478: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:10:50.64 ID:e7a8f0Q60
こんばんは。
短編一話、投下致します。
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352561755/
479: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:11:16.34 ID:e7a8f0Q60
2月のとある日の事です。
私は折木さんに、ある事を相談していました。
内容は「入須さんの卒業祝いに何かをあげる」と言う単純な物でしたが……折木さんは快く賛成してくれました。
ですが、卒業まであまり時間はありません。
出来れば、何かしらの映像等を撮って観て貰おうと思ったのですが、折木さんに却下されてしまいました。
曰く、それだと時間が足りなすぎる。 だそうです。
確かに、ぐうの音も出ないほどに正論だとは思いました。
でも、そうしたら何をプレゼントしたら良いのでしょうか?
そうして休みの二日の内、一日を使って考えたのですが……何も思い浮かばなかったんです。
私としては……こう、楽しめる映像を撮って観て貰う事しか考えていなかったので……
480: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:11:44.03 ID:e7a8f0Q60
それ以外となると、全く頭に浮かびません。
その事を折木さんに相談したのが、昨日の夜の事でした。
私が話すと、折木さんは「お前、何の映像を撮るかも考えていなかっただろ」と仰いまして。
……全くその通りだったのが、少し悔しいです。
何かしら反論をしようと思い、しかしその言葉すら出てこず、あたふたしていると折木さんは言ってくれました。
明日、会えるか? 会えるならプレゼントの内容を考えよう。 一緒に。
こうしてやはり、助け舟を出されるのでした。
いつか、何かしらの形で恩返しをしなければなりませんね。
481: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:12:09.53 ID:e7a8f0Q60
~千反田家~
奉太郎「おい、話聞いてるか?」
える「え、あ、ごめんなさい」
おいおい、俺が折角案を出していると言うのに……
奉太郎「と言うか、千反田が話を聞き漏らす何て珍しいな」
奉太郎「何か気になる事でもあったのか?」
える「い、いえ。 そう言う訳では無いです」
奉太郎「……まあいいか」
奉太郎「んじゃ、もう一度話そう」
える「すいません、お願いします」
千反田が軽く頭を下げたのを見て、俺は先程出した案をもう一度説明し始める。
482: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:12:39.13 ID:e7a8f0Q60
奉太郎「まず、あの入須が喜びそうな物だが」
奉太郎「そうだな、辞書とか喜ぶんじゃないか」
える「辞書、ですか?」
奉太郎「ああ、勉強が好きそうだし」
える「あの、真面目に言ってます?」
奉太郎「……半分くらいは」
いかん、千反田が少し怒っている気がする。
奉太郎「ええっと」
一度小さく咳払いをし、次の案を出す。
奉太郎「そうだな、それなら」
奉太郎「季節にあった物とかが良さそうだが……」
483: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:13:13.13 ID:e7a8f0Q60
奉太郎「何かあるか?」
える「季節にあった物ですね」
える「なら、そうですね」
える「手袋等は、どうですか?」
奉太郎「手袋か、良いかもな」
うむ、良い案だと思う。
……でも、卒業式は3月だったよな。
今ならまだ良いが、3月ともなると少し季節外れじゃないだろうか。
千反田は本当に、どこか抜けている部分がある。 今もその事実に気付いていない様だし。
まあ、いっか。
484: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:13:49.93 ID:e7a8f0Q60
奉太郎「手袋だけだとなんか寂しいな」
奉太郎「マフラーとかも、一緒に渡すか?」
える「良いですね、賛成です」
おし、話は決まった様だな。
奉太郎「なら、次の休みにでも買いに行こう」
奉太郎「駅の方に行けば何かしらあるだろ」
える「え? 何を買いに行くんですか?」
奉太郎「決まっているだろ、手袋とマフラーだよ」
える「ですが、わざわざ買いに行かなくても……」
奉太郎「ならどうするんだ、まさか使った奴でも渡す気か?」
える「いえ、違いますよ」
える「作るんです、手作りですよ」
485: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:14:16.51 ID:e7a8f0Q60
これは俺のミスだ、仕方ない。
手袋やマフラーでは無く、ペンダントとかにしておけば良かった。
そうすればさすがの千反田も、手作りしようとは言わなかった筈だ。
奉太郎「あ、ああ……そうだな」
俺は顔を引き攣らせながら、そう答える。
える「材料はあるので、早速取り掛かりましょうか」
奉太郎「ああ、分かった」
える「折木さんは、作った事あります?」
奉太郎「……あると思うか?」
える「そうですよね、でしたら私が教えながら作りましょう」
486: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:14:42.59 ID:e7a8f0Q60
そうですよねとは、失礼では無いだろうか。
まあ、事実だから何も言えない。
奉太郎「そりゃどうも」
奉太郎「ところで、一つ聞いてもいいか」
える「はい、何でしょう?」
奉太郎「里志や伊原に声を掛けなくても良かったのか?」
える「私も最初は相談しようとしたのですが……」
える「お二人とも、最近忙しそうだったので」
ああ、確かに里志は最近、何かと慌しい。
まだ委員会の仕事が完全には終わっていないのだろう。
伊原もそうだ。 里志ほどとは言わないが……忙しそうではあった。
そこで千反田は俺に声を掛けたという事か。 一番暇そうな俺に。
487: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:16:35.55 ID:e7a8f0Q60
奉太郎「なるほど、俺に声を掛けた理由は分かった」
える「ふふ、それでは始めましょうか」
える「私は手袋の方を作るので、折木さんはマフラーの方をお願いしますね」
奉太郎「了解」
そうして、入須へのプレゼントを作り始めたのだった。
488: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:17:03.19 ID:e7a8f0Q60
える「今日はこの辺にしておきましょうか」
奉太郎「……ああ」
返事はあったのですが……折木さんは随分と集中して取り掛かっている様です。
動かしている手は、止まる様子がありませんでした。
える「折木さん?」
奉太郎「……もう少しだけ、切りが良い所までやらせてくれ」
える「ふふ、分かりました」
私は自分の方はそこで辞め、しばらく折木さんの作業を眺めます。
489: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:17:38.38 ID:e7a8f0Q60
……本当の所を言えば、福部さんや摩耶花さんは声を掛ければ時間を空けるくらいの余裕はあったと思います。
ですが少しだけ、折木さんと一緒に居たかったのです。
私は一度その場を離れ、台所へと向かいました。
既に日は随分と傾いている様に見えます。
時計を見ると、丁度17時を指している所でした。
卒業までには何とか、間に合いそうなペースです。
折木さんも意外と、しっかりやっていますし……
私は台所に着くと、お茶を淹れ先程まで居た部屋へと戻ります。
える「折木さん、お茶が入りましたよ」
奉太郎「……ん、ああ。 すまない」
折木さんは一度手を止め、お茶を取りました。
490: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:18:08.26 ID:e7a8f0Q60
える「随分と集中していましたね」
奉太郎「……そうだったかな」
える「もう17時ですよ、ほら」
私はそう言い、時計を指さします。
奉太郎「本当だ、もうそんな時間だったか」
える「ええ、まだ日にちはあるので……今日はここまでにしておきましょう」
奉太郎「……だな」
奉太郎「よし」
折木さんはそう言い、腰を上げます。
奉太郎「それじゃ、俺はそろそろ帰る」
491: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:18:43.26 ID:e7a8f0Q60
える「ええ、お疲れ様です」
奉太郎「えっと、これはどうすればいい?」
先程まで取り掛かっていた物を指さし、折木さんは言いました。
える「あ、大丈夫ですよ。 片付けておきますので」
奉太郎「そうか、悪いな」
える「では、玄関まで」
奉太郎「ああ」
その後、玄関まで折木さんを送ると私は片付けをするため部屋へと戻りました。
492: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:19:09.76 ID:e7a8f0Q60
それにしても、あそこまで集中してやっている姿は中々見れる物では無いですね……
昔だったら、同じお願いをしたらどうなっていたのでしょうか。
……いえ、折木さんは折木さんですね。
そう考えながら、私は作りかけの手袋とマフラーを崩さないよう、ゆっくりと仕舞いました。
入須さんは喜んでくれるでしょうか?
……多分、大丈夫でしょう。
そこでふと、ある事に気付きます。
もう、今更と言った感じですが。
……この手袋とマフラー、渡す時には季節外れですね。
おわり
493: ◆Oe72InN3/k 2012/12/31(月) 21:19:35.29 ID:e7a8f0Q60
以上で短編一話、終わりとなります。
乙ありがとうございました。
よいお年を!
495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 22:16:34.00 ID:+r+heETL0
乙です。ここを持ってきましたか。
えるは意外と気付かないものですね。でも、3月でも高山もとい神山はまだ寒いと思うし、結果オーライですね。
では、良いお年を。
497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/01(火) 01:25:48.02 ID:uNC18Gxlo
あああの話か
乙
498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/02(水) 00:47:00.70 ID:ffsEhjWAO
乙!
まだ付き合う以前の二人か・・・
俺らが早く付き合えよお・・・とヤキモキしてた頃だなあ・・・
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- 2013/01/17(木) 22:23:17|
- 氷菓
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