301: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:47:57.31 ID:tlaicaxQ0
青春画像スレを見ていたら涙が……
では第31話、投下致します。
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352561755/
302: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:48:50.78 ID:tlaicaxQ0
12月の終わり、つまり1年の終わり。
正確にはまだ数日あるが、もう終わりと言っても問題は無いだろう。
そんなある日、俺は休みの学校の前で人を待っていた。
える「お待たせしました」
俺が待つ数人の内の一人がようやく姿を現す。
寒さのせいか、千反田の顔は少し紅潮していた。
奉太郎「ああ」
結局、千反田とはあれから何も変わらずに、前と同じように付き合っている。
奉太郎「里志達はまだみたいだが、先に行くか?」
千反田もその事には触れなかったし、俺も敢えて触れようとは思わなかった。
える「折角ですし、お待ちしましょう」
勿論、俺が考えている事なんて言えない。
奉太郎「そうか」
千反田はもう、決心が付いたのかもしれないから。
303: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:49:22.02 ID:tlaicaxQ0
奉太郎「それにしても、この時期は忙しいんじゃないのか?」
える「ええ、そうですね」
える「今日は何とか、予定を空けて置きました」
俺は一度、千反田と距離を取ろうか悩んでいた。
だが、里志に相談したら「摩耶花にばれたら、来年を迎えられないかもね」等と脅してくる物だから、千反田とは以前と変わらず接している。
こんな感じで理由を付けるのは簡単だ。
実際の所……俺も諦めてはいない物の、それがうまく行かなかった時の為に保険を掛けていたのだろう。
千反田との思い出と言う名の保険を。
それに少しだけ罪悪感を感じながら、千反田と二人で里志達を待っていた。
304: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:49:58.60 ID:tlaicaxQ0
える「私はこうして静かに待っているのも良いのですが」
える「何か、お話でもしませんか?」
ふいに千反田が話しかけてくる。
奉太郎「いい案だが、俺には生憎……話のネタは持ち合わせて居ないな」
奉太郎「千反田は何かあるのか?」
える「ええ、一つあります」
奉太郎「ほう、聞こう」
千反田は小さく「コホン」と咳払いをし、口を開く。
305: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:50:30.22 ID:tlaicaxQ0
える「今日の夕方の事なのですが」
奉太郎「……言い方によっちゃ、今も夕方だけどな」
える「あの! 最後まで聞いてください」
千反田は俺に顔を近づけ、そう言った。
……これには未だに慣れない。
える「ええとですね、チョコレートを食べていたんですが」
奉太郎「夕方に? 太るぞ」
える「おれきさん」
奉太郎「わ、分かった。 最後まで聞く」
306: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:50:56.49 ID:tlaicaxQ0
える「……いつもお菓子を食べる様に、二つほど食べたんです」
える「その時、丁度電話が鳴ったので」
える「私は電話を取る為に、そこから一度離れたんですね」
える「電話の内容は取り留めも無い物でした」
える「それでですね、戻ってみると……無かったんです」
奉太郎「チョコレートが?」
える「はい、そうです」
える「私、それが少しだけ気になっていまして」
なるほど、要は「気になります」と言う奴か。
307: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:51:22.25 ID:tlaicaxQ0
奉太郎「考えてみろって所か、構わんが」
奉太郎「まず、家に千反田以外は居たのか?」
える「ええ、母親が居ました」
奉太郎「なら母親が仕舞ったんじゃ無いのか」
える「私もそう思いまして、聞いたのですが」
奉太郎「否定された訳か」
える「……はい」
奉太郎「だけど、家には千反田以外だと母親しか居なかったんだろう?」
える「その筈ですね」
奉太郎「ならそうとしか考えられないんだが」
える「私も、それで間違いは無いと思います」
奉太郎「……そう言うことか」
奉太郎「つまり、過程が気になるって事だな」
308: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:51:51.88 ID:tlaicaxQ0
える「そうです、私が電話を受けている間」
える「何故、チョコレートが消えたのか」
える「何故、母は否定したのか」
える「気になるんです」
そうは言われても、流石に話だけから答えを出すのは……ちと厳しい。
ならばどうするか、だが。
奉太郎「物はついでだな」
える「と、言いますと?」
奉太郎「どうせこの後、千反田の家だろ?」
奉太郎「その時に、その場所とかを案内して貰えば答えが出るかもしれない」
える「ふふ、現場検証……と言う奴ですね」
奉太郎「そこまで言うほどの物でも無いけどな」
千反田は何故か、嬉しそうな表情をしていた。
309: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:52:20.35 ID:tlaicaxQ0
奉太郎「にしても、遅いな」
える「そろそろだとは思うのですが……」
奉太郎「俺と千反田も、そろそろ携帯でも持った方が良いかもな」
える「かもしれませんね」
そうだ、二つほど聞いておきたい事があったんだ。
奉太郎「最後に二つ、確認していいか」
える「はい、何でしょうか?」
奉太郎「あまり関係は無いけど」
奉太郎「千反田が食べたチョコレートって、あれか」
奉太郎「中に酒が入っている奴か?」
える「ウィスキーボンボンですね、そうです」
310: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:52:49.33 ID:tlaicaxQ0
奉太郎「だからか」
える「と言うのは?」
奉太郎「いや、いつもより顔が赤かったから」
える「本当ですか、気付きませんでした……」
奉太郎「それより、前より強くなったか?」
える「何故ですか?」
奉太郎「性格が変わっていなかったからな」
える「前がどの程度だったのか分かりませんが……折木さんが言うならそうかもですね」
と言うか、たった2個で酔われてしまっては面倒な事この上無い。
それと、今回のはアルコールが弱かったのか。 前回のはちょっと強すぎたからな……
311: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:53:21.93 ID:tlaicaxQ0
奉太郎「ま、それなら二つ目の確認したい事は必要無いな」
える「私、それも少し気になりますが」
奉太郎「そうか」
それにしても、里志達がまだ来ない。
全く、人を待たせるとは随分といい身分になった物だな。
える「気になります」
奉太郎「そうかー」
タイミング的には今来てくれると非常に助かるのだが……
える「教えてください、折木さん」
千反田は俺の腕を掴み、ぶんぶんと振ってくる。
奉太郎「お前、やっぱり酔っているだろ」
える「折木さんが教えてくれれば、問題ありません」
助け舟はまだ来そうにない、か。
312: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:53:48.51 ID:tlaicaxQ0
奉太郎「分かった、説明する」
える「はい! お願いします」
奉太郎「聞く前に一つ頼みがある」
える「どうぞ、お聞きします」
奉太郎「聞いても怒らないって約束してくれるか」
える「つまり、私が怒るような内容と言う事ですね」
奉太郎「念の為言っただけさ」
える「聞いてから決めます」
奉太郎「……さいで」
奉太郎「俺が聞きたかったのは」
313: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:54:15.10 ID:tlaicaxQ0
奉太郎「千反田、お前が気付かない内にチョコレートを全て食べた可能性についてだ」
奉太郎「だが、それも無いだろう」
奉太郎「何故かと言うと、お前が普段どおりだからだ」
奉太郎「もし、全て食べていたなら今頃俺は帰りたいと思っていた筈だ」
奉太郎「と言う事なんだが……」
える「……」
ほら、怒ったじゃないか。
千反田は頬を膨れさせ、俺の方を見ていた。
える「私、そんな欲張りではありません」
奉太郎「……けど、前に千反田が持ってきた時はほとんど食べてなかったか?」
える「それは、そうですけど……気になってしまったので」
314: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:54:41.13 ID:tlaicaxQ0
奉太郎「なら別に、俺が言っている事はおかしく無いと思うが」
える「それでも、酷いです!」
だから、そんな顔を近づけないで欲しい。
里志「あれ、珍しい喧嘩だね」
そう言いながら、ようやく助け舟が来たようだ。
奉太郎「遅いぞ里志、凍死させる気か」
里志「ごめんごめん」
里志が遅刻するのは珍しい事でも無いし、その場はそれで終わる。
える「話を逸らさないでください、折木さん」
と思っていた、ついさっきまで。
摩耶花「どしたの? 何かあった?」
奉太郎「何でもない」
315: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:55:29.78 ID:tlaicaxQ0
える「では一度、私の家でお話しましょう。 皆さんも一緒に」
千反田の微笑みが、今日は少し怖い。
奉太郎「何だか、今日は用事があった気がしてきた」
里志は別に問題無い、あるとするなら伊原の方だ。
こいつはやけに千反田の肩を持つせいで、一方的に俺が被害を被る事になるだろう。
里志「あはは、ホータローに用事とは、今年も終わりだけど最後に笑わせて貰ったね」
そう言うと、里志は俺にだけ聞こえる様に小さく続ける。
里志「それにさ、ホータローの用事には全部千反田さんが絡んでいるじゃないか」
里志「違うかい?」
316: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:55:57.66 ID:tlaicaxQ0
こいつも敵だった。 すっかり忘れていた。
奉太郎「……ああ、用事なんて無かったな」
奉太郎「はぁ」
える「ふふ、それでは皆さん揃いましたし、行きましょうか」
里志「そうだね、あまり外に居たら風邪を引いちゃうよ」
摩耶花「ちーちゃんは1回、風邪引いてるしね。 気をつけないと」
待たせたのはどこの誰だ、と言いたいがやめておく。 これ以上腫れ物には触れたく無いからだ。
あれ、そう言えば……今日は何の集まりだったっけか。
そんな疑問を、口にした。
奉太郎「……今日は何の集まりだっけか」
317: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 16:56:26.46 ID:tlaicaxQ0
摩耶花「今日? あれ、何だっけ」
える「ええと、そう言えば目的ある集まりではありませんね」
里志「いや、あるよ?」
奉太郎「あるのか? じゃあどんな目的だ?」
里志「そうだね、敢えて言うなら」
里志「古典部忘年会って所かな」
はあ、忘年会ね。
……何で俺は、今日参加したのだろうか。
こたつが恋しい。
第31話
おわり
318: ◆Oe72InN3/k 2012/12/15(土) 17:00:07.88 ID:tlaicaxQ0
以上で第31話、終わりとなります。
いよいよ終わりが近づいて来た……
一応、本編は35話となっております。
本編が終わりましたら、短編をいくつか用意しているので、そちらを投下させて頂きます。
これはどうでもいい話なんですが、ココロコネクト?というアニメの聖地が私の家から徒歩10分の所でした。
何枚か画像を見たら見覚えがある場所だらけで・・・
320: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/15(土) 21:14:20.28 ID:E7p5ZkSDO
乙
もうすぐ終わりか……
寂しいけど短編含めて堪能しよう
聖地というか現実のロケーション使ったアニメがすごい増えたよな
タイアップや背景が楽とかメリットが多いからかな、自分ちの近所には一切縁が無さそうだけど
321: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/15(土) 21:53:16.53 ID:W9VqgJCAO
乙!
あと4話・・・だと!?
寂しいな・・・
てか、あと少しで完結って、二人の話が納まるのか・・・?
気になるけど、あと4話!待ってるぜ
323: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/15(土) 22:49:12.12 ID:1nHbdqcLo
乙
もうすぐか
>>320
前にテレビで見た感じだと、無から有を生み出すのは大変だからだそうだ
現実にある場所の方が時間も金もかからんらしい
制作者側のコストパフォーマンスと、視聴者側の作品に対する愛から、結果的に聖地巡礼産業が生まれたと考えられそうだ
328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/18(火) 22:53:31.62 ID:8fkGxW7Qo
続きはよ
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