515: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:38:24.05 ID:VFnMr4W30
こんにちは。
時間空いてしまってごめんなさい、短編の二つ目を投下致します。
引用元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352561755/
516: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:43:02.51 ID:VFnMr4W30
おかしいな、始まるとされていた時間はとっくに過ぎている筈なんだけど。
僕がうんうんと頭を捻っていると、横で摩耶花が口を開く。
摩耶花「時間、ちょっとずれてるのかな?」
里志「かもしれないね、何かトラブルでもあったのかな」
摩耶花「そっかぁ」
僕と摩耶花は周りに誰も居ない、ちょっとしたビルの屋上から花火が始まるのを待っていた。
何でこんな所にって言われると、夏休みだからって言うのが合っているのかな。
それにしても……
うーん、ここで静かに花火が始まるのを待つってのも1つの選択だとは思うけど……僕のキャラじゃないなぁ。
517: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:43:35.70 ID:VFnMr4W30
里志「摩耶花はさ」
そう切り出すと、摩耶花は僕の方に顔を向けた。
里志「どうだい、古典部」
摩耶花「どう……って言うのは」
摩耶花「楽しいーとか、何が目的なのか分からない! とかそう言う事?」
里志「あはは、最後のはどうかと思うけどね」
摩耶花「でも、そうじゃない?」
里志「……ここで何か言い返せればいいんだけどなぁ」
摩耶花「あはは」
良かった、摩耶花が笑ってくれた。
518: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:44:07.48 ID:VFnMr4W30
里志「ええっと、それでどうかな?」
摩耶花「ううん……」
摩耶花「楽しいよ。 古典部」
里志「そっか、それなら良かった」
今が楽しければいいとは思っていた。
でも1つ、僕には謝らないといけない事があった。
里志「摩耶花が漫研に居たときの事、話してもいいかな」
摩耶花「うん、いいよ」
少しだけ、摩耶花は暗い顔になっていた。
里志「僕はさ」
里志「摩耶花が辛い思いをしている事に、何一つ気付かなかった」
里志「結局は摩耶花が一人でけりをつけて、最後の最後まで僕は何も出来なかった」
里志「だから、ひと言謝りたかったんだよ」
里志「ごめんね」
519: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:44:37.60 ID:VFnMr4W30
僕がそう言うと、摩耶花は少しの間を置いて口を開いた。
口を開いた……と言うよりは、吹きだした。
摩耶花「あは、あはは」
里志「ま、摩耶花?」
摩耶花「ご、ごめんごめん」
摩耶花「その、あまりにもふくちゃんが真剣だったから……つい」
僕って、いつもそんなふざけている様に見えるのかなぁ
摩耶花「それで、何で謝るの?」
里志「そりゃ、摩耶花を助けてあげられなかったからだよ」
摩耶花「でも、あの時はまだ付き合ってもいなかったし……」
里志「それでも、助けてあげる事は出来た筈なんだ」
520: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:45:43.96 ID:VFnMr4W30
摩耶花「……私は」
摩耶花はいつになく真剣な顔をしていた……気がする。
摩耶花「助けてもらいたかった訳じゃないよ」
摩耶花「自分でけりをつけたかった、ってのもあるし」
摩耶花「それに、何でも手を差し伸べるのは違うと思う……絶対に間違っているなんて、言えないけどね」
里志「そうかな」
摩耶花「そうだよ」
摩耶花「ふくちゃんはさ」
摩耶花「折木と喧嘩した事はある?」
里志「ホータローと喧嘩?」
あったような、無かったような。
521: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:46:16.97 ID:VFnMr4W30
里志「あったかもしれないけど、殴り合いとかは無いよ」
摩耶花「それは分かるよ、だって折木相手だし」
里志「あはは、喧嘩と言うか……言い合いならあったかもね」
摩耶花「うん、そっか」
里志「それがどうかしたの?」
摩耶花「やっぱりさ」
摩耶花「友達とか仲間とかって、そうやって成長していくと思うんだ」
里志「……」
摩耶花「くだらない事で笑いあって、相談して、時々……喧嘩とかしてさ」
摩耶花「それでもまた、最後には一緒に笑っていられるのが友達なんじゃないかな」
522: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:46:48.07 ID:VFnMr4W30
摩耶花「色々あると思うよ、傷付け合う事だってあると思う」
摩耶花「それにやっぱり、友達の事だからって何でも手を貸すってのも違うと思うんだ」
里志「……そうかもね」
摩耶花「私だって、本当に助けてもらいたかったら皆に言うよ」
摩耶花「ふくちゃんもちーちゃんも、折木だって……その」
摩耶花はそのまま口を少し噤んだ、でも言いたい事は僕には分かった。
摩耶花「私は皆の事は友達だと思ってるし」
摩耶花「ふくちゃんはちょっと違うけど……」
里志「うん、そうだよね」
僕がそう言うと、摩耶花は何か思い出した様な顔をしてすぐさま話を続けた。
摩耶花「ごめんね、偉そうな事言っちゃって」
摩耶花「私はそう思うって言う、ちょっとした感想だね」
523: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:47:13.59 ID:VFnMr4W30
里志「あはは、摩耶花の方がよっぽど僕なんかより考えていたみたいだ」
摩耶花「そう、かな?」
里志「そうだよ」
その時、辺りが光で溢れた。
遅れて「ドン」と言う音が響く。
里志「始まったみたいだね」
摩耶花「うん」
僕は少しの間、花火の明かりに照らされた摩耶花の横顔を見ていた。
そして、こう思う。
524: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:47:42.03 ID:VFnMr4W30
本当に、この子には敵わないなぁ……と。
でも、そんな子を彼女にしている僕も、案外捨てた物じゃないかもしれない。
……あ、これはあれか。
前に確か部室で話していたなぁ……7つの大罪。
それの1つ「傲慢」って奴かな。
でも少しだけ、傲慢でもいいかなと僕は思った。
おわり
525: ◆Oe72InN3/k 2013/01/07(月) 13:48:40.76 ID:VFnMr4W30
以上で短編二話、終わりとなります。
遅れましたが、明けましておめでとうございます!
乙ありがとうございました。
526: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 13:56:56.19 ID:hPsD33ev0
乙乙
529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 20:10:05.26 ID:zduHJUjAO
乙!
やっぱり、古典部全員大好きだわ~、うむ
530: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:27:14.28 ID:UALrXNBAO
乙
次も楽しみにしてる
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