215: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:26:58.59 ID:rXL294y90
こんばんは!
第28話、投下致します。
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352561755/
216: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:27:45.40 ID:rXL294y90
奉太郎「寒すぎる、まだ十月だぞ」
里志「とは言っても、十月も終わりさ」
里志「もう十一月みたいな物だよ」
奉太郎「まあそうだが……」
里志「それで、実際の所どうなんだい?」
奉太郎「どうって、何がだ」
今、俺と里志は北海道のとある旅館の一室に居た。
二泊三日の修学旅行、何もこんな寒い所まで来なくても良いと思うのだが……
むしろ、夏にして欲しかった。
217: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:28:17.78 ID:rXL294y90
里志「千反田さんとの事さ」
里志は窓際に腰を掛け、続ける。
里志「僕の予想が正しければね」
里志「奉太郎と千反田さんは……」
奉太郎「付き合っている、って所か?」
里志「はは、分かっているじゃないか」
里志「それで、どうなんだい?」
奉太郎「……否定する理由も無いな、お前の予想通りだ」
里志「そうかい」
そう言った里志の顔は、どこか悲しそうな……そんな顔だった。
218: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:29:14.59 ID:rXL294y90
奉太郎「別に隠していた訳じゃない」
里志「言う必要が無かったから?」
奉太郎「そういう訳でも無い、と思う」
里志「なら、そこまで言う理由が無いから?」
奉太郎「そういう事でも無い……なんだろう」
奉太郎「なんとなく、言い辛かったのかもな」
里志「ホータロー、それを隠していたって言うんだよ」
里志「それに気付いて居ない所が、ホータローらしいや」
奉太郎「……そうか」
里志「ま、僕は良いと思うよ」
219: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:31:14.63 ID:rXL294y90
里志「千反田さんは美人だし、頭脳も明晰だ」
里志「それに行動的だしね、実にお似合いじゃないか」
奉太郎「お前、遠まわしに俺を馬鹿にしているだろ」
里志「はは、やっぱりそう思う?」
奉太郎「まあ、お前の言う通りかもしれない……一点を除いて」
里志「つまり?」
奉太郎「俺は面倒臭がりだし、頭も良いって程でも無い」
里志「確かに」
奉太郎「里志、お前よりは良いけどな」
里志「否定出来ないのが辛いね」
奉太郎「それで、さっきお前はこう言ったよな」
奉太郎「俺と千反田はお似合いだと」
220: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:32:46.56 ID:rXL294y90
里志「ああ、少なくとも僕はそう思うよ」
奉太郎「もっと広い視野で見ると、違うんじゃないかと思う」
里志「広い視野で?」
奉太郎「……千反田は、詰る所……お嬢様だろ」
奉太郎「俺は何でもない普通の奴だ」
奉太郎「それを考えても、お似合いだと言えるか?」
里志「ホータロー」
里志「それは、違うんじゃないかな」
奉太郎「どう違うんだ」
里志「周りから見てどうかなんて、関係ないよ」
里志「千反田さんは、ホータローの事が好きだから一緒に居るんだ」
里志「今ホータローが思っている事、それは千反田さんを裏切る事になるんじゃないかな」
里志「それにね」
里志「少なくとも、千反田さんはそんな事……考えていないと思うよ」
221: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:34:01.38 ID:rXL294y90
奉太郎「それは、お前の予想だろ」
俺が里志にそう言うと、困ったように笑いながら返答した。
里志「話の続きは今度にしようか、そろそろ行かないと」
そう言いながら、里志は部屋に掛けられている時計を指差す。
奉太郎「もうか、まだ着いて少ししか経ってないぞ……」
里志「文句を言うなら僕じゃなく、先生方に」
奉太郎「へいへい」
里志「……ホータロー」
部屋を出ようとした俺の背中に向かって、里志が声を掛けて来る。
奉太郎「まだ何かあるのか」
222: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:34:37.88 ID:rXL294y90
里志「後で少しだけ、言っておきたい事があるんだ」
里志「時間が取れる時で構わないんだけど」
奉太郎「歩きながらとかでも良いだろ、あいつらと合流した後だって」
俺が言うあいつらとは、伊原と千反田の事である。
高校生活を送るにつれ、古典部のメンバーと行動を共にする事は大分多くなった。
そのせいか、修学旅行での行動も一緒にする事となっていた。
里志「できれば落ち着いて話せる所が良いかな」
奉太郎「そうか、なら夜だな」
里志「うん、分かった」
里志「じゃあそろそろ行こうか、怒られて無駄な時間は過ごしたく無いし」
奉太郎「ああ、そうだな」
223: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:35:11.70 ID:rXL294y90
一日目は特に街に出て回ることも無く、何やら説明が多かった気がする。
その後は班毎に分かれ、明日からの計画の確認、と言った所だ。
奉太郎「何で冬も近いのに北海道なんだろうな」
里志「冬だからこそって考えようよ」
摩耶花「でも、夏の北海道より冬の北海道って方がそれっぽいよね」
それっぽいとは何だ、具体的に説明して欲しい。
える「夏も良いんですよ」
える「自然が豊富な地域なので、冬とはまた違った感じで楽しめます」
える「ひまわり畑やラベンダー畑も有名ですね」
摩耶花「あ、それテレビで見たことあるかも」
224: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:38:12.35 ID:rXL294y90
里志「僕達の地元じゃ見られない光景だからね、夏は中々良い物だよ」
奉太郎「なら、やはり夏で良かったな」
里志「って言っても、冬も中々に良いと思うけどね」
える「そうですね」
える「冬はお祭や、イベント等が沢山ありますね」
摩耶花「でも、雪祭りって二月じゃない?」
里志「まあ、そうなんだけどね」
奉太郎「なら、何度も言うが夏で良かったな」
里志「この時期に来ちゃったんだから仕方ないさ、何も無いって訳じゃないんだし」
える「そうですよ! 折角の修学旅行ですよ!」
奉太郎「あ、ああ」
225: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:39:33.75 ID:rXL294y90
最終的には力技となり、俺も結局は納得する……させられる事となる。
える「一緒に楽しみましょう、折木さん!」
奉太郎「わ、分かった、分かったらちょっと離れよう」
里志が嫌な笑い方をしていた、ほっとけ。
里志「どうしよっか、そろそろ部屋に戻る?」
摩耶花「そうね、話す事も無さそうだし……」
える「分かりました、では一度戻りましょうか」
226: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:41:58.59 ID:rXL294y90
部屋に戻ってからはすぐに夕食の時間となり、それが終わってからは風呂に入る。
全部終わった頃には20時くらいで、部屋の窓から見えるのは街の小さな光だけだ。
奉太郎「それで、昼間言っていた話って言うのは?」
里志「覚えていたのかい、珍しいね」
奉太郎「あんな風に言われたら、嫌でも覚えてるさ」
里志「それもそうだね」
奉太郎「で、何だ」
里志「これは多分……多分と言うか、言っちゃ駄目な事なんだけどさ」
奉太郎「なら別に、言わなくてもいいぞ」
何だろうか、里志がこんな前置きするのは滅多に無い事だ。
里志「……話の内容は千反田さんの事だけど、それでもかい?」
奉太郎「だから何だ、言いたくないなら言わなくて良いって言っている」
227: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:42:37.99 ID:rXL294y90
里志「分かった」
里志「回りくどい前置きをして悪かったね、僕も悩んでいたんだ」
奉太郎「……構わない」
里志「じゃあ、本題に入るけど」
里志の顔が、珍しく真面目な物へと変わる。
それと同時に、空気が変わるのも感じた。
里志「千反田さんが居なくなったら、ホータローはどうする?」
奉太郎「千反田が居なくなったら? どういう事だ」
里志「考えた事はあったのかなって、思っただけだよ」
奉太郎「無いな」
里志「……そうかい」
奉太郎「……急にどうしたんだ」
里志「ホータローが昼間言っていたじゃないか」
里志「俺と千反田はお似合いなのか、って」
228: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:43:16.66 ID:rXL294y90
里志「勿論、ホータローの考えも分からない訳じゃない」
里志「でも、もし千反田さんが居なくなるとしたら……君はまた同じ事を言うのかなって思ったんだよ」
奉太郎「俺は……」
そんなのは嫌だと、はっきりとした気持ちが湧いて来るのは分かった。
だがそれでも、やはり考えてしまう。
以前、千反田に距離感について話したことがあった。
あいつは恐らく、もうそんなのは感じていないと思う。
しかし俺は、俺はどうなのだろうか。
付き合う事で、そんな物は無くなると思っていた。
だが、ふとした事でそれを思い知らされる。
日常のちょっとした動作から、家の事。
これは多分、他人に聞く事ではないのだろう。
ならば自分で考えるしか、無いか。
229: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:43:46.86 ID:rXL294y90
里志「もう一度、聞くよ」
里志「もし千反田さんが、居なくなるとしたら……君はどうするんだい?」
俺は。
奉太郎「……諦めない」
里志「それを聞けて安心したよ、ホータロー」
里志「話したら喉が渇いたね」
里志「飲み物買ってくるけど、何か飲むかい?」
奉太郎「……なら、コーヒーで」
里志「了解」
230: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:44:12.97 ID:rXL294y90
そう言い、里志は扉に手を掛けた。
奉太郎「一つ、聞いていいか」
里志「何かな」
奉太郎「さっきお前が言っていた、千反田が居なくなるって言うのだが」
奉太郎「……あれは、冗談か?」
里志「……」
その問いに、里志は答えなかった。
第28話
おわり
231: ◆Oe72InN3/k 2012/12/10(月) 17:44:38.33 ID:rXL294y90
以上で第28話、終わりとなります。
乙ありがとうございました。
232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/10(月) 18:52:19.53 ID:NICCnviC0
乙です。
とうとう始まりましたか。逆位置の運命の環が。
それにしても秋、と言うか初冬??の北海道って、寒そうですね。
234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/10(月) 22:14:51.38 ID:dLKZ7V09o
流石ホータロー勘が鋭い
235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/11(火) 00:00:06.47 ID:PU2NToDAO
乙!
ああ・・・怖いけど、先が見たい・・・。
前作は、最後はハッピーになると信じてたから衝撃が凄まじかったんだよな・・・
今回は・・・
奉太郎ぉお・・・
手を伸ばせば届くはず!
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- 2013/01/09(水) 22:08:52|
- 氷菓
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