには謝りました。
私ももう少し、しっかりとしなければいけないかも知れません……
179: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:02:36.34 ID:diPQgWvT0
奉太郎「これは、奇術部か?」
える「ですね、マジックをやるみたいです」
奉太郎「マジックか、里志が言っていた奴かな」
える「福部さんは何かご存知だったんですか?」
奉太郎「いや、ただ面白いって言っていたな」
奉太郎「その後に駄目な所を指摘していたが……」
える「福部さんらしいですね」
える「では、中に入りましょうか」
奉太郎「そうだな」
奉太郎「それにしても、マジックに興味があるのか?」
える「はい、面白いと思いませんか?」
奉太郎「俺は特に……」
180: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:03:18.35 ID:diPQgWvT0
える「そうですか……折木さんにマジックをやって貰おうと思ったのですが」
奉太郎「やらんぞ」
える「残念です」
奉太郎「本気で言っていたのか」
える「そう思いますか?」
奉太郎「さあな」
える「ふふ、冗談です」
える「さ、行きましょうか」
奉太郎「ああ」
その後は、教室の中で奇術部のショーを一緒に眺めていました。
折木さんは口では先程の様に言っていましたが、意外にも集中して見ていました。
181: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:04:22.11 ID:diPQgWvT0
える「面白かったですね」
奉太郎「確かに、高校生にしては凄かったな」
える「折木さんはやはり、他に気になる所はありませんか?」
奉太郎「うーん、そうだな」
奉太郎「千反田に付いて行って回った方が、俺も楽しいかな」
える「そ、そうですか」
そんな事を言われ、何だか恥ずかしくなってしまいます。
える「あ、次はあそこに行きましょう!」
恥ずかしさを紛らわす為、手短にあったお店を見つけ、足早に向かいます。
える「これは、クイズでしょうか?」
どうやらそこではクイズ研究会の方達が、何やら小さな大会を開いている様です。
私は少しの間それを眺めていたのですが、司会者らしき人に手招きをされ、参加する事となってしまいます。
思いの他、クイズに夢中になってしまい、終わってみれば優勝していました。
182: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:05:03.46 ID:diPQgWvT0
ええっと、それより何かを忘れている様な……
そんな思いも、興味が惹かれる様々な物によって消えて行きます。
色々な場所に行き、最後に辿り着いたのは……占い研究会のテントでした。
える「こんにちは」
十文字「えるじゃない、どうしたの?」
える「色々と見ていたら、ここに着いたんです」
十文字「そう」
える「あ、これって」
十文字「そういえばさっき」
同じタイミングで声を発して、二人とも口を閉じます。
十文字「どうしたの? 先に言っていいよ」
える「すいません、ええとですね」
私は、床に置いてあるカードを指し、続けます。
える「私の前に、お客さんが来ていたんですか?」
183: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:06:24.40 ID:diPQgWvT0
十文字「うん、来ていたよ」
える「一枚だけ、まだ捲られていない様ですが」
十文字「随分と慌しいお客さんでね、一枚の結果だけ聞いて人を探しに行っちゃった」
える「ふふ、そうですか」
十文字「でも、あまり良い結果では無いし……聞かなくて正解かも」
える「どんな結果だったんです?」
私がそう聞くと、かほさんは伏せてあったカードを捲ります。
十文字「逆位置の運命の輪」
える「……確かに、あまり良い結果では無いですね」
十文字「でしょ?」
える「知らぬが仏、と言った所ですか」
える「それで、かほさんは先程、何を言おうと?」
十文字「……やっぱり大丈夫、気にしないで」
える「そう言われると気になります……」
184: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:06:56.79 ID:diPQgWvT0
十文字「ふふ、えるらしいね」
十文字「それより、大丈夫なの?」
える「ええっと、大丈夫とは?」
十文字「今日、一緒に見て回る人が居たんでしょ? 見た所……える一人だけみたいだけど」
える「……そうでした! すっかり忘れていました」
十文字「ほら、早く探しに行かないと」
える「すいません、ありがとうございます!」
かほさんに言われて、ようやく思い出しました。
今頃、折木さんは探しているのかも知れません……
私はかほさんに頭を下げ、そのテントから足早に去ります。
185: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:07:42.45 ID:diPQgWvT0
~廊下~
まずいです、見当たりません……
一度、古典部に戻った方が良いでしょうか?
そうです、もしかすると折木さんは部室で待っているのかも知れません。
私はそう思い、古典部へと続く廊下へと足を向けます。
丁度、その時でした。
摩耶花「あれ、ちーちゃん?」
える「摩耶花さん! 助かりました!」
摩耶花「え、ええっと。 助かった?」
える「ええ、実は折木さんとはぐれてしまいまして……」
摩耶花「ちーちゃんをほったらかしにするなんて、酷い奴」
える「い、いえ。 私がどんどんと先へ進んでしまって……」
摩耶花「それにしっかりと付いて行く位じゃないと、駄目ね」
える「そうですか……あ、もし会ったらですが」
える「上に居ます、とお伝えお願いできますか」
186: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:08:09.72 ID:diPQgWvT0
摩耶花「上に? どういう事?」
える「ふふ、折木さんなら多分、分かってくれます」
摩耶花「ふうん、まあいいけど」
摩耶花「でもちーちゃん、あんま折木に期待しない方が良いわよ」
える「そうですか? 頼りになりますよ」
摩耶花「そっか、ちーちゃんがそう言うならそうかもね」
える「ええ、ではお願いします」
摩耶花「りょーかい!」
私と摩耶花さんは手を振り、別々の場所へと向かいます。
そんな時、後ろから声が掛かりました。
摩耶花「ちーちゃん」
187: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:08:51.28 ID:diPQgWvT0
一度振り返り、摩耶花さんの姿を再び視界に入れます。
少しだけ、悲しそうな顔をしていたのが印象に残っています。
える「はい、どうしましたか?」
摩耶花「あの事、まだ折木には言ってないの?」
える「……まだ、言えません」
摩耶花「そっか」
摩耶花「卒業までには、ちゃんと言ってあげてね」
える「はい、分かっています」
える「……もし」
える「もし、黙って居たままだと、どうなりますか?」
摩耶花「そうしたら私が言う、言わないって選択は出来ないよ」
える「ふふ、そうですか」
える「……安心してください、ちゃんと伝えます」
188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/06(木) 13:09:17.32 ID:diPQgWvT0
摩耶花「それが聞けて安心したよ、それじゃあまた後で!」
える「ええ、ありがとうございます」
再び、私達は別々の場所へと向かいます。
私は、屋上へ。
摩耶花さんは、部室へ。
その行動が、もしかするとこれからの事を表しているのでしょうか。
今はまだ、分かりません。
189: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:10:09.08 ID:diPQgWvT0
~屋上~
える「風が冷たいですね」
える「もう、すっかり秋ですね」
える「冬も近いです」
そんな私の呟きに、答えてくれる人は居ませんでした。
先程の摩耶花さんの言葉がよぎります。
える「まだ、勇気が出ないんです」
でも、言わないままだと……去年と同じ事になってしまいます。
しかし、言えば何かが変わってしまいそうで、私はそこに踏み出す勇気がどうしても出ませんでした。
える「……一人は辛いですよ、折木さん」
……折木さんはどこに行ったのでしょうか。
でも、私が勝手に離れ、はぐれたのです。
……折木さんは来てくれるのでしょうか。
190: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:10:36.53 ID:diPQgWvT0
それもまた、私の勝手な願いです。
いけません、折角の文化祭、こんな暗い顔をしていては駄目です。
そんな時、私の願いが通じたのか、校舎に繋がる扉の奥から足音が聞こえてきます。
すぐに分かりました。 この足音は折木さんの物だと。
今までの暗い顔を消し、いつも通りの顔に戻します。
やがて扉が開き、一番会いたかった人の顔が見えます。
奉太郎「よう」
える「遅いですよ、大分待ちました」
191: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:11:03.68 ID:diPQgWvT0
折木さんはそのまま私の隣まで歩き、一緒に景色を眺めます。
二言程、やり取りをした気がします。
やはり、言わなくては駄目でしょう。
私が、高校を卒業したら……
神山市を去ると言う事を。
第27話
おわり
192: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:11:33.80 ID:diPQgWvT0
以上で第27話、終わりとなります。
続いて第27,5話を投下致します。
193: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:12:35.46 ID:diPQgWvT0
里志「見事完売! 皆お疲れ様」
古典部の部室に、里志の声が響き渡る。
奉太郎「と言っても、結局一人三冊買う事になったけどな」
摩耶花「完売は完売でしょ、気にしない気にしない」
える「これで、最後の文化祭も終わりですね……何だか寂しいです」
千反田は顔を少しだけ伏せ、漏らす様にそう言った。
里志「確かにね。 早い物だよ、本当に」
摩耶花「でも良かったんじゃない? 折木も最後はようやく部室から動いたし」
一年の時も二年の時も、それなりに動いたと言うのに……
194: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:13:50.22 ID:diPQgWvT0
奉太郎「一年や二年の時だって、全く動かなかった訳じゃないぞ」
里志「へえ、どのくらい?」
奉太郎「……15分くらい」
里志「それって、殆どトイレでしょ」
奉太郎「それでも部室から出るには出た」
里志「微妙な所だね、それは」
える「でも、氷菓の売上に大きく貢献していると思いますよ」
奉太郎「ほら見ろ、俺のおかげだ」
千反田の言葉を聞き、少しだけ胸を張る。
える「皆さんのおかげですよ、折木さん」
だそうで、失礼しやした。
195: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:14:16.46 ID:diPQgWvT0
摩耶花「ちーちゃん、折木を褒めても何も出ないって」
奉太郎「何だ、折角打上げで俺の家に呼ぼうと思っていたのに、残念だな」
里志「ホータロー、そういう大事な事は先に言わないと駄目だよ」
奉太郎「さいで」
える「ふふ、ではこれから折木さんのお家で打上げをしましょう!」
奉太郎「まだ思っていると言っただけで、呼んではいないんだが……」
える「え、そうなんですか……」
千反田が少しだけ、悲しそうな顔をしていた。
それを見て、真っ先に口を開く奴が一人。
摩耶花「あ、悲しませてる」
里志「折角、打上げ出来ると思ったのになぁ」
いや、二人だったか。
196: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:14:42.14 ID:diPQgWvT0
奉太郎「……分かったよ、今から俺の家に行こう」
里志「さすが、良く分かってるよホータロー」
奉太郎「千反田の家でも良いと思うがな」
える「あ、私の家でも大丈夫ですよ」
里志「いやぁ、たまには小さい所でやりたいと思わないかい?」
里志「千反田さんの家は、確かに良いんだけど……悪く言う訳じゃないんだけどね」
里志「落ち着かないって、感じかなぁ」
える「そうですか、でも折木さんの家は落ち着ける、と言うのは分かりますね」
摩耶花「そうそう、丁度良い狭さよね」
奉太郎「お前ら、よく揃いも揃ってそこまで失礼な事が言えるな」
197: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:15:10.43 ID:diPQgWvT0
里志「はは、褒めているんだよ」
奉太郎「どこがだ」
摩耶花「褒めてるとしても、それは折木じゃなくて家に対してだけどね」
奉太郎「……さいで」
える「あの、お話はここまでにして、そろそろ時間が……」
摩耶花「もうこんな時間? 急がないと」
奉太郎「んじゃ、そのまま行くか?」
える「ええ、そのつもりです」
摩耶花「あ、私は一回帰ろうかな」
198: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:15:37.40 ID:diPQgWvT0
奉太郎「そうか、里志は?」
里志「うーん、僕はそのままでも良いんだけど」
里志「いや、やっぱり一度帰るよ。 また後で」
える「は、はい。 また後ほど」
里志が変に俺と千反田の方を見て、自分の意見を変えた様だ。
……もしかすると、里志はもう気付いているのだろうか?
まあ、別に知られたからと言ってどうって訳でもない。
ただなんとなく、言いそびれただけだ。
199: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:18:42.84 ID:diPQgWvT0
~帰り道~
奉太郎「ようやく終わったな」
える「私にとってはとても短かったです」
奉太郎「そりゃ、あれだけ楽しんでいればそうだろう」
える「最後の文化祭を、折木さんと一緒に回れたのは嬉しかった
です」
奉太郎「……それは、俺も思った」
える「ふふ、そうでしたか」
奉太郎「とにかく、これで行事って言う行事は全部終わったな」
奉太郎「後は、卒業だけか」
200: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:19:46.14 ID:diPQgWvT0
すると、千反田がとても不思議そうな顔をしながら俺の顔を覗き込んでくる。
奉太郎「……何だ」
える「まさか、本当に忘れているんですか」
奉太郎「えっと……何を?」
える「修学旅行です! 今月ですよ?」
奉太郎「ああ……そう言えば、そんな話もあった気がする」
奉太郎「で、場所は?」
える「北海道です、楽しみですね」
奉太郎「……寒そうだ」
える「もしかすると、雪も見れるかもしれないです」
奉太郎「雪か」
俺はそれを聞き、ただなんとなく……去年の事が頭をよぎった。
第27,5話
おわり
201: ◆Oe72InN3/k 2012/12/06(木) 13:21:54.11 ID:diPQgWvT0
以上で第27,5話、終わりとなります。
乙ありがとうございました。
204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/06(木) 16:16:28.49 ID:C+9rrftIO
逆位置の運命の輪知らんからググった
なにこれ絶望まっしぐら
205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/06(木) 20:27:22.36 ID:gFum2ocso
文化祭の出し物に夢中になって奉太郎の存在忘れてしまうえるたそもえるたそだな。
そこも含めてのえるたそだが。
207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/06(木) 23:27:15.72 ID:5RPYXkT/o
別れは確定なんだから早く開放してやろうとは思わんもんかね
211: ◆Oe72InN3/k 2012/12/07(金) 12:24:04.08 ID:TzV7c2750
>>207
勿論、それはえるたそ自身も感じていると思います。
ですが、心のどこかで期待しているのかもしれませんね。
文章では表し切れていない、登場人物の心境等も考えて頂ければ私は幸せです……
>>210
いえいえ!
むしろ氷菓SS雑談スレになってもいいくらいの(ry
次回投下ですが、月曜日になるかもしれないです。
時間が空けば土曜日or日曜日に投下できますが……現在の所、月曜濃厚です。
212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/07(金) 21:41:58.37 ID:PwkHI0oN0
タロットが示す未来は、今のまま行けばこうなるかもしれない・・・という予測に過ぎない。
本人の変わりたい、変えたいという気持ちが未来を切り開く。それがタロットの意義。
奉太郎はもう以前のままじゃあない。
つまり・・・みんな、まだ諦めるなよ!
214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/10(月) 13:47:20.14 ID:pS3ZFk8J0
しばらく来なかったら大変なことに
- 関連記事
-
- 2013/01/08(火) 23:07:40|
- 氷菓
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
-
|
-